いいんだよ。
豊羽縁
頼っても
「頼ったって、いいんだよ」
この言葉は人を甘やかす、そう思う人もいると思う。いても変じゃない。でも私は悪いとは思わない。つらい時に頼る相手がいないのは辛いと思うか、きついと思うか、寂しいと思うかどう思うかは人によって違ってくる。でも一人で頼れずにいたら、自分を自分の中で毒と毒の再生産という悪循環を進めていくだけだと思う。少なくとも私はそうだった。
自分の中に言葉や感情を押し込める。その選択をする、してしまった人は悪くない。選択をしたことも間違いではないかもしれない。でも様々な要因でその前の選択肢を狭めてしまったとしたなら、悪循環に陥る可能性も高くなると思う。その時は悪循環を止める逃げ道や抜け穴が必要になると思う。自分で自分を責める、そんな時は恥ずかしさや怒り、劣等感といったものが自分を包んでいて自ら相談や悩みを打ち明けるというのは簡単にはできない。だからそういった時にはすぐでなくてもいいから打ち明けられるタイミングで受け止められる人が大切になってくる。
私にもそんな人がいる。普段は私に興味がなく、人の話を聞こうともしないように感じたことも多々あった。でも私が何かを抱えているときは「ゆっくりでもいいから、少しずつ呼吸を整えて」とか「今すぐじゃなくてもいいから話したいと思ったときにでも話して」や「今、コーヒーのむかい。目の覚める濃いめのヤツ」のようにとても気を遣ってくれる。最初は気を遣われ過ぎて申し訳ないと思ったりもしたけど、聞いてほしい時に聞くように意識している姿を見て、少しずつ話してもいいかな、話したい、聞いてほしいそうなっていった。そんなもんだから、私は頼ってもいいというのは決して悪いことでも甘えたことでもないと思う。
そういうあの人の姿を見て、私もなりたい。そう思うようになった。今日は帰りが遅い。少し経ってドアが開く、結構疲れているようだ。げっそりしている、単に疲れただけじゃないのかな……。心配だけど私も――
「おかえりなさい。いつもありがとう」
「ご飯は直ぐに食べれるようになっているからね」
「食べた後でもいいし、横になったあとでもいいわ。話せるタイミングで愚痴でも何でも話して大丈夫だよ」
玄関で靴を脱ぐのに付き合いながらそう言う。私はそこまで上手じゃないけど……
「頼っていいんだからね」
ゆっくり話に付き合うくらいはできる。
いいんだよ。 豊羽縁 @toyoha_yukari
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