何から手をつければいいのやら
爽やかとは言えない朝。
髪の毛とかあっちこっちに籾殻つけて僕は目覚めた。
今日は何をしよう?
「そう言えば、チュートリアルがいたよな」
「誰がチュートリアルよ! 自分でつけたんだから名前で呼びなさいよ」
あ、いた。
「じゃあ……チャムだっけリリスだっけ? いや、混ぜてリリムにしたんだったな」
「心の声がダダ漏れなんですけど」
「まず僕は、この世界で生き延びなきゃならない」
「そうよ」
「でも、村が壊滅していて天涯孤独状態なわけだ」
「難しい言葉を知っているのね、少年」
「前世は四十半ばまで生きてたからね。……ていうか、この世界十五歳で成人だよね?」
「成人の儀式を済ませるまでは大人じゃないわよ」
そうだ。十五歳の誕生日がくれば元服の儀ってのが行えるようになるんであって、十五で自動的に大人の仲間入りができるわけじゃないんだった。
まぁ、通常は誕生日がきたらとっとと元服させるわけだけど、大人の判断とか自然災害とかで延期することもあったりする。
そんでもって、元服を済ませた証を得るわけで、それをもっていないヤツは例え六十歳を過ぎても大人とは認めてくれないわけだが……。
ヤベェぞ。僕がそれになりそうだ。
…………。
と、とにかくその件は横に置いとこう。
「じゃ、じゃあ僕はこの先どうすればいい?」
「そんなことは自分で考えてよね。私はあくまでナビゲーター。あなたの生存戦略を決定するための知識や助言をするだけなんだから」
「まずはこんなことしてみたら的な助言もなしか」
「生きて」
…………。
「飯食って、寝て、そんで生きるの」
いや、そりゃそうですけど。
「じゃ、じゃあここに居るのと移動するのと取ってが生き残る確率高いかな?」
「旅の準備を整えるまでここに居るしかないんじゃない?」
「なるほど」
あれ?
かなり真っ当に答えたよ? こいつ。
なるほど、質問の仕方が具体的ならアドバイスがもらえるんだな。
人に必要なのは「衣・食・住」だと言われてる。
食べ物はとりあえず室をあされぱ冬を越せるくらいはなんとかなりそうだ。
服は今着てる服を何日も着たきりだって構わない(落ち着いてから作ればいいんだから)。
ということは、さしあたって必要なのは住む場所だ。
しばらくはこの水車小屋に寝泊まりするんでしのげるとしても、冬になったらここじゃあ凍えて死んでしまう。
よし、サバイバルミッション・ワン、家を作ろう。
こう見えて(現世年齢十五歳)前世ではDIYが得意だった。
まずは仕事前の腹ごなし。
……なんて火を熾して煮炊きしてなんてやってたら一時間以上使った気がする。
気がするのは正確な時間がわからないからなんだけど、これもやばいな。
飯の準備ってすげぇ時間かかる。
これから寒くなるし、朝一番にあったかいものがいいんだけど。
むむむむむ。
朝食を済ませた僕は、水車小屋にぶら下がっていた革袋に水を詰めて村跡に戻る。
村ではどの家でも室があって保存食なんかを置いていた。
家の焼け跡ひっくり返しながら、その室を確認して何があるかを確認する。
一部の家は、盗賊に荒らされていて、棚が壊れてたり、何も残っていなかったりす。
「あれ?」
「何?」
「漬物のうまいばあさん
そのほかに村一番と言われた村はずれのじいさん家の保存用に干して吊るしたピサーメもない。
そんでもって村で唯一栽培に成功したとかで独占販売してたおっさん家の干しキノコもない。
なんか、すげぇピンポイントでいいものがなくなってるな……。
まぁいい、気を取り直して確認だ。
食べ物に関していえば、僕一人がひと冬過ごすには十分だ。
おつりがくる。
けど、保存食だけじゃあ食事が偏るな。
あぁ、用水路には魚もいるし、雑木林にはまだピサーメなってるし、お酒を作る用にダリプも植えてる。
ダリプはそのまま食べても甘酸っぱくてうまいんだ。
マルルンにはまだ早いかな? マルルンは主食になるからしっかり集めとかなきゃ。
おっとっと、家を作るんだった。
村の家は全部焼かれて使い物にならないけど、室の中には棚があってわりかしちゃんと残ってる。
それらをバラせば掘っ建て小屋くらい作れるんじゃないかな?
道具は鎌とか
ほとんどは柄の部分が燃え尽きちゃってて使い物にならない。
仮に新しいつかを用意しても金属が焼きなましになってるから使えないんだけどね。
でもいくつかは使えそうなものが残ってる。
でも、釘がないなぁ……。
ええい、前世はDIY好きの日本男児だ。
なんちゃって組み木とかお手製木釘でなんとかするさ。
でもトンカチがないぞ。
どうする!?
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