第29話 最終決戦(1)
誰もいない通学路。今はHRをやっている時間だろうか。校門前は私が学校に通ってたのと同じように誰もいない。生徒がサボったのすら分からないような学校だ。一応、校門は閉まってて鍵がかかっているが壊せばいい。
「あーこちらガブリエル。そして、ここからはシェヘラザードを名乗る。聞こえるか?」
「ええ。そっちも聞こえてる?」
「無論だ」
ガブリエルとは小型無線機でやり取りをしている。ホームズ先生はこの場には来ていない。山小屋で呑気に紅茶でも啜っているころだろう。
「シェヘラザード。双眼鏡からエステルかリリアンの位置は見える?」
「無理だな。ララから見ても分かると思うが、カーテンは閉まってる。侵入して直接殺すしかないだろ」
「そうね。入るわ」
「それじゃあ派手にドーン!!」
シェヘラザードの声で学校が爆発する。なぜ爆発するか?
それは夜中に忍び込んで爆弾を仕掛けたからよ。警備がザル過ぎるとシェヘラザードが言っていた。辺りがガヤガヤと騒ぎ始める。設置したのは職員室。これでパニックになるとかシェヘラザードは言っていた。
私は剣を出して校門を破壊。それから走り出して学校に侵入する。
さぁ皆殺しの時間だ!
「まずは二階の三年生の教室。そしたら次はエステルとリリアンがいる二年生の教室!」
最高に楽しい。これから何人が泣きわめくのだろうか。それを想像すると心の底からワクワクする。そして三年生の教室に入る。中では騒ぎになっていたが、私が入ってくるとすぐに静まる。
「皆さん。こんにちは。死ね!」
そして剣を飛ばす。最初はヒョロガリの眼鏡。これで周りは状況を理解するだろう。さぁパレードの始まりだ。血の雨を降らせ!
……しかし、血の雨は降らなかった。窓が割れてカキンと鈍い音がして、剣が転がり落ちる。近くには革靴が一つ転がっている。それから一人の女のが降り立ち、一言だけ言う。声は透き通っているが、どこか芯のある声が上がる。だけど、声から焦りなどは一切感じない。
「あなた達。ここから離れなさい」
「なんでお前がここにいる!」
「そんなの決まってるじゃない。三階の窓から飛び降りて、二階に来たからよ」
私は叫んだ。すぐに理解する。私の剣は革靴で弾かれた。靴飛ばしの要領で革靴を投げて、私の剣を弾いて、生徒を救ったのだ。このリコという女は!
「まさか侵入初日から会うとは思わなかったわ。ララちゃん……いや、今のあなたには『ちゃん付け』する価値もないかしら?」
「ララ! なにがあった!?」
無線機でシェヘラザードの声がする。私は一言だけリコが来たと伝えておく。リコ。ここでも私の邪魔をするか。
「……誰も動かないわね。まぁいいわ。ここにいる分には私が守れるから」
「ララ。絶対にリコは殺すなよ? あとここから離れろ」
「わかった」
リコには勝てない。前は頭に血が上って喧嘩を売ったが、冷静な今なら逃げるのが先決だと分かる。すぐに教室から走って出ようとする。しかしすぐに私の目の前にリコが来て、私を蹴り飛ばす。
「ぐべぶっ」
「もう容赦はしないし、迷わない。きちんと独房にぶち込んであげるわよ」
まだ、逃げられる。私は体を引きずって窓を目指す。窓から身を投げ出せば、逃げられる。そう思っていた。しかし首根っこを掴まれて、教室に引き戻される。それから強引に上に放り投げられて、落ちてきたところに膝蹴りを打ち込まれる。
痛い! 今まで殴る蹴るの虐めを受けていたが、ここまで派手なのが初めてだ!
「……言ったでしょ? 独房にぶち込むって。つまり逃がさないってことよ」
考えろ。この女からどうやったら逃げられる。ここにいるのはリコと無数の生徒。生徒はリコの洗礼された動きに魅了されて動けていない。恐らくリコが逃げなくても守るって言われたことで安心感もあるのかもしれない。
「ララ。もう見苦しいわよ」
「黙れ!」
「あなたのやってるのは最初は復讐だったかもしれない。でも、今は子供の癇癪よ」
「うるさい!」
「ちょっとでも自分思い通りにならないとそうやって怒る。やりたいこともない。快楽だけを優先する……もう人とも呼べないわね。ただの獣よ」
「殺す……絶対に殺す」
「ララ。安い挑発に乗るな! 今のお前じゃ勝てない!」
シェヘラザード。私は至って冷静だ。リコには絶対に勝てない。そしてリコは完全に私を下に見ている。そこを突けば、私でもリコに痛い目を合わせることくらいいは簡単に出来る。
「死ねぇぇぇ!」
リコに剣を飛ばす。それからリコが初めて動揺する。私は間違いなくリコに剣を飛ばした。しかし、同時に生徒に向けても剣を飛ばした。飛ばす剣の数を二本にしたのだ。
「言ったでしょ! 私の前では誰も殺させないって!」
リコは私の剣を蹴り飛ばす。しかし持ち手じゃなくて剣先だ。いくらリコと言えど人間。刃物に触れれば怪我をする。事実としてリコは剣を蹴った影響で足から血がダラダラと流れる。初めて私はリコに怪我を負わせたのだ。
そしてリコに蹴り飛ばされた剣は生徒に飛んでいった剣にぶつかり、剣は勢いを無くして生徒に当たることなく落ちる。
その隙に私は教室から出て、走る。
「待ち……いっ!」
リコは追おうとするが足を抑えて、追ってこない。どうやらかなりの痛みがあるようだ。そういう意味ではゾンビのように襲ってくるロジャーの方が怖かったな。
「よし。逃げられたみたいだな。撤退するぞ」
「いいえ。シェヘラザード」
逃げる? それで態勢を整えるのか?
そんなの意味があるのか? リコは地獄の果てだろうが追ってくる。今ここでリリアンとエステルを始末しなければ、全てがチャラになる。
「私は逃げないわ」
そして階段を上り、三階のリリアン達のクラスに行く。
そこにはちゃんと生徒がいた。リリアンもエステルもいた。今日は運が良い。
「みーつけた」
私は最高の笑みで笑った。
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