第82話 どうなってんの?炭なった宝石

アンジェラが助っ人に来たカルタノ達と再び勇者に選ばれた三人のおかげで進撃してくる魔人族達を蹴散らしている頃アバロスでは、何故かアイカの足元に転がっている石像化している涼を人質に取られていた。

「何で涼があんな所に!?」

「貴様!涼殿を離さないか!!」

「動くんじゃないわよ蜥蜴!じゃないとこの石塊を壊すわよ!」

「くっ!」

「ちょっとでも攻撃してみろこの石ころは破壊するからな!さあ武装を解除し剣を寄越せ!」

テナルディエにいわれアリシア達は仕方なく勇者石を外し変身を解くと皆剣をテナルディエの元へ投げ手を挙げた。

「これでいいんでしょ!涼を離して!!」

「いーやよ!」

アイカは可愛く言うと涼の頭を踏み潰す。

「アイカ!」

「貴女が悪いのよアリシア。私から王位を奪うから!何もかも全てはアンタのせいなんだから!」

「寝言は寝ていいやがれ!」

「この悪女!」

「サディスト!」

「アバズレ!」

「貴様ら黙らないか!」

テナルディエがそう言うと兵士達が武器を向けてくる。今は余計な事出来ないか…

「さあ、アリシア。幻の宝石は何処にあるのかしら?」

「誰が教えるもんですか!」

バチン!

アイカは平手打ちをお見舞いする。

「この餓鬼が!いつまでも私から逃れられると思うわけ?アンタが産まれなきゃ私が王位を継いであの国を支配出来たのに!!」

アリシアはアイカを睨みつける。

「何よその目は!」

アイカはアリシアの顔を蹴飛ばした。

「きゃっ!」

アリシアは髪を掴まれそのまま頭を地面にぶつけられた。

「姫様!!」

「テメェ!」

「君の家族だろ!?」

「何故そこまで出来るのだ貴様は!」

「邪魔だからに決まってるでしょ!昔から邪魔なら消す。王位はそうやって勝ち取るのよ!」

「そんな理由で…お母様を…殺したの貴女は!」

「五月蝿いのよジャリが!」

アイカはアリシアの腹に蹴りをお見舞いするとアリシアは転がり涼にぶつかる。

「う…う…りょ…う…りょう…」

アリシアは涙を流す。目の前にいる大切な人が人質に取られている。助ける事も出来ず悔しい。

アイカは涼を踏んづける。

「止めて!お願いだから止めて!」

アイカは足にまとわりつくアリシアを蹴散らし再び涼を踏み潰す。

アリシアは涼に覆いかぶさり庇う

アリシアは額から血を流し鼻血を流す。

「涼を…これ以上…虐めないで…」

「レッドベリルの場所を話すなら止めてあげるわ!」

「く…わかった…わ…」

アリシアが呟くとアイカはアリシアの髪を引っ張り持ち上げ顔に近づける。

「いい子よアリシア」

アイカはそう言うと離した。

そしてアイカは指を鳴らすとキマイラ魔獣が涼を持ち上げると海岸へ涼を投げ捨てた。

「あ…あ…いや…嫌よ…涼…」

「「「「貴様!」」」」

「おっと動くとアリシア姫を殺しますよ!」

「この豚…」

「貴様だけは…」

「絶対に」

「許しません!」

コハク達は怒りがこみ上げ涙が収まらないくらい悔しくて仕方がない。

「さあ案内しなさい」

アイカはショックで立てなくなったアリシアにナイフを突きつけ脅す。

「わかったよ…」

「連れて行け!」

テナルディエの命令で武器を突きつけられた四人は仕方なくテナルディエ達を洞窟へ案内した。

テナルディエ達が居なくなると茂みに隠れて居た信道が顔を出す。

「アイツら本当に癪に触る事するよな。」

信道は海岸へ投げ捨てられた涼を探しに行くと運良く涼は岩の間に挟まっていた。

「よく海に沈まなかったな…」

信道はチェンジエッグに人口宝石を入れてボタンを押すと裏の切れ目に宝救丁の刃をスライドさせると宝救丁から光の糸が飛び出し石像化した涼に絡みつくと涼を引っ張り上げた。

「釣りジュエルが役に立ったな」

釣りジュエルは新鮮な魚を釣る為に作って人口宝石だがこんな所でも役に立った。

「まあとりあえず」

信道はとりあえず涼を茂みに隠した。

「少し此処にいてくれや。すぐに戻ってくるからな」

信道は再びチェンジエッグに勇者石をはめ込みスイッチを押した。

へい!とりあえずゴールド一丁!

「乾杯(プロージット)!」

信道は走りながら変身し洞窟へ急いだ。

:

「ん…んん…はっ!石は!?」

レッドベリルの力で吹っ飛ばされ気を失ったヴァンフォワードか目を覚ます。

しかし、目の前には燃え尽きたみたいな黒い炭と化した巨大な石があるだけ。しかもルビティラの姿もない。

「い、一体何があったんだ?」

ヴァンフォワードは全く理解出来なかった。

大賢者と謳われた自分が理解出来ないなんて何が一体起きたのだ?

「ここに幻の宝石があるのですの?」

「!?」

ヴァンフォワードが振り向くとアイカ達が転移術の魔法陣から現れた。

「な、何だお前らは!?」

「何ですの?この汚らわしい蛙は?」

「初対面に随分と失礼な奴だな!」

「ヴァンフォワード様逃げて下さい!」

「ヴァンフォワードだと!?あの初代勇者を召喚した伝説の大賢者の!?」

「このキモい蛙がですの?」

「失礼な奴じゃな!」

ヴァンフォワードはアイカに飛びつく。

「近寄るんじゃないわよ!ヌメヌメのキモ蛙!」

アイカはヴァンフォワードを蹴飛ばした。ヴァンフォワードは壁に激突した。

「ぐはっ!」

「爺さん!」

「どうして交わさないの?」

「多分もう力が残ってないんだろうな」

その通りだった。

いかに大賢者といえどもこの姿で年をとっているためにマナ量がほぼない状態だった。

「ヴァンフォワード…様」

「アリシア姫!貴様その子に酷いことを!」

「離してほしいなら幻の宝石を献上しなさい!」

「なんじゃと!?」

「その宝石があれば私は唯一無二の女王に君臨できますわ!こんなションベンくさい餓鬼ではなく私が女王になるのです!」

「何という愚かな女じゃ!貴様にレッドベリルが触れるわけ無いわい!」

ヴァンフォワードは怒鳴り上げた。

「ごちゃごちゃ五月蝿い蛙ですわね。」

アイカが鳴らすと兵士達がコハク達に槍を突きつけアリシアの首元をナイフで少し切る。首から赤い血がながれる。

「この筋金入りの外道でエゴイストが!」

「幻の宝石レッドベリルはどこだ!」

「貴様も五月蝿いわい豚が!」

「ぶ、豚だと!蛙の貴様には言われたくないわ!」

「パパを侮辱するなら直ぐに殺すわよ!」

「くっ…」

「レッドベリルは一体どこですの!?」

アイカの声が反響し洞窟に響き渡る。

「あれじゃ…」

ヴァンフォワードは焼けた黒炭と化したレッドベリルに指を指す。

「は?あれば炭ですわ!」

「本当の事を言わないか蛙!」

「嘘は言ってない!あの燃えかすがまごう事なきレッドベリルじゃ!」

ヴァンフォワードは指をさす。巨大な黒炭に。

「な、何ですって!?」

アイカはアリシアを離しレッドベリルの側に駆け寄る。

しかしどんなに触っても反応はなくこれはもはや焼けた石そのものだ。

「これはただの焼けた石じゃないか!」

「パパどうなってるのよ??」

「ぐぬぬぬ!」

テナルディエは顔を真っ赤にする。

「貴様!これがレッドベリルだと!ただの焼け石ではないか!本物は何処にある?」

「たがらそれだと言ってるだろ!」

「貴様!我がテナルディエ・ガリウス公爵と知っての狼藉か!!」

「知るかそんなもん!!」

互いに怒鳴り合いをするテナルディエとヴァンフォワード。

「あれが本当にレッドベリルですと?」

「俺たちが見た時は凄い赤かったぞ」

「ルビティラもいない?」

「何がどうなっているんでしょうか?」

四人も一体何が起きたかいまいち飲み込めない。確かに赤い石だった。

それが今じゃ焼け石だ黒くて輝きもない。

「もういいわ!蛙なんぞにこれ以上侮辱されるなど我慢出来ぬわ!アイカ!」

「はいパパ!キマイラ魔獣この洞窟を破壊しなさい!」

「は?馬鹿かテメェら!」

「貴様らも生き埋めになるんだぞ!」

「私達は脱出するからいいのよ!」

兵士達は鎖を取り出しコハク達とアリシアを岩に縛り付けた。

「な!貴様!」

「どこまで汚いんだよ!」

「貴女絶対にいい死に方しませんよ!」

「この外道が!」

「アイカ…貴女って人は!!」

「人じゃないわ!私は悪魔よ。じゃね!」

そう言うとアイカ達は転移術の魔法陣に入り消えた。アリシアを残して。キマイラ魔獣は入る寸前に洞窟の天井を破壊し消えた。

洞窟が崩れ始めた。

「うわぁ!我輩達生き埋めですぞ!」

「違う窒息死だ!」

「どっちも嫌です!」

「クソ!剣があれば!」

五人の剣は取られたままだった。

宝救剣も宝救聖剣もあるていど離れていると何故か手元に来ないという妙なデメリットが存在しているのだ。

「ブラキオの奴余計な機能つけやがって!」

「とにかく何とかしないと本当にヤバい!」

「どうしましょう!!」

「うわーもう駄目ですぞ!!」

「みんな落ち着いて!」

アリシアは声を上げた。

「姫様」

「何の為にお祖母様から魔宝術を習ったのよ!今こそ成果を出しなさい!」

「そうか!僕達」

「マナリア様から術を教わってましたね!」

「ですがやれるでしょうか!?」

「やるしかないだろ!」

「うん!まずは鎖を切るわ」

アリシアは自身の中の魔宝石のアレキサンドライトにマナを集める。

そしてら体から一気に放出し鎖を錆びつかせた。脆くなった鎖をみんなで壊した。

「おお!」

上から降ってくる落石。一気に崩壊を始めた。

「みんな私に集まって下さい!」

仲間達はリアに集まる。

洞窟の外では先に逃げていたアイカ達が崩れ崩壊した洞窟を見物している。

「ついにアリシアは死んだわね!」

「ああ、お前が次の女王だとも!」

「ああ〜パパ〜」

「アイカよ!」

テナルディエとアイカは互いに抱き合い喜ぶ。

「さて奴らの剣を持ち帰るとするかな!」

テナルディエがアリシア達から奪った剣を兵士達から受け取ろうとした時だった。

五本の剣が光の粒子となり消えた。

「な、なんだと!?」

「どうしてパパ!?私の剣は??」

「何故だ何故消えた?」

「死んでないからに決まってんだろ!」

「「!?」」

テナルディエとアイカが振り向くと勇者の剣を手にしたアリシア達が立っている。

ヴァンフォワードはルーガルの頭の上だ。

「な、貴様ら!!」

「どうやって!?」

「お祖母様からちゃんと術を教わってましたから。誰かさんと違って!」

「くっ!」

「貴様ら魔宝術を使えるのか!?」

「当たり前だ!」

「勇者ですからな!」

「あの落盤から命が無事などあり得ない!」

「私がダイヤのかまくらを作ってみんなで避難したんです!」

リアが術でピンクダイヤのかまくらを作りその中でしのいでいたのだ。

「剣があるから術を使う必要ないと思ったか?」

「基礎あっての我輩達の強さだ!」

「盲点だったな豚男爵!」

「公爵だ!豚はいいが男爵は許せん!!」

豚はいいのかよ。

「発泡!」

しかし何も飛んでこない。

「何をしている発泡だ!発泡だ!」

「悪い全部倒したわ!」

「信道!!」

変身した信道が予め待機していた兵士達を倒していたのだ。信道は仲間達の元へ合流した。

「のぶさんあっちはいいんですか?」

「助っ人が来たからな!」

「助っ人?」

「今にわかるさ!」

(マナリアよ今の勇者達は中々見所があるじゃないか)

ヴァンフォワードはうんうんと頭を上下に動かす。

「後はお前らだけだな!」

「忘れたか?まだコイツが居る事を!」

忘れてたキマイラ魔獣がまだいた。

「テメェは正々堂々と戦う気ないのか!?」

「黙れワシは公爵だ。やがては魔王の一人だ!」

「貴方はとうに王族から外れているんだから公爵もないわよ!」

「なら姫様を人質に王に交渉しますかな?」

「うわゲスだ」とカイエン。

「卑怯者!」とリア。

「豚!」とアリシア。

「豚男爵!」とコハク。

「男爵豚!」とルーガル。

「豚饅男爵だろありゃ」と信道。

「貴様らぁぁぁぁ!!」

キレたテナルディエに黒い剣が光だしテナルディエの身体に纏う。

黒い煙から現れたのは黒い豚の姿に金歯に人の体に角を生やし翼を広げだ怪物だった。

「ぱ、パパ?」

「どうだアイカ!凄いだろ!パパは今最高の気分だ!」

「「「「「「マジで豚になったーー!」」」」」」

「オークより酷いなありゃ。なんて醜い豚じゃ」

「まだいうか!」

「鏡見なさいよ!本当に豚になってんのよ!」

アリシアが思わず突っ込んでしまう。

「やかましいわ!」

豚悪魔に変貌したテナルディエは口からビームを放つ。

アリシア達は慌てて交わす。

交わした際に洞窟に直撃し大爆発し焼き石と化したレッドベリルが飛んで来た。

「デタラメなパワーだな」

「豚のくせに」

「豚々言うな!こんな物!」

テナルディエは黒い剣を取り出し焼き石のレッドベリルを破壊する為に剣を振り翳す。

「辞めてーー!」

黒い剣が石に当たった瞬間ヒビが入り眩い光が溢れ出す。

「うわ!」

「きゃ!」

「な、何??」

黒い石の中からまるで太陽の様にメラメラと中で燃え盛るエネルギーをおびた赤い宝石が現れた。

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