季節限定 苺のスイーツ
ユラカモマ
季節限定 苺のスイーツ
苺のスイーツがコンビニやケーキ屋にいやというほど並ぶ春、付き合って三年になる彼氏と毎年苺のスイーツ食べ比べをすることにしている。彼はサングラスが似合う強面だが苺が好きというかわいいところがある。そして私もスイーツが大好きだ。だから苺のスイーツ食べ比べというのは至って普通の流れであった。
今日は緑のコンビニのパフェとクレープとアイスを買い込んで彼の家に行った。彼の雑然とした部屋の中で唯一物がないマットの上に腰かけて袋を開ける。ピンク色の様々なパッケージが二人の前に並んだ。初めは私がクレープ、彼がアイスを取った。
「買っといてなんだけどアイスってまだ寒くない?」
「まあね。でも俺あっさりしたやつの方が好きだし。」
私が手に取ったクレープはクリームと半切りの苺が入っていた。もちもちの生地にくるまれたそれらは言うまでもなくおいしい。
「はい、一口。」
「ん。」
彼のアイスはさっぱりとした氷の部分と濃厚なミルクの部分が合わさってちょっとリッチな感じがしておいしい。でもやっぱり少し寒いのが気になる。
ぱくりぱくりと味わっていくとクレープは生地の部分だけが残ってしまった。ちょっと寂しい感じがする。でもまだパフェも残っているので甘さ控えめの生地は小休止にちょうどよい。ぺろりと最後の一口まで食べきって私はパフェに手を伸ばした。こちらは苺味のピンクのクリームがしっとりめのスポンジに乗っていて見た目もかわいくおいしい。さらにスポンジの間には甘酸っぱいジャムも入っていて苺感をすごく感じられる。
「おいしい?」
「うん。はい、一口。」
「ん。」
彼にスポンジとクリームの部分をあげると彼は少しだけその顔をほころばせた。かわいいなあ。そう思わずにはいられない。
「そういや、就職地元に帰るんだったよな?」
しっかり咀嚼した彼はテレビをつけながら切り出した。私はそれにうなずく。
「そう。やっぱり地元が暮らしやすいからねぇ。」
「俺はここに残るかいっそ上京するかだなあ。」
「帰らないんだね。」
「地元はちょっとなあ。就職先あんまないし。」
「...あと、ちょっとだねぇ。」
私たちは付き合い始めるとき大学卒業したら別れようという話をしていた。だから互いにどこに就職しても問題にはならない。ただ少し寂しいとテレビに映る咲き始めの梅を見ながらそう思った。
「私たぶん別れてもこの季節になるときっと今のことを思い出すよ。」
彼はちょっと私の方を見たけれど何も言わなかったのでそれは一人言になった。来年は引っ越しとかで忙しいだろうから食べ比べができるかは怪しい。でもだからこそ今年は精一杯楽しもう。
「今度はさあ、梅見に行ってそこで食べない?」
残された時間はあと一年。
季節限定 苺のスイーツ ユラカモマ @yura8812
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