第54話 登場 ブラキオサンドライト

ここは魔界にある魔王軍の城の研究施設。

「私の中に初代勇者剣が!!」

アイカの顔がパァっと明るくなる。

まるで玩具を与えられた子供みたいだ。

「マジか!!アイカは初代勇者の末裔だもんな!」

「ラストアイテムはとうに俺たちが持っていたんだな。」

「これでイベント完了まで後少しですね!」

先代勇者達も嬉しそうだ。

魔王コキュートスから聞いたアッシュベルがアイカ達に伝えたのだ。

「博士本当なんでしょうね?」

「ええ、コキュートス様の話では、アイカさん。貴女のご先祖が持ち逃げし今にも至ると」

「も、持ち逃げなんて人聞きの悪い事言わないで」

でも実はその通りだった。

実はアイカの先祖はガネット王族の双子として産まれ跡目争いに敗れ勇者の剣を渡さず身投げしたと伝えられていたが生きていた。

これが真実だった。

「でもこれで私も王位継承権が揺るがない証拠。後はアリシアから宝石を取り出し手に入れるだけ!」

「アイカさん。貴女の剣も霊剣ですから取り出せませんよ」

「え!?そうなんですの!?」

全く話を聞いていなかった。

「なら、どうすんだよ!ドクター!」

カイトが聞く。

「だから宝石神を取りにいくんですよ」

「何!?場所がわかったのか?」

「博士。どこですか?」

「正確には手がかりがある場所へ向かうんですよ。」

「手がかり?何処だ?」

「顔面島です。初代勇者の墓があるんですよ」

やはり同じ答えに行き着いてしまったようだ。

「よーし!いっちょやるか。お前ら!」

「装備は万全ですからね。」

「ああ」

カズ達の後ろには奪った宝石獣達が船に積み込まれ始めていた。目指すは顔面島だ。

:

「頼むぜゴルーケン!」

「アーアー!」

ゴルーケンが羽根をバタバタしている。

「皆んな気をつけるでありますよ!」

「私達は連絡役として残るから行けないけど皆んな気をつけてね!」

ベルとマナリアは馬車を修理しがてら連絡役としてガネットに残る事にした。

「アリシアまた付いてくるのか?」

「当たり前よ!初代勇者の末裔の私が行かないと始まらないでしょ!」

「国王が泣いていたぞ姫」

「カイエンほっといて頂戴」

すっかりなんじんだな。

「また今回は全員行くし大丈夫だろ」

「我輩達にお任せを!」

「では行ってまいります!」

「アーアー!」

全員乗り込むとゴルーケンは飛び上がりあっという間に見えなくなった。

:

カイアナスを超えると涼達は海の上まで来た。しばらく海の上を飛んでいると霧に包まれてきた。

霧の先に断崖絶壁の巨大な岩の島が見えてきた。アレが顔面島だ。

顔面島はまるで人の顔に見える岩の島の為その名がついた。

「アレが顔面島か!」

「確かに顔に見えなくはないが…」

「デカイ島ですな〜」

「岩ばっかだな」

「ここにお墓があるんですよね?」

「らしいな」

「降りましょう!」

「ゴルーケン!」

ゴルーケンは顔面島に降下していく。

広い場所に着地し涼達を降ろした。

ゴルーケンは涼達を降ろすと飛び上がり何処かへ行った。

「ゴルーケン何処行ったんだ?」

「心配ない雲の中で待機してるんだ」

「さあ、初代様のお墓を探しましょう」

「しかし、岩ばっかだな」

確かにこんな殺風景な所にお墓を建てたのか。

本当に岩ばかりだな。

しばらく歩いていると墓石らしい石を見つけた。

「アレがお墓か!」

「確かに墓石だありゃ!」

涼達は墓石へ近づいていく。墓石には確かに「初代勇者ここに眠る」とある。確かに墓石に間違いない。

「でも他に何も書いてないわね」

墓石にはそれ以外書いてない。

「無駄足だったのか?」

「いや、初代勇者が眠ってる場所だ何かあるかも知れない」

「そうね。探しましょう!」

「やはり来たわねアリシア」

やはりと言うか目の前に現れた魔王軍の先代の馬鹿勇者とアイカ達だ。

馬鹿勇者だと!!回想シーンにまで現れるな!

「アイカ…」

「やっぱり来やがったか」

「貴方のせいで僕の足は治らなくなりました!どう責任取るんですか!」

「アイン落ち着けよ!状況はこちらが有利だ。」

有利だと?

「アリシア大人しく王の宝石を差し出しなさい。それと犯罪者共も勇者様達に剣を差し出しなさい。これは時期女王の命令よ!」

「は?お前頭おかしいのか?」

「頭ない奴には言われてたくないな!」

女の道化に言われてもな…全くその通り。どっちが馬鹿だか。

「私には初代勇者の剣が宿っているのよ。つまり私が初代勇者に選ばれた時期女王なの」

「やっぱり気づいていたか」

「貴様には王位などもう無いではないか!」

確かに魔人族に加担して王国にアレだけのことして何を言っているんだ。

「そもそもお前は王位に就くのは無理だったんだろ?それが許せなくて家族を殺したくせに!」

「五月蝿いですわよ!いいから黙って渡しなさいな!」

あーもう面倒くさい奴。

「つか渡す訳ないだろ!お前らには使えないんだぞそれは分かってるのかよ?」

「そうです!早くルビティラちゃん達を返しなさいよ!そっちこそ!」

「返して欲しいなら契約を切り勇者の剣を渡せ!そうすれば生かして解放してやるよ!」

カズがそう言うと後ろからカルタノハオーが檻に入れた宝石獣達を連れてきた。

「ルビティラ!」

「涼!」

よかった皆んな無事だ!

「生かして解放してほしいなら、皆さんの剣の契約を切り僕らに剣を渡して下さい」

「さもないとコイツらはアクセサリーだぜ」

更に後ろからゲーターオーが現れ槍をルビティラ達の檻に向けている。

今の宝石獣達は身体を痛めつけられて元の大きさには戻れない状態。成る程優勢とは人質か。

「何で宝救剣がいるんだ?」

「お前達には関係ない!早く渡せ!」

こいつら…駄目だ断るとアイツらは躊躇なくルビティラ達を破壊するだろうな。

「俺達がログアウトするにはお前らは邪魔だ。さっさとチート品を俺達に返せ!そうすれば材料は逃がしてやる」

「て言いつつどうせ宝石獣達をまた狩るんだろ!」

「うっせえよおっさん!」

「あの金ピカの鳥は居なかったりお前らの近くにいるんだな?下手な事したらコイツらをバラす」

奇襲は無理か…隙を見てゴルーケンで助けようと思ったが無理か。

「前から気になってたんだがな。お前らいつから来たんだ?」

涼は尋ねた。

「いつ?」

「西暦だ!お前ら2018年から来たんじゃないのか?」

「はぁ?何を言ってるんですか?今は2058年ですよ。」

2058年!?こいつら40年後の未来から異世界に来たのか!?

「お前もログアウト出来ないでこんなゲームの中に取り残されたプレイヤーなんだろ?運営側に随分贔屓されてるみたいだがな!」

成る程そう言う事か!

こいつらはゲームのログイン中にこの異世界に召喚されたんだ。

恐らく同じ内容の似たゲームの世界だから区別が出来てないんだろ。でもこれだけ視野がハッキリしてるのに現実とは全く思っていない?多分誰かに騙されて変な術でもかかってるんだなきっと。アイツらにとってはここはゲームだから何をしてもデータだから復活する。そう信じてやまないから歯止めがないんだ!

「いいか!ここはゲームの中じゃない。俺は2018年の人間だ!お前らの言うゲームはまだ完成すらしていない時代の人間だ!」

「何を言ってるのかしら?頭大丈夫なの?」

「2018年だと…馬鹿かお前は?そう言う設定はリセットしてから作ればいいだろ!」

「だからここは本当に異世界なんだよ!お前らはゲームしていたんじゃなくて、本当にこの世界で人殺しをしてたんだ!いい加減に目を覚ませよ!」

涼は怒鳴り上げた。

「当たり前だ!目を覚ますために俺達はログアウトを!」

「だから現実だって!」

「さっきから馬鹿な発言ばかりして。僕たちは運営側のトラブルに巻き込まれてログアウト出来なくなったんです!」

「だからこの世界をリセットしてログアウトをしようとしてるんだよ!」

「100年以上も居る時点でおかしいだろ!」

「おかしい?おかしいのはお前だ!俺達は閉じ込められて1年だぞ!」

はっ?一年って!?そんか馬鹿な…コイツらの話が本当なら確かに今までの行動にも合点はいく。でも1年なんて体感時間がおかしいぞ。

「運営側が何もしないならバッドエンディングに持ち込んでこのサーバーを破壊して俺達は強制ログアウトする!」

「それがお前らの目的なのか?」

「ええ、それ以外ないですよ!」

「俺達が帰るためのエンディングを迎えるにはお前らのチートが邪魔なんだよ!」

「だったら余計にお前らに剣は渡せない!」

「なんだと?」

「ログアウト?ふざけんじゃねぇよ。お前らがやってるは汚いPKと同じなんだよ!いつまでもおかしいとも思わず周りに流されて好き放題にやって…親切も生き物も踏み躙りそれを悪とも思わない。お前らはただのマナーが悪いだけのクソプレイヤーだ!」

「言いたい事はそれだけかしら?」

アイカが指をパチンと鳴らすと周りに隠れていた魔人族の兵士達が取り囲む。

「いつの間に!?」

「囲まれましたぞ!」

「さあ。もう逃げられないわよ。」

「貴方がたは本当に」

「どんだけ卑怯なんだ」

「アレが爺さんの元同僚だと…涙がでるな」

「流すなよ爺さんに悪いから」

「アイカ…」

アイカがゆっくりと近づいてくると手をアリシアへ伸ばす。

「さあ、アリシア。おいで」

「わかったわ…」

「アリシアよせ!」

「でもこのままじゃルビティラちゃん達が!」

「ええい、さっさと来なさいよ!」

アイカは強引にアリシアの腕を引っ張り引き寄せようとする。

「離して!」

アイカがアリシアの胸を掴んだ時だった。

二人の身体が光り輝き互いの身体から剣とアレキサンドライトが現れた。

剣と宝石が輝き消えると次の瞬間激しい揺れが襲う。

「な、なんだ??」

「じ、地震か?」

「いや、これは地震じゃない!」

そう地震じゃない。島が動いているのだ。

岩がヒビ割れていくと割れた所から眩い輝きの赤い宝石が見える。太陽に当たると今度は鮮やかな青い色に変わる。

どんどんヒビが入り涼達がいる場所から何かが伸びた。というより首が現れた。

「な、何がどうなってるかる?」

「判りません!」

「今だゴルーケン!」

「アーアー!」

ゴルーケンが急降下し両足でルビティラ達が捕まっている檻を奪還した。

「しまった!」

「よくやったゴルーケン!」

島から足の様な物が見え立ち上がろうとしている。

「まずい崩れちまう!」

「みんな飛び降りろ!」

「無理無理無理よ!」

「いいから飛ぶぞ!」

涼はアリシアをお姫様抱っこし海へ飛び降りる。仲間達も皆飛び降りる。下でゴルーケンが待機し皆を背に乗せ島から離れた。

「な、何なんですの?この島は?」

「アイカ乗れ!」

アイカは兵士達を見捨てカルタノハオーの手に飛び降り島を離れた。

顔面島の岩は剥がれおちていき。

そして島と思っていた場所は巨大な物体の背中だったのだ。そして完全にヒビが入り全ての岩が割れると中から現れたのは、巨大なアレキサンドライトの宝石獣だった。

「ブラァァァァァ!」

「アレってブラキオサウルスか!?」

「まさか…」

「あのデカいのが!」

「宝石神!?」

「ブラキオサンドライトだティラ!」

「ブラァァァァァ!」

宝石神ブラキオサウルス。

そう、これが初代勇者のパートナーであり全ての宝石獣の始祖。

宝石神ブラキオサウルス。又の名を…

ブラキオサンドライトだ!

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