第11話 憎悪と静寂
「この留守電、まさか全部見る気?」と俺に尋ね、さらに提案した。
「こんな調子で間違い電話のクレームが何件も入ってたら萎えるでしょ。聞くなら1番新しいのにしてみない?」
「新しいの?」
「持ち主からのメッセージを探すなら、携帯を落とした昨夜以降の留守電を辿ってった方が効率いいって!」
「ああ、なるほど」
名案だ。
この男は見た目こそ冴えないが、中々どうして頭がキレる。
彼に言われた通り、俺は最新の留守電を再生させる。
結果、俺はとんでもないメッセージを部屋に響かせてしまったのである。
6月21日 06時03分。
『おい、部屋にいねぇじゃねぇかよ!』
荒々しい言葉遣いだ。
問題は次だった。
『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……』
「うっ」と俺は言葉に詰まった。
腕には鳥肌も立っていた。
カンタも驚き、のけぞるあまりソファーからずり落ちていた。
留守番電話に保存された肉声に、男の怨念みたいなものが込められていて、正面から悪意をぶつけられた気分だった。
うわ言のように繰り返される言葉は、さっきとは打って変わり俺達へ寒気を覚えさせる。
シンと部屋が静かになる。外を走るパトカーのサイレンが、やけにうるさかった。
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