目蓋の裏のみな底

帆場蔵人

第1話 目蓋の裏のみな底

とじた目蓋の裏に海がさざめいていて

丸めた背中の上を野生の馬たちが疾る

寝息を受けて帆船が遠くへ遠くへ


あなたの存在そのものが夢のよう

そんなふうに思えたことがあった


ひとりでない、なんて夢のようなまぼろし


いつの夜だったか

真夜中の坂を行進して

朝とともに転げ落ちた

やはりひとり、で

丸まって眠る子ども達の

抜け殻を見下ろしている


見上げれば星の群れが

ひとつひとつ、違う速度で

羽ばたき、電線が波うつ


海はなく、野生の馬たちの嘶きも遠く


ふたりの抜け殻は

帆船の一室で

手を繋いだまま

遠く 遠くへ

目蓋の裏 みな底へと沈み


坂の下から

朝の方角へ


歩みさるひとびと

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