第106話 食人植物
クーベル王国から戻った三人はグルミ族の森へ向かいそこでグルミ族の長とカナリアとポップに妹さんが其処にはいなかった事を伝えた。
「そうですか…娘はいなかったですか」
「すみません…大口叩いてこんな結果で…」
「多分、泥棒女達に連れていかれたんだと思います」
あの後城の中を隈なく探したがグルミ族らしい小人は何処にも見当たらなかったのだ。
おそらく時也達に連れていかれたのだ、洗脳する力を何かに使うつもりなんだろ。
「ポップ…ごめんな…」
「気にすんなよ海斗!アイツは気が強いからきっと大丈夫だ!」
「あのワニにされた子供は?」
「あの子はさっきベルちゃんが来てガネットへ連れて行きました。融合が不完全だからもしかしたら戻せるかも知れないって言ってましたよ!」
ベルの話ではどうやら中途半端な融合だったらしくこの状態なら分離が可能かもしれないと言うらしく調べる為にガネットへ連れて行ったのだ。
「そっか…」
「さすが嬢ちゃんだな」
「ベルちゃんは頭いいですからね!」
「でも、結局助けられない命も…また…」
「海斗。勇者の力で全て解決は出来ない。これからは勇者の意向を見せて彼らの分まで生きて示すんだ!」
「そうですよ!海斗さん。もう貴方はあの日の貴方じゃないんですから!」
「はい、俺もっと頑張ります!」
信道は肩を叩きこれからの為に生きて頑張れと慰めリアは必死に変わろうとしてる海斗を応援している。もう繰り返さない為には強くなり止めると誓う海斗。
「勇者様方の活躍で虫たちもとりあえず騒ぎが収まりました。それは胸を張って下さい!」
「族長さん」
「私達は皆様の力になりたいです!」
「これからはグルミ族も戦うぜ!」
「ありがとうポップ!」
海斗は人差し指を出しポップの小さな手と握手する。
「せめてこれが皆様の力になればと思います。受け取って下さい!」
族長はそう言うと奥から袋を持って来た。
「お礼を貰う資格は…」
「これは私達から勇者様達に感謝の贈り物です。きっと役に立つはずです!」
海斗は受け取り中を確認する。
中には透き通る緑や黄色の線が混じった水晶の様な石が2、3個入っていた。
「これは?」
「グルミ族の森で取れるルチルだ!」
「「「ルチル!?」」」
三人は声を上げた。
これがお目当ての鉱石ルチルである。
「これがルチル!」
「私達コレを探しにここまで来たんです!」
「そうですか。それは良かった!」
「任務完了だな!」
三人はルチルを見つけた!
これで、黒曜石、タングステン、ルチルが揃った。だが…
「量が足りないだぁー!?」
(はい全く足りないでありますよ…)
「ベルちゃんそりゃないぜ!!」
「何で具体的な量を言わなかったの??」
(言い忘れたであります!てへ!)
てへ!じゃないわー!と三人は心の中で突っ込む。
(具体的にかなりの量が必要でありますからね。カケラがたんまりでも大丈夫でありますから!首無し達もまだタングステンを採取中で暫くは戻れないと連絡があったでありますから!)
「和樹達の方もか…」
「全く、優秀だが凶暴で抜けてるからな嬢ちゃんは」
(のぶさん!聞こえてるでありますよ!!)
「わりい、わりい。」
(とにかく、それっぽっちじゃ足りないでありますから!追加を頼むでありますよ!ついでにあの辺りの銅や鉛や玉鋼もよろしくであります!でわ!)
ベルはそう言うと電源を切った。
て、こら!お使い増やすな!!
どんだけ重いかわかってんのかよ!!
「こりゃまだ帰れないな…」
「ですね。」
「つっても何処にあんだ??」
「それならグルミの森の先の水溜りに入れば
熱帯雨林に出るからその先の洞窟に沢山の鉱石があるはずだ!」
グルミ族の長老がそう言う。
「よし、いっちょ行ってみるか!」
三人はポップを道案内にグルミ族の森の奥の湧き水が出る洞窟へ向かう。
「蓮の花に溜まってるんだな」
「ポップ後でこの水貰って料理を作りたいんだがいいかい?」
「勿論だ!グルミ族の水は最高に美味しいぞ!」
「何処からその洞窟への道なんですか?」
「ああ、あそこだよ!」
ポップは海斗の肩の上から指を指す。一箇所だけ底が光ってる場所がある。あの溜池みたいな場所が入り口だ。
「ありがとうポップ!」
「では、後でまた!」
「湧き水の約束頼むぞ!」
「気をつけてな!」
三人はそう言うと水の中に飛び込む。
:
飛び込んだ先の水溜りを抜けるとそこは蒸し暑いアマゾンだった。
水から上がると三人は濡れていなかった。
三人は通り道になっている湧き水の空洞の先は巨大なガジュマルの木の根元だった。
ガジュマルとは熱帯の森林地帯に生える木で同じ木同士が絡んで更に大きな木になるなどとにかくどう成長するか未知な木なのだ。
「木下が入り口か」
「面白いですね」
「しかし、暑いなここは…」
「熱帯雨林ですからね。」
「グルミ族の森からだいぶ離れた場所なんですねここは!!」
見渡す限り植物だ。しかも暑いし明らかにさっきいた場所から離れている。
こんな森林地帯に本当に鉱石があるのか不安だ。
「なんかこの森変じゃないか?」
「変ってどうしてですか?」
「いやな動物の気配がない」
「確かに見渡す限り虫ばっかりだ」
おかしい…まだ明るいのに動物が見当たらないなんておかしい。いてもデカイ虫くらいだ。
「昆虫の魔物ばかりですね」
「村にいたのと違いますね」
「村に居たのはあの時也とか言う奴が作った奴だ。ここの自然のとは違う」
実はあの害虫達は皇時也が捕まえた害虫達を操作してデカくし放った物だ。だから大した知能がなかったのだ。
「皇時也…あの野郎…」
海斗は怒り握り拳を作る。
「ポップ君の妹さんも必ず助けましょう。」
「当たり前だ!」
三人がそう言いながら歩いているとさっき通った道とは違う木に巻き付かれ一種の空洞みたいになっている洞穴を見つけた。
「あそこじゃないですか!」
「ああ、きっとそうだ!」
海斗はそう言うと走り出す。
「海斗走るな!何があるかまだ判らないんだぞ!」
「大丈夫ですよ。ここにはヤバそうな魔物なんて」
海斗が陽気に走っていると。
何かが海斗の足に絡まり海斗は転んだ。
「あいた!な、何だ?」
海斗は絡まった蔓を引きちぎろうとした時だった。
「え!?う、うわぁー!!」
蔓が動き出し海斗を宙吊りにした。
海斗は下を見ると先に口を開けた巨大な植物。
「キシャアァァ!」
唸り声を上げながら涎を撒き散らす巨大な植物の魔物。飛び散った唾液は周りの木を溶かした。しかも海斗をそのまま引き摺り込み一口で食べようとしていた。
「うわぁー!な、何だありゃあぁぁぁぁ!」
泣き叫ぶ海斗。
あーんと口を開ける植物の魔物。
海斗が食われそうになる一歩手前で信道が宝救丁で蔓を切り助け出した。
切った蔓から血みたいな液体が吹き出す。
「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
痛みを上げる様に泣く植物。
「いて!」
蔓から落ちた海斗は尻餅をついた。
「大丈夫ですか!!」
「な、なんとか…」
「オイ周り見ろ!」
「「げっ!?」」
周りを取り囲む植物魔物の大群。
実みたいだが口を開けている物や歩く花みたいな奴に巨大なハエトリソウに動くウツボカズラにとこいつら食虫植物型の魔物だった。
「ありゃ食人植物だ…」
「食人植物っ!?」
えーー人食い植物かよっ!!
木の魔物が根を伸ばし三人を捕まえ様とする。
「な、何でそんな魔物がこんな所に!?」
「さあな!」
マズイ数が多過ぎ!?
「ひとまず退散だ!」
「同感!」
「逃げましょう!!」
三人は部が悪いと判断し通って来た湧き水の場所まで走る。
振り返ると根っこが足みたいになってる植物が口から種を鉄砲の弾みたいに撃ちまくり攻撃して来た。
「ひえっ!!」
海斗は悲鳴をあげた。
破壊力がデカすぎ岩が貫通したのだ。
「もうすぐだ!」
目の前に迫る通って来た湧き水の空洞があるガジュマルの根元。
「飛び込め!」
信道が叫ぶと三人は光る湧き水に飛び込んだ。
:
「ぶはぁっ!はぁ…はぁ…し、死ぬかと思った…」
「た、助かりました…」
「何で料理人が食材から逃げなきゃいけないんだよ!」
いや師匠アレは食材とは言えないですよ。
全くだ。
命からがら逃げて来た三人は再びグルミ族の長の元へ戻る。
「なんだと!食人植物!?」
「ああ、まさかあんなのが居るとは…」
「アンタ達知ってたのか?」
「まあな」
早く言えよ!死にかけたわ!!
「あの湿地帯は食人植物の巣窟だったんですか?」
「いや、違う昔は生き物も沢山いてな」
「何で今あんな状態に?」
「アレは今から100年前の事だ…」
ん?100年前…
グルミ族の長は語り始めた。
昔は生き物が沢山すみ自然のバランスが保たれていた危険ながらもけして命が簡単に亡くす様な場所ではなく。
「噂では先代の勇者があの辺り一帯の魔物を全滅させてしまい、後から来た人間が植えた危険な植物に支配されてあの有様だ」
「先代の…」
「勇者って…」
二人は海斗を睨みつける。
「う…マジか…」
海斗は頭を痛める。
確かに昔、先代勇者だった頃、三人であちこちの魔物を狩りに回っていた。
海斗は覚えが無かった事から和樹か愛(まこと)があの辺りの魔物を全滅させてしまいその後魔人族側の誰かがあのやばい植物を植え増えてしまい今に至るのだろう。
「す、すみませんでした…」
海斗は改めて自分達がやった事の重大さを思い知らされた。
「勇者様方?」
「あ、えーと…」
「何でもない。とにかくあの植物を何とかしないとな」
「どうしましょうか?ガネットへ戻りますか?」
「いや、その前に避難してる人達の炊き出しや治療を済ませて落ち着いたら出発する。それでいいな?」
もう遅いし何より色々と気になる事もあるし、あの後あの虫達はどうなったかも聞く必要があるし対策も立てないといけないからな。
「はい!」
「あの人達をほっとけませんからね!」
「俺達も手伝うぜ!なあ姉上、父上!」
「うむ、いいだろ。」
「私達も勇者様方のお手伝いをします!」
「いいのか?外に出て?騒がれないか?」
今までおとぎ話レベルのいい伝えだった小人が出てきて大丈夫なんだろうか?
「周りの村の人々は私達グルミ族を認知してますから大丈夫ですよ!」
そっか森へ入れないがグルミ族は普通に外に出てたんだよな。村の人達がグルミ族を知っていたのも納得だ。
「よし、明日いっちょ行くか!」
「「はい!」」
グルミ族の森で一泊した三人は助け出した人達を連れて行った避難所へ向かう。
ポップ達グルミ族も蜂にまたがり数十人が跡をついていく。
避難所では助け出した人達と村の人達が歓迎してくれた。着いてすぐに三人は役割を分担し炊き出しと治療を始めた。
「勇者様。ありがとうございました!」
「おかげで虫達は消えて行きました!」
「喜ぶのはまだ早い。またいつ虫達が湧き出すか判らないからな」
そう、あくまで元凶が消えただけだ。倒していない以上また同じ事になる。
「すいません。根本的な解決にはまだ至らなくて」
「勇者様方、我々も大丈夫ですよ!」
「そうですよ!また来たら返り討ちだ!」
「村は私達が守ってみせる!」
「ちょっと怖いけど頑張る!」
村の子供達が木の棒を構え掲げるとそう言った。頼もしい限りだな。
「時期にガネットとアンジェラから物資や警備の配置と色々として下さりますからね!」
リアがアリシアに連絡し事の事情を話し手を回してくれる様に頼んだのだ。
「本当ですか!」
「村の復興の為にまずは食事と身体を治す事だな!」
信道はそう言うと大鍋とキッチンセットを取り出しグルミ族の森で摘んできた山菜やキノコやきのみ更にベルに持って来て貰った材料で料理を始める。
海斗は真宝剣にグルミ族がくれた約束を吸わせると勇者石から光のパネルが現れると操作する。すると吸われた材料が薬に変わり勇者石から飛び出して来た。
ベルが海斗の真宝剣に組み込んだ機能だ。
材料を吸わせる事で組み込んだ術式が薬や材料の調合を始め自動的に作ってくれるのだ。
「凄いな海斗!お前医者なのか?」
海斗の肩に飛び乗りそう言うポップ。
「いや違うよ。これを作った人が凄いんだよ。俺は書いてある通りにやっただけだから」
ベルの作った機能はやはり凄い。
まるっきりゲームと似てるが、でもこうして作った薬で人が助かっているのを見ていると現実に人々の助けと力に変わっているのがよくわかる。
ありがとうと手を握られたりすると人の暖かさが実感出来た。もう海斗はあの頃みたいに自分本意な人間ではない。まだまだ人としても職人としても未熟過ぎるがそれを理解して忘れずにいれば彼の本当の心が伝わり理解してくれる人もどんどん増えていく。近い将来必ず。
だから自分のケツは自分で拭かないとな…
海斗はそう思いながら薬を作っていると。
「あ!そうだ!あいつら植物ならもしかして!!」
海斗は何かを閃いた。薬から何を思いついたのだろうか?
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