卒業おめでとう諸君。

のーはうず

諸君

諸君。

卒業おめでとう!


諸君らはこれから、豚が糞で身を清めるような世界でしのぎを削ることになる。



先へ続く道はまるで見えない! 見えるわけがない!!!

いったいどこへ向かおうというのか?


何を書けばいいのか!? 何を読めばいいのか!!?

そこに答えなどはない。

あろうはずもない!



方針を示してくれるものなどはない!

百の方位磁石が千の方角を指し示す世界だ。

その全てが幻覚である!

親身を装った提言などすべては甘言である!!


あるものにとってよいことは、あるものにとっては害なるものであることもあるし、我にとっての善は、彼にとっての悪かもしれず、昨日感じた美は明後日には醜なるものに変わっているかもしれないのだ。吾も変われば誰も変わる。遷ろわぬものなど幽暗なものでしかない。



唯一確かだった自分が歩んできた道でさえ、やがてその眩しさに目が眩み、振り返りたくもなくなるだろう。もし、過去に縋る時、その歩みはそこで止まってしまう。



思い出の中で美しくなった過去はとてもやさしく諸君を迎え入れ慰めてくれるだろう。だが、その優しさの薄衣を剥げば、それは腐ちた骸の上でみる泡沫の夢でしかない。それがわかるから進めば進むほど過去を振り返れなくなるのだ。



請い願う夢を見るために寝てはならぬ。


どこに進むかも、どこへゆくのかも、なにが正しいのかもわからないまま諸君らは泥浴びする豚のように藻掻かなくてはならないのだ。自らの良しとするものだけを頼りに、夢ではなく世代を超えてでも叶えたい志を抱かねばただ道に迷うばかりである。



諸君は失敗を恐るるか?


間違いの前に恐れずに立つことはできるか!



間違うとわかっていてもやらねばならぬのが心意気である。志は心意気と伴にのみありうるのだ。失敗の積み重ねのみが失敗でないものを形作るのだ。幾千幾億の施行の繰り返しの先にしかそれはないのである!!



人の失敗を笑うな! 人の積んだ失敗を横取りするな!!

自らの芯なるところを探るに戸惑い人の失敗を笑いそうになったならば、先人の志しを継げ。



道なくば読め!

道あれば書け!!!



人生とはそのようなものであるとの諦観は些細な心持ちで打ち晴れる。

ささやかな心境の変化は、まるで一滴の水滴が乾ききりひび割れた砂糖の塊をしなりと溶かすように、劇的にひろがるだろう。水を一滴垂らすだけだできぬこともないだろう。



砂糖に水を垂らしたところで、本質は何も変わらない。だが、その確かな変化の予兆は、一滴でこれならもっと水を注いだらどうなるのだろうという希望に変わるに違いない。心に届く水は先人偉人の言葉であり、その失敗を書き残した微かな手がかりだ。本から絞りだした微かに滴る水は、それまで何をしても変化がなかった諸君にとっての一滴の水となるに違いない。



書けば読む力もつく。自らが書いたものを読む。それは、諸君らを助ける唯一にして最強の味方だ。


どこの誰が書いたともわからない物を読み、もうここに来ることも無いやもしれん。

だが、いつか新しい人生を歩くと決めた日、誰に伝えるためでもなく出てきた独り言は「おめでとう。」となるに違いない。

いつかおめでとうと言える諸君らに伝えたい。



おめでとう!

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卒業おめでとう諸君。 のーはうず @kuippa

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