都市伝説は真実だった
「じゃあ次は概要ね」
と、リリムは言う。
「世界の概要は現世の知識があるから割愛ね」
あらま。
「あなたは転生の際にDNAってやつが細工されていてね、神様曰く人よりちょっと優秀になってるそうよ」
え? ちょっと?
「そこはとても優秀になってんじゃないの? テンプレ的に」
「いくら世界に干渉できる環境にある神様だってそんなことホイホイしたら世の中のバランスが狂っちゃうでしょう?」
「異世界転生は世界のバランスを崩さないのか?」
「崩すわよ。それなりに。そもそも異世界人を招き入れるのは世界のバランスが神様の思惑からずれかけているからなんだし」
「それは……いわゆるテンプレ的な魔王軍の侵略とか?」
「主に人間の政治関係よ」
「なんとまぁ」
「そもそもこの世界は多神世界であなたを呼び込んだ神様は人間担当なの。魔族がやらかしたら魔族の神が責任取るのが普通でしょ?」
「あー、そんなもんですか」
「もちろん人間側でも手助けするわよ。たまに勇者召喚とかしてね」
「そっちがよかったな」
「スーパーハードモードよ?」
「今より?」
そんな質問をしたらすげぇ冷たい視線を投げてよこしてきた。
「これ、この世界じゃノーマルモードなんですけど……」
マジですか。
「話を戻すわね。あなたがこの世界で生き抜いてくれればそれでかなりの干渉になってある程度神様の考えた世界になるの。一緒に頑張りましょうね」
生きてるだけでいいってのは確かにノーマルモードだな。
特に何かをなさなきゃいけないわけじゃないんだから。
「判った。とりあえずサバイバルゲームか何かだと思えばいいわけね」
「ま、そう言うこと」
「よくあるゲーム的な職業的な……」
「テキテキうるさいけど、今のあなたは孤児Aだから」
あ、あぁ……そうだね、確かにそうよね。
「……まずはこの冬を生き延びねば……」
突然現実が目の前に広がった結果、ノーマルモードがハードモードに見えてきた。
「ここは魔法が使える世界だったよね」
「そうよ」
「僕もその……使えるようになる?」
「残念だけどそれは無理ね」
マジか。
チートどころか魔法も使えないだとぅ!?
「な、なぜでしょうか?」
「神様が言うには転生者で魔法が使えるようになるには、前世で三十歳までDTとか言う状態でいなきゃいけないんだって」
なんですとぅ!?
前世の都市伝説は真実だった。
僕は、前世で曲がりなりにも結婚してたし、高校生の息子もいた。
…………。
うん、仕方ない。
諦めよう。
「で、僕のステータスはどうやったら確認できるの?」
「なにそれ、美味しいの?」
え?
「うそうそ、そんな便利機能現実世界にあるわけないじゃない」
だよねー。
「数値が知りたいなら体力測定とかIQ検査でもしてみる?」
「それって実際あてになるの?」
「参考程度には」
だめじゃん、そんなの。
「まぁまぁ。ホラ、そろそろ準備始めなきゃまた木の上で寝ることになるよ」
リリムに言われて気がついた。
お日様がだいぶ西に傾いているらしく、僕の影が僕の二倍以上に伸びていた。
秋の日は釣瓶落としと言いまして、確かにここでただ喋っているのは時間の無駄だ。
僕は村に戻って今日の寝床の準備をすることにした。
焼け跡の村でまずは
今日の晩飯と、麻袋をゲットするためだ。
それらを探していたら運よく火打石を見つけた。
これで頑張れば火を熾せるはずだ。
用水路に水を汲みに行くのに台所があったあたりを物色して鍋をゲット。
流石に鉄製で煮炊きをするのに使うものだ、火事の中でもそれなりに原型をとどめている。
とりあえず今はこれだけあればいい。
鍋は担いて、他のものはお手製の袋に突っ込んで用水路へ。
用水路に着くと、無事な建物発見。
水車小屋だ。
中を覗くと籾殻がいっぱい。
こりゃラッキーだ。
鍋で水をすくって地面に穴を掘って籾殻を入れた上に置く。
火打石を取り出すと盗賊襲撃の際、唯一持ち出せた便利道具のナイフで火打石を叩く。
そこはそれ、十五歳。
悪戦苦闘しながらもなんとか籾殻に火をつけたんだけど、これがまたもくもくと煙がひどい。
やばい、野党が近くにいたらどうしよう。
とか思ったけどありがたいことに襲われることはなく、念の為現場から避難するにあたって「焚き木を集める」と言う大義名分を編み出してひと抱え持って戻ってくると、いい感じにお湯が沸いている。
そこに持ち出した保存食をホイポイと放り込み、煮えるまでの間を使ってナイフで木のスプーン作り。
五日ぶりの暖かいメシはそれだけで贅沢ってもんだ。
塩味も保存食から適度に出ていてお子様クッキング(十五歳になってるからこの世界では一応大人なわけだけど)としてはまずまずだ。
腹がいっぱいになった後は水車小屋に入って籾殻の中に潜り込んで、こちらも五日ぶりの屋根の下でお休み。
…………。
あれ?
何か忘れているような?
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