プロローグ

 月明かりと部屋の中の仄かな光が、部屋の中央の白いテーブルクロスのかけられた長テーブルを照らす。


 そこには二人の人間がいた。


 向かい合わせに座り、テーブルの上にある皿に盛られた料理を頬張る。


「...ねぇ、兄様。美味しいですわね」


「うん、そうだね」


 二人の顔はよく似ていた。着ている恰好もまた、よく似ていた。


「ねぇ、兄様。明日の朝もまた、一緒にご飯を食べましょう?」


「...あぁ、そうだね。明日も一緒だ、一緒に食べよう」


 目の前の少年に顔のよく似た少女は、彼の言葉に満足そうに微笑んだ。

 その表情を見て、目の前の少女によく似た少年は、目の前の食事に口を付けた。


 静かな食事会は、淡々と進んで行った。


 月明かりの、下で。

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