第53話 嘘だろ!?剣はあの中に!!

魔王軍にまんまとやられ宝石獣達を奪われた涼達は一旦体制を立て直す為にガネット王国へ戻り今は城にいた。

「宝石獣達が奪われたですと!?」

ガネット国王が玉座から立ち上がる。

「ああ、まんまとやられた…」

「私がついていながら…」

「マナリア殿!そんな自分を責めないで下さい」

ガネット国王から見てマナリアは義理の祖母に当たる。当然彼女の事情も知っている。

「すまないみんな…」

「私達が油断したから」

「皆さん我輩は…」

「もういいさ、それに全員奪われたわけじゃないだろ」

信道の肩にゴルーケンが停まっている。

ゴルーケンだけはとっさに風見鶏に擬態していた為奴らの手から逃れる事が出来たのだ。

「アーアー」

しかし、コイツは意思疎通が出来ない為何を言ってるかはさっぱり解らない。

「ゴルーケンお前喋れないのか?」

「アーアー!」

甲高い声しか出せないのかよ…全く言ってる事がわからないんじゃな…戦力としては十分だけど。

「仕方ないさゴルーケンは古代宝石獣だからな」

古代宝石獣はワニ爺達よりも古く古参な種族で昔からその姿は変わってない。よって意思疎通も出来ない。

理屈になるのかよそれ…しかし不便だな。

「ルビティラが宝石神を探せっていったのか」

「だけど、もうルビティラはアイツらに!!」

「落ち着け涼!アイツら恐らくしばらくは大丈夫なはずだ」

「ルビティラちゃん達はアクセサリーにされるんでしょ!?だったらもうアイカに…」

「俺たちのチェンジストーンが砕けてないって事はまだ宝石獣達は生きてる証拠だ。だろ、ゴルーケン?」

「アーアー!」

ゴルーケンは羽をバタバタと動かしている。

どうやら本当らしいな。

「しばらくは大丈夫って何の根拠があるんだい?のぶ!」

確かに今はまだ宝石獣達は生きてるのは間違いない。それはチェンジストーンで彼らが変身出来るって事は力を貸している宝石獣達はまだ生きている証拠だ。

だがしばらくはの根拠は判らない。

「奴らは多分カルタノハオーの強化に他の宝石獣達を使うはずだ。それにそうしないと太刀打ちが出来ない相手がいるからだ」

「太刀打ちが出来ない相手?」

「宝石神だ」

そうか!いくら強いカルタノハオーでも単体で神なんて呼ばれてる奴に挑んだ所で勝てるわけない!だったら砕く前に利用すると考えるはず。

「奴らは宝石神に場所に気づいたという事ですか?のぶ殿!」

「いや違うだろうな、多分剣の方だろうな」

「宝石神を探す手がかりは初代勇者の剣だけだ。魔王が冥界に居たって事は間違いなく奴らにも情報が渡ったはずだ」

確かにもしそうなら急がないと手遅れになる。

「とはいえな分かったのは剣が霊剣で何代か後の子孫に渡りそっから消えた事だ」

「消えた?」

「ああ、どうやら死んだら子孫に移るらしいんだが途中で途切れたんだ」

そう、初代勇者の剣が途中で消えていた。

この途中で消えたって言う辺りがずっと引っかかっていた。

「なあ、もしかしたらその剣は俺たちの剣みたいに石とセットだったんじゃないか?」

「セット?」

「ああ、例えばそうだな…消えた辺りの子孫の家系図が二股に分かれていたろ?あれってもしかして双子で生まれ時に剣と石に分かれたんじゃないのか?」

「成る程な!」

「涼冴えてるじゃないか!」

確かにそう考えれば合点が行く。

剣は消えたんじゃなく、恐らく産まれた双子に分かれたんだ。一つは剣にもう一つは…

「アレキサンドライト!」

アリシアは胸に手を当てる。

「つまり初代勇者の剣はそのもう片方の子孫に受け継がれて行方不明になったって事ですか?」

「確かに霊剣ならあり得るであります!」

「王様!あの泥棒女以外に親戚はいないのか?」

「私はあくまで婿養子ですから、妻が生きていればわかったかも知れませんが…」

ガネット王は養子だったのかよ。

「その分かれた子孫の名前は判らないのか?」

「あ!そうか!」

乗ってたは名前!

「確か名前は…」

「マリッサ…だっけ?」

「だったな」

はあ?手がかりはそれだけかい??

「あ!そうだ!ガリウス卿の屋敷!」

「そういや言ってたな。泥棒女の実家の壁に書かれていたって」

「ガリウス卿の屋敷に?そういえば…」

国王は思い出した。ガリウス卿が妻の妹に求愛しにこの屋敷にやってきた事を。

「お父様。何か知ってるんですか?」

「いやな、奴が妻の妹。つまりお前の叔母のナタリアに求愛を申し込みにきた時に言っていた事があった」

「求愛?あの豚みたいな奴が?」

「そもそも何で結婚したんだ?」

「来た際に奴は「私はガネット王族の遠い血縁です」と言っていたんだ。戯論だとたが気にもしてなかったが」

奴がアリシアの遠縁の親戚?いやまさかな…

「それがまさか結婚に繋がったのか?」

「いや全く相手にしてなかったナタリアが突然結婚すると言い出したのは私も覚えている。だがまるで操られてるみたいに感じたが」

操られてた?あの豚みたいな奴に?

そういやあのおっさん…アリシアの中の宝石を具現化出来るとか何とか言ってたよな。

!?

涼は嫌な考えが頭によぎってしまった。

「涼?どうしたの?」

「アリシア!あの泥棒女の家は何処にある!」

「え?街の外れだけど」

「だったら急いで行こう!もしかしたら勇者の剣の場所がわかったかもしれない!」

涼はそう言うと走り出す。

「ちょ!涼!?」

「俺たちも行くぞ!」

アリシア達は涼を追いかけて城を後にした。

:

ガリウス卿の屋敷。

かつてアリシアが捕まっていた場所だ。

あの事件の後に屋敷へ向かったが既にもぬけの殻で今は廃墟と化している。

涼達は屋敷の中に入ると急いでガリウス卿の部屋がある二階へ駆け上がっていく。

「この部屋よ!」

扉を勢いよく開けるとそこにはデカイ木に書かれたガリウス家の家系図が描かれた壁があった。

「何だこりゃ?」

「ガリウス卿の家系図よ。」

アリシアは見渡すとあの名前を見つけた。

「あったわ!マリッサ!」

壁には「マリッサ・GN・ガリウス」と書かれている相当下の方に木の根に書かれている。

見た感じ嫁入りかな?

「GNってまさか」

「ガネットよ」

マナリアが口を開く。

「賢者様本当なのか?」

「ええ、アレは確かにサインする時に使う頭文字で花がイニシャルで書かれてる」

「マジかよ…剣はあそこだ…」

「涼?」

「剣が何処かわかったのですか?涼殿!!」

そう間違いなく初代勇者の剣はあそこだ…

「何処なんだ?」

「アイツの中だ…」

「ちょ!まさか涼さんあの人ですか!?」

「誰ですぞ!?」

空気を読まず声を上げるルーガル。

「アイカ…」

「え?姫様?」

「初代勇者の剣は…アイカの中にあるのよ…」

そう間違いない。初代勇者の剣はあの女の中にある!つまり敵側に既にある。

「あ、あの泥棒女の中にですと!?」

「マジかよ!?」

「やっぱり…」

「なんてこった…」

「敵が既に手に入れると同じであります!!」

「やっぱりそうなんだ…」

「これで全て繋がったな…」

これかなりマズくないか!?

初代勇者の剣がよりによって…あの女の中にあるなんて…この事を奴らが知ったなら間違いなく次はアリシアを狙ってくる。

「あ!でも肝心の宝石神は何処にいるでありますか?」

「確かに剣の在り処が判っても肝心の宝石神が何処にいるかまでは誰も知らないはずだ」

例え魔人族でもだ。

じゃなきゃ血眼になるまで探したりなんかしないはずだ。

「宝石神は剣と石が揃わないと姿を現さない筈だ」

「ちょっと待って…確か物語では…」

アリシアは良く聞かされた勇者物語を思い返してみた。

初代勇者が亡くなると悲しんだ宝石神は共に暗き海の底へ沈み島が生まれ勇者は永遠の平和を願いその島に眠る。

「島に眠る?」

「それはおとぎ話だろ?」

「いや当たってるかも知れない」

「その話は確か初代勇者の墓がある場所、顔面島がモデルだ」

顔面島?

「顔面島は顔見たいな形の岩だらけの島よ」

マナリアが説明した。

岩だらけの断崖絶壁の島でそこに初代勇者の墓がある。

「実在の場所なのか!」

「そこに行けば!」

「手がかりが見つかるかもしれないであります!!」

そうと決まれば行くぞ。

「その島は何処だ?」

「確か港町のカイアナスから行ける筈だ!」

「海のど真ん中だからな!」

「でも乗り物は?」

「ゴルーケンに乗ればいい!」

そうか!ゴルーケンがまだいたな。アイツはデカイから俺たちを運べる。

「よし行くぞ!」

涼がそう言って走る。

「だから待てって涼!」

「何でだよ!早く行かないとアイツらに!」

「奴らが同じ答えに辿り着いてるとは限らない。それに昨日の今日だ。」

確かに俺たちも帰ったばかりでコハク達は治療を受けたばかりだ。

流石に皆んな疲れている。

「だから出発は明日だいいな?」

「わかったよ。のぶさん。俺焦ってた」

「それは皆んな同じよ涼」

「そうと決まればみんな。ウチの店に来い!久々に手料理を振る舞うぜ!」

信道がねじり鉢巻をぎゅっと結ぶ。

「信道の料理でありますか!!」

「食べたいです!」

「腹ペコですぞ」

「腹が減っては何とやらだ」

「ですな!」

「賛成だ」

「信春くんの味…久しぶりね」

皆んなお腹空いてるんだな。

「よし!のぶさん上手い飯をたのむ!」

「任せておけ!最高の一品提供するぜ!」

信道はそう言うと腕まくりをする。

涼達はとりあえず出発を明日にした。

これから起こる事はまだ知らない。

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