第77話 ピンチ!幻の宝石を探せ!

ここは馬車の基地の中。

「涼!涼!お願い起きて涼ったら!」

アリシアは泣き叫びながら石像化した涼の胸に顔を埋める。

突然合体が解けたグランドホウキュウオー。更にルビティラも虫の息の状態なほど身体がバラバラに砕けてしまっている。それと同時に涼も石像化してしまったのだ。

「ブラキオ一体どうなんてんだ!」

「恐れていた事が起きたか…」

「恐れていた事?」

「前にも話したであろう…宝石獣と強気繋がりがある者は魔宝石が砕けたら…死ぬと…」

「は?ちょっと待てよ…涼が…死んだのか?」

ここにいるみんながそれを信じられない。

だってあの涼だぜ。

底抜けに明るくて訳わからない特撮とか言う芝居マニアで馬鹿でお人好しでタフなあの涼だぞ!あの馬鹿はそんな簡単にくたばるたまじゃねえ!

「冗談を言うでないわブラキオ殿!あの涼殿が死ぬなど…嘘だと言ってくれ!!」

「…すまぬ…」

「そんな…我輩…まだ涼殿に何の恩返しもしておりませぬぞ…」

「ルーガル…」

ルーガルの肩に手を置くカイエン。

「俺たちだってそうだ!」

「そうですよ先生には返し切れない借りがあるんですよ!」

「涼さんのおかげで俺たちは今ここにいるんですよ!」

3人は涼に助けられ励まされ罪と向き合って変わる努力が出来る様になったのだ。

その恩人が死ぬなんて考えたくもない。

「くそ…最後まで馬鹿なんだから君は…」

「私達…これからどうするんですか…」

「みんな…」

マナリアはどう声をかけてあげるか判らない。先代勇者と言ってもこんな時何も出来ない。

「ベル!お前は天才なんだろ?だったら魔人族の技術で!」

「無理であります…」

「何でですか?貴女はドクターの妹でしょ!」

「ドクターが出来るなら貴女にも!」

「私もどうにかしたいであります!でも…命はどうにも出来ないであります…例え兄様でも無理であります…死んだ人は…無理であります…」

ベルは大粒の涙をこぼす。

出来る事や可能性は全部考えた。でもやっぱり死んだ人間はどうにも出来ない。

「ワニ!」

ルビティラも自己修復不可能だ!このままでは生き絶えてしまうぞ!

「デイノ!このタイミングで来ないでよ!」

「ワニ!?」

わ、ワシのせいじゃないぞ!

空気読まずに入って来たワニ爺を叱るマナリア。しかし今の話を聞いてみんなますます落ち込んでしまう。

ルビティラはおそらくずっと無理な合体続きで身体が悲鳴を上げてしまい更には自分より硬いアレキサンドライトが合体した事で無理して脆くなっていた身体がとうとう限界に達して砕けてしまったのだ。

いくらルビーやサファイアがコランダムと呼ばれるダイヤの次に硬い宝石から生まれたにしてもアレキサンドライトの硬度は上回っている。あんなに沢山の宝石が中心に集まれば重さや圧迫も半端じゃなかったのだ。

「ブラキオ…本当にどうにもならないの?」

「すまぬ…アリシア…出来れば我もなんとかしてやりたいが…此奴の魔宝石が砕けた以上…2人はもうどうにもならぬのだ…」

全盛期の力があればあるいは…

「ブラキオちょっといいか?」

「なんだ信道?」

「契約してるって事は2人の命は繋がってるんだよな?」

「あ、ああ。それがどうした?」

「いやルビティラは虫の息だがまだ生きてるって事は…涼はまだ死んでないんじゃないか?」

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

「…!そうか、確かにまだ死んでない!」

「それ本当なの!?」

「涼が石になったのはルビティラが砕けてからだ。宝石獣の生命力で繋がっているなら、ルビティラが元気を取り戻せば…」

「涼は生き返る!!」

そう宝石獣と契約した勇者の命は実は繋がっている。契約した際に勇者石が宝救剣を与える。しかし異世界人である涼は元より魔宝石が無い。契約した際にそのパートナーの元になった宝石が異世界の勇者の魔宝石になる。つまりは魂が魔宝石に代わるのだ。

絆が強いほどその力は強いがデメリットがある。契約した勇者が死ねば宝石獣は死ぬ。逆もまたしかりだったのだ。

だが、見方を変えれば宝石獣がまだ生きていれば契約した勇者もまだ生きている事になる。つまりルビティラが復活すれば契約した涼の魔宝石も蘇り涼も生き返るのだ。

「祖父さんの話ではかつてはゴルーケンも修復不可能な程のダメージを受けた事があり、その時他の宝石獣の体を貰い受けて見事復活したって聞いた事がある。」

「それ本当なの!信道!!」

「だからゴルーケンだけ他の宝石が散りばめられいたのか!」

「でわルビティラにも我らの宝石獣の宝石を分け与えれば復活しますな!」

「だな!冴えてるなルーガル!」

「それは無理だ」

キッパリ言い切るブラキオ。

「「えーーーなんで!?」」

ハモるカイエンとルーガル。

「ゴルーケンが他の宝石で復活したならルビティラも復活するんじゃないんですか?」

「そうだ、マリケラ達の身体を少し渡せば…」

「始祖鳥が復活出来たのは奴が金だからだ。金はあらゆる宝石を散りばめ輝きを引き立てる。貴様ら人間がジャラジャラ付けてるアレを見れば判るだろ。始祖鳥は金の宝石獣たがら他の宝石と合わせるのが可能だったのだ!」

「つまり受け皿になっても自身に支障が無いって事ですか?」

「そうだ。」

「アクセサリーで言うなら土台です。金の装飾をベースに様々な宝石がより輝く。ゴルーケンはその土台そのものだからタイプの違う宝石は邪魔にならず穏健を与えているって事ですね!」

愛(まこと)が説明した。

様は見栄えだる。金の装飾品は土台になる金も引き立ち更に合わせた宝石も邪魔にならず調和する。これと同じだ。合わなければただ邪魔なだけ。

「そう言う事だ。中々判るじゃ無いかお主!」

「実はアクセサリーを作るのが趣味だったんです。」

「愛の作品は凄いんですよ!」

「ネットオークションでいつも高値だったからな!」

「ネット?」

「それはともかく。先生を助けるためにはルビティラを似合う宝石が必要って事なんですね!」

「ああ、しかも大量にだ。元の大きさ分は必要だ。」

えー…そんな大量な宝石があるわけないだろ。

「しかも奴は希少種である赤い宝石獣だ…余計に見つからん…」

ルビーとか見たいな赤い宝石自体が中々見つからない物だからな。それが本来の大きさ分なんてな…アイツ軽く40メートルはあるからな…無理だそんなデカイルビーなんか今更あるかよ。

「ルビー自体が元よりもう…」

「せめて近い宝石獣が生き残ておればな〜」

ブラキオは3人に聞こえるように言い放つ。

「ルビーって確かコランダムって原石だったよな!」

「その原石は?」

「ないわ!今更探しても間に合わんし、仮にあっても赤い宝石は多分ない…」

そういやサファイアの割合が高いとか聞いたな。

「カルタノは駄目なのか?奴はサファイアだ。ルビティラと同じ鉱石から生まれたなら!」

「余計に合わん!赤い宝石獣はなるべく赤い宝石を使わないと修復が成り立たないのだ。そもそも属性が違うわ!」

くそ…土台が合わないのかサファイアじゃ…

「残念ながらルビーかそれに近い赤い宝石がないとルビティラは復活出来ぬのだ…」

「ブラキオ殿が見つかったのですから、ルビーだってまだ何処かに!」

「ルーガル話聞いてなかったのか?無いんだよあってもとっくに他の宝石獣になってるだろう。絶滅してるし…おとぎ話の時代でもなきゃそんな大きい宝石なんか…」

コハクが呟く。昔は確かに沢山居たらしいからな。宝石獣。

「おとぎ話…!!幻の宝石!」

「え?」

「幻の宝石よ!幻の赤い宝石レッドベリル!」

「そうか!!レッドベリルか!アレなら確かにルビティラに合うかもしれない!」

「レッドベリル?何だよブラキオ?」

「宝石獣に変化しなかった唯一の宝石だ」

「レッドベリルとは初代勇者が1つだけ持っていた赤い宝石よ。その力は太陽のごとしエネルギーと高温を放ち生命の頂点君臨する力を持っていると言われいるのよ」

「しかし、そのパワーは余りにも強大で宝石獣の形にすらなれない、様は魂の依り代になれなかった唯一の宝石だ!」

「一欠片でもとんでもない力だったから封印されたのよ」

「僕達の世界でも殆ど出回らない幻の宝石と呼び名が高く別名レッドエメラルドと呼ばれる程に鮮やかな赤い石なんです!」

レッドベリルとはアレキサンドライト以上の希少さからまず加工されていない状態が多くしかも大体が一欠片くらいしか見つからず出回る事自体がまずない故に幻の宝石と現実に言われいる宝石で別名レッドエメラルド。

「そのかけらは封印したが。恐らく成長しているはずだその魔宝石の塊は!」

「じゃあその宝石なら!」

「ルビティラの身体に合うかもしれない!!」

「で、何処にあるんだ?その宝石は!?」

「知らぬ…」

「何っ!?ふざけんな!」

「ふざけてないわ!我が封印したんじゃないから知らぬのだ!」

は?ブラキオが封印したんじゃない!?

「まつであります!姫様その本の作者は?」

「え?作者?」

「そうか!書いた本人なら何か知ってるかもしれない!」

アリシアは奥から革張りの古い書物を持って来た。

「初代勇者伝説期」と書かれている。

「作者は…V・F・E4世?」

「誰だ一体?」

「ヴァンフォワード・エンブレム四世」

「お祖母様?」

「なぬ!ヴァンだと!」

「ブラキオ知ってるの?」

「知ってるも何も奴は初代勇者の1人で定を召喚した張本人だ!」

「何だと!!」

初代勇者を召喚した最初の勇者である魔術師名はヴァンフォワード・エンブレム四世。

ガネットがまだ無い時代にアリシアの先祖と共に戦った初代勇者の1人だ。

「そう言えばレッドベリルはヴァンがどっかに持っていて封印したな!」

「でももう居ないんだろ」

確かにそんな昔の人間が生きてる訳がない。

「ううん、ヴァン先生は生きてるわ」

「なぬ!?生きてる!?」

「お祖母様、先生って…」

「ヴァンフォワード先生は私の先生なの!」

えーーーーーーー!

一同声を上げた。

「今は引退して洞窟に住んでいるのよ」

「まさか奴が生きているとは…不老不死がなんとか言ってたからな…」

ブラキオがそうとう驚いている。

「お祖母様!」

「ええ、会いに行きましょう!」

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