19-3

~19-3~


 「…幾つか文句を申し述べたいんだが」

 「何だ、さっきの仕返しか」

 耳許で爆ぜるコンクリートに顔を顰めつつ店主を睨み付ける。


 「市街戦にソードオフ持ってくるなら前衛に立てよ」

 視線の先に映る店主の得物は奴が古くから愛用するベネリのソードオフ。取り回しを重視した其れが作る弾幕は見た目には派手だが、四方に散る其れ等が路地の入り口に陣取る奴原に届いているかは甚だ疑問だった。


 「此れは護身用だ、荒事専門のお前より前に立つ気は無い」

 堂々と情けない台詞を宣う肝の太さは寧ろ荒事向きにも思えたが、それよりももう一つの文句を叩き付けずには居られない。


 「其れ以上後ろにも下がりようが無いだろうが」

 「あぁ、まさか袋小路だったとはな」

 渇いた笑いを浮かべる店主に銃口を向けたくなる衝動を抑え暗闇の先に向けて引き金を引く。音を頼りに標的を狙う事に関しては其れなりに自負が有ったのだが銃声が止む気配は無い。余程上手くカバーリングをしているらしい。其れだけで相手の身元は想像がついた。


 「急進派の連中じゃねぇな」

 店主も同様の結論に達したらしい。だからと言って事態が好転する訳でもなく、寧ろ立たされた窮地に嫌な汗が流れる自覚を促す結果にしか成っていない。


 最後の弾倉を装填した所で車の駆動音が近付いて来るのに気付いた。


 「あんまり期待すんなよ、アイツには銃声の只中に突っ込む度胸は仕込んでない」

 店主の声色は一層の険しさを増している。対する私はと言えば、構えかけたルガーを下げて物陰に身体を隠した。


 「そう悲観した物でも無さそうだ」

 先程よりも鮮明に耳に届き始めたその音には聞き覚えが有る、英国被れも今後はそうそう馬鹿に出来なくなりそうだ。

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