未来からの使者?
あれは私自身だったのか?
振り返ると、そうとしか思えなくなる。
人生が崩壊する前、私は、ある県で1番大きい書店で責任者(店長)をしていた。
そのとき、そいつは現れた。
小売業(店)なら、訳のわからない客なんて山のように来店するし、そんな奴を相手に対応しなければならない場面にも遭遇するだろう。
あるとき、「お客さんが怒鳴り声を出しながら暴れている」と、店員が私を呼びに来たので対応した。
中年のオッサンだった。
「どうしましたか?」と聞くと……。
そいつは私に対して、とんでもない答えを言ってきた。
「俺の目の前で、あの2人がイチャついていたからムカついた……」
あの2人とは、どこにでもいるような高校生カップルだった。
ただ、手を繋いでいただけだった。
その光景にキレたのが、この中年のオッサンだった。
私は守るべき家族もいないし、愛社精神も無いので、クレーマーとは情け容赦なく喧嘩する。
「土下座しろ」なんて、よく言われたけど、当然、1度もしたことはないし、経験上、そういう奴に限って、いざ殴り合いとか殺し合いになったら弱い奴しかいない。
こいつも、外に出るように言って、店の外に連れ出した。
訳のわからない理屈を並べてキレ続けているので、私も言い返して、怒鳴り合いの喧嘩になった。
たとえ殺し合いに発展しても、私は受けて立っただろう。
最後は、「他の店で暴れて来い!」と、こいつに吐き捨てたらいなくなった。
あれから、もの凄い年月が流れている。
あのあと、私の人生は崩壊した。
結局、家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしで1回きりの人生を終えた。
生きる意味・気力・目的・希望は無くなった。
人生への無念と絶望が、幸せな他人に対して憎悪を生み出すようになった。
今の私は……、若い恋する2人を見ていると、それだけで殺してやりたくなる。
そんな自分に想いを巡らせているとき、あのオッサンのことを思い出す。
今の私は、当時のあいつよりも遥かに凄まじい憎悪に駆られている。
あれは私自身だったのか?
どう考えても、あれは未来からのメッセージを、私自身が受け取ったような気がしてならないんだ。
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