第105話 今の痛みと昔の罪を忘れない
「怪人はお前が作ったってのかよ!?」
「海斗さん知らないんですか!?」
仮にも魔人族側にいたのに。
「面目無いです」
「まあ海斗は利用されていたってだけだしな。実際の所は良く知らないんだろ?」
「はい、実は…」
本当に面目無いです。
「成る程なお前が作ったならあんな気味の悪い姿ばかりだったのも納得だ!」
「気味が悪いとは失礼だな!」
「実際気持ち悪いですよ!どれも!!」
溝鼠によだれ垂らすババアとか本当に色々気持ち悪い奴ばっかりだな。
「僕のセンスを気味悪いで片付けるとは…まあ平気で命を奪える人殺しばかりだからね。この異世界の住民は!」
「は!?俺達が人殺しだぁ!?」
「人殺しはお前らだろ!!」
「いえ、貴様らですわ!貴様らこそ正真正銘の人殺しですわ!何も知らずに一般人を散々殺してるんですから〜」
「私達が人殺しって何を言ってるんですか一体!?」
そうだ、俺達が一般人を散々殺してきたって何を言ってやがるんだ。
「仕方ないな〜特別に怪人の作り方を教えてあげるよ」
時也はそう言うとコンソールを弄ると奥の機会が動き始めた。そして灯がつくと周りには檻に入れた人々や動物や虫達が現れる。
「これは!?」
「オイ…何なんだよこれは!!」
海斗は声を上げる。
「何って怪人の作り方だよ。まず適当な人間を選び、遺伝子組み換え装置へ放り込み」
時也はそう言うとコンソールを弄り檻から適当に男を出すとガラスの容器にいれた。
入れられた男は内側から叩き助けを求める。
「止めろ!」
信道は濁酒銃から弾丸を放つ。
しかし、バリアが張られている為弾が弾かれた。
「実験の邪魔はよしてくれよ。次に適当な生き物を隣の容器にいれる」
時也は檻から取り出した鼠をバイオ液が浸してある容器に入れた。
「後はこの装置のスイッチを入れるとあら不思議」
時也はスイッチを入れると動き出し男と鼠は分子レベルまで分解され消えると上の管を通り真ん中の装置へ送られる。そして、その装置の扉が開いた瞬間、中から現れたのは鼠と人が混ざった様な気味の悪い怪物だった。
「そ、そんな!!」
「嘘だろ…こんな事って…」
「怪人は魔人族じゃなく…人間だったってのかよっ!!」
怪人は人の手によって人間を材料に作った怪物だったのだ。それが今まで倒してきた怪人の正体だった。
「わかりましたか?貴様達がどれだけの人の命を奪って来たか」
「いやあ〜作り方まで見せるなんて。僕は親切だな〜あ、ちなみに失敗する事もあるんだよ」
失敗…三人はあのワニにされた子供を思い出す。全てはこの男のせいで!!
「許さない…」
「あん?」
「貴様だけは許さねーぞ!皇時也っ!!」
海斗は声を荒げ剣を取り出し勇者石をはめ込む。
「本当に許せません!」
「ただじゃ済まないぞお前らっ!!」
リアと信道ももう我慢が出来ず剣を取り出し変身の構えにはいる。
イエロー!ザ!宝救武装!
ピンク!ザ!宝救武装!
へい!とりあえずゴールド一丁!
「「宝救武装!」」
「乾杯!」
三人の掛け声で剣の先から光が吹き出す。
その光は三人の身体に纏うと鎧とスーツと海斗には肩当て付きの鎧を作り出し最後にパートナーを模したヘルメットを装着し変身完了した。
「一金提供!ホウキュウゴールド!見参!」
「シトリンの一皿(スペシャリテ)!ホウキュウイエロー!お上がりよ!」
「輝くピンクダイヤ!ホウキュウピンク!」
「「「勇気の宝石身に纏い!」」」
「我ら三人の一皿(スペシャリテ)!」
「「「宝石戦隊!ホウキュウジャー!」」」
名乗り終えるとパチンと小さな鼠花火みたいな小さな花火が上がる。建物内は火気厳禁ってか。
「何をそんなに怒っているんだい?」
「黙れっ!!」
ドスの効いた声で怒る海斗。
「相変わらず馬鹿な名乗りですわね」
「全く君達がヒーローごっこしてるのを気づかせてあげたのに何をそんなに怒っているのか理解できないな〜」
「黙れって言ってんだよ!!」
海斗はそう言うと真宝剣を引き抜き時也に斬りかかる。
カキン!
「なっ!?」
「僕が警備してないと思っていたのかい?」
時也の下から現れた巨大な手。
時也の下から壁をすり抜け巨大な魔宝獣が現れた。しかもありゃ巨人型だ。
巨大な魔宝獣は海斗をはたき落とす。
「ぐはっ!」
地面に叩きつけらる海斗。
「海斗!」
「海斗さん大丈夫ですか!」
「自分は大丈夫です」
2人の肩を借り起き上がる海斗。
「さあ、行きましょう!」
「そうだね、設備も古くなったしもう買い替えかな〜」
アイカが開いた時空の裂け目に足を運ぶ時也。
「テメェ!逃げんじゃねぇっ!」
「バイバイ」
時也はそう言うと消えた。
「クソガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
海斗は悔しさの余り怒鳴り上げた。
「海斗…」
「あ!2人共大変です!!」
リアが声を上げた。
先程時也を助けた巨人の魔宝獣が天井を突き破り外へ出て行く。
「ヤバイ!アイツが外に!!」
「リア!囚われてる人達を!」
「わかりました!」
「カイト。俺達はあの魔獣を!」
「はい!」
2人はこの場をリアに任せ魔獣を追いかける為に奴が壊した天井から飛び出し外へ出る。
「行け!ゴルーケン!」
「プテラ行くぞ!」
2人の懐から二体の飛行能力を持った宝石獣が飛び出し巨大化すると2人をプリズムで出来たコックピットへ転送する。
転送された2人は剣を台座へ差し込みコントロールを得る。
「パッキー2人に力を貸してあげてくれますか?」
「パッキー!」
勿論だよリア!パッキーは飛び出し巨大化し2人を追いかける。
「な、何だ?」
ポップは空を見上げると飛んでいくゴルーケンとプテラに目が奪われる。
「アレが宝石獣!!」
「綺麗」
:
魔獣を追いかける2人。
「みんな、先に行ってあのでくの坊を足止めするんだ!」
信道はそう言うとゴルーケンからカブト
アンキロ、イカちゃんを出す。三体は巨大化し魔獣の前に立ちふさがる。
「きい!」
喰らえ!
カブトは自慢の硬い角を魔獣の頭にぶつける。
「キロ!」
いくわよ!
アンキロは尻尾の先を飛ばすと魔獣の足に絡めて引っ張り転ばせた。
「くーくー!」
イカちゃんは墨を吐き魔獣の視界を奪う。
「海斗。合体するぞ!」
「え、師匠とですか!?」
「パッキー!」
僕も僕も!パッキーが追いついた。
「エンカイオーって他に合体出来るんですか?」
「多分な!」
「多分って…」
「やった事ないんだよ。でもやるしかないぞ!」
「はい!」
「「宝石合体!」」
2人の掛け声で宝石獣達は身体をバラバラに弾け飛ぶ。まずアンキロが甲羅を前に胴体を作りだしその後ろにカブトの胴体が合わさりくっつき背中と胴体を作りだし分かれたゴルーケンの巨大化な翼が下に合体し両足を形成する。次にプテラの翼が背中に合体しウイングになりパッキーの頭が拳になり胴体がマウントされ右手に合体し次にプテラの頭が左肩になりくっつき足の爪が指を作りだし左手に合体する最後にゴルーケンの頭がてっぺんに合体し顔と兜を作りだしイカちゃんが変形しカブトのパーツと合体したイカ大剣を左手に装備し合体完了した。
料理人2人が力を合わせ今までなかったエンカイオーに別形態を生み出すのだ。
「上がったぜ!」
「エンカイオースペシャリテ!」
合体したエンカイオースペシャリテは上空からダイヤパンチを魔獣の頭上へ叩き込んだ。
魔獣の頭にヒビがいり倒れるとエンカイオーは着地する。
「頭にヒビ入れるとは!さすが師匠!」
「飛べてるのもあるからお前のおかげだよ」
巨人の魔獣は腕を伸ばしエンカイオーに殴りかかる。エンカイオーは空高く飛び上がる。
エンカイオーは飛べないがプテラが合体した事で飛行能力を得たのだ。エンカイオーは軽く交わすと近づいて飛び蹴りをお見舞いした。
魔獣は吹っ飛ばされたが膝をつき踏ん張ると黒い剣を取り出しエンカイオーに斬りかかる。
「イカ大剣!」
エンカイオーもイカ大剣を左手に構えて斬りにかかる。
カキンとお互いの剣がぶつかり合い火花を散らす。エンカイオーは魔獣の剣を弾くと懐に右アッパーを食らわす。
「ダイヤパンチ!」
すかさずパッキーの硬いダイヤの頭の拳を更に腹に叩き込むと巨人の魔獣の腹にヒビが入り身体中に回る程のダメージを受けた。
「トドメを行くぜ海斗!」
「はい!師匠!」
エンカイオーは右手のパッキーの頭を肩に移動させると拳を作るとイカ大剣を両手に構えるとイカ大剣の刃が小さくなり刀の様な形になるとエンカイオーは飛び上がる。
「究極包技!」
「「鮪大解体!」」
エンカイオーは軽くなったイカ大剣を斬りかかり巨人の魔獣をバラバラに斬りきざむと魔獣は大爆発した。
エンカイオーは着地するとイカ大剣を地面に突き刺さしポーズを決めた。
「やったな!」
「はい!」
:
魔獣を倒し城へ戻った2人は捕まっていた人達を助けだしたリアから衝撃の事実を聞いた。
「戻せないって!?」
「怪人にされた人達をか!?」
「はい、ベルちゃんにさっき状況を報告して調べてもらったら…分子レベルで融合してしまっていて元には戻せないって…言ってました…」
「そんな…」
海斗は檻に居る皇時也に怪物にされた人達を見る。もはや人の形すらしておらず海斗を見るなりに牙を向けて唸り声を上げる。
「くっ…」
「お前達目を閉じてろ…」
「「え!?」」
信道はそう言うと濁酒銃を構えている。チェンジエッグに勇者石を入れ濁酒銃のシリンダーに入れ回す。
シェイク!シェイク!シェイク!〆の一杯!
バチバチと濁酒銃に雷のエネルギーが溜まっていく。
「師匠!!」
「信道さん!!」
「雷酒一撃…」
信道は引き金を引くと濁酒銃の銃口から雷の弾丸が放たれる。放たれた弾丸は怪人達を全て一瞬で廃にし消し去った。
濁酒銃を下に降ろすと変身を解く信道。
「信道さん…」
「し、師匠…」
「なーに汚れ仕事は大人がするもんだ」
海斗は変身を解くと時也達が残した機械を右手で殴る。
「止めてください海斗さん!」
「離してくれ!」
「貴方が傷つく必要なんか!」
「あるんだよっ!!」
海斗は声を上げた。
その顔は涙と鼻水を流している。
「こんなのってないだろっ!!ふざけんなっ!俺もあんなクソ野郎と同じ事してたのかよ…」
リアが離すと海斗は崩れて落ち膝をつく。
「海斗さん…」
「俺も…あいつと同じだった…自分は悪くない…これはゲームだって思い込んで忠告も聞かず…俺は…俺は人を沢山殺してしまった!!」
海斗はこれまで自分がしてきた事が全て頭から離れず悔やんでいる。自分もあいつと同じ立派な人殺し、それを今まさに痛感した。自分もあんな風だったなんて考えただけで本当に情けない。
「俺はクズだ…」
海斗は泣き崩れた。
「ああ、クズだな」
「信道さんっ!!」
「海斗、お前は料理人見習いだろ?手は命だ。あんな恥さらしの事を考えて腹を立て大切な手を傷つけるのはクズのする事だ。」
「…」
「だが今のお前は間違いなく人だ!」
「え?」
「人の痛みを知り後悔し過ちを認める事が出来る様になったんだ。それが出来るお前は間違いなく人であり俺の弟子だ」
「信道さん!!」
信道は厳しい事を言ってはいるが、海斗の直向きな頑張りを間違いなく見ていた。自分を責める海斗に厳しくいったのも、もう海斗が自分勝手な社会の恥ではなく、料理で変わり人々に美味しいと言って貰いそれを償いにする為に努力している心をちゃんと持ちなおした人間だと言ってくれているのだ。
「師匠…」
「料理で償いたいんだろ?あの言葉は嘘だったのか?」
「いえ、俺は…いや自分は…自分が料理の暖かさで救われ変われた様に…料理で償いたい自分も美味しいって心からの感謝を受け取りたい。そして…師匠達に恩返しがしたい。優しくしてくれたみんなに美味しい料理を振る舞いたいです!師匠っ!!」
海斗は泣きながら訴える。今の自分を救ってくれたあの炒飯と同じ真心が詰まった幸せの料理を作りたい。料理で罪を償っていきたいと本気で思っているのだ。
「並大抵じゃすまないんだぞ!」
「はい!」
「罵倒され気持ちを踏み躙られる事もある。料理の世界は本当に修羅と隣り合わせなんだぞ。それでもやりたいのか?」
「俺もあの炒飯の様に料理で幸せを作りたいです!それが出来るなら…歯を食いしばります」
海斗の覚悟を見た信道。
「だったらあんなゴミ屑を考えるな、手を傷つくなるな!手を傷つけたら教える物も教えられない」
「師匠!」
「今日から従業員見習いは卒業だ。今から俺の弟子見習いだ!」
「まだ見習いなんですか?」
「人様に出せる物を作れないんじゃ厨房には立たせないからな。正式な弟子にするにはまだまだ腕は足りなすぎる。今まで以上にキツイからな根をあげたらつまみ出す。わかったらもう泣くな。海斗!」
「はい!師匠!ありがとうござました。今以上に頑張ります!!」
海斗は厳しいながらも認めて慰めてくれた信道の優しさを理解すると気持ちを切り替えていく。今の痛みと自分の罪を忘れない為に。
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