赤紙~僕への「おめでとうございます」~

水谷一志

第1話 赤紙~僕への「おめでとうございます」~

 僕の住んでいる「国」には、あるルールが存在している。

 それは大人、18歳になったら「赤紙」が配られてくるということだ。

 …この「赤紙」に関してだが、そういえばかの大日本帝国でも戦時中に配られていたというのを聞いたことがあるが、歴史が苦手な僕はその詳細を知らない。

 …ともかく僕の住んでいる国にはそんな慣習がある。そして赤紙を受け取った人は「闇の国」へと連れていかれるのだ。

 「○○さん、おめでとうございます。」

僕がまだ幼かった頃、18歳になった人がそう言われて闇の国に言ったのを、僕は覚えている。…しかし、幼い僕の記憶はそこまでで、それ以降その人がどうなったのか、僕は知らない。

 また僕はその辺の事情に疎い方なのか、17歳になった今でも、赤紙をもらい闇の国へと行った人がその後どうなっているのかを知らないのだ。

 『その人たちは戦士としてうまく戦っているのだろうか?それとも…。』

僕はそんな考えを自分1人で巡らせている。


 二

 そんな僕であるが、あと1週間で誕生日を迎え、18歳になる。

 …正直僕は不安だ。

 『これから先、どうなるのだろう?』

『闇の国へ行った後、ちゃんと生きていけるのかな?』

 最近の僕は、そんなネガティブなことばかり考えている。

 

 三

 また僕は生まれてこの方、この国で17年間を過ごしてきた。

 その日々はとても楽しくて…、もちろん嫌なこともいっぱいあったが、それでもその日々は充実したものであった。

 でも、僕は知っている。この国は、この国の外の人間たちから差別されていることを。

 僕は外の人間たちと交流することもあったが、その度に心ない言葉も浴びせられた。

 …もちろん全ての人間がそうであるとは言わない。ただ、僕たちの国をバカにする人間がいることは、まぎれもない事実だ。

 そんな中、僕は闇の国への招待を受けようとしている。…そう、一人前の戦士として。


 四

 そして僕は18歳の誕生日を迎える。

まず、「赤紙」が配られてきた。

 「ユージ君、おめでとうございます。」

赤紙担当であろう僕の国の人間がそう言い、僕に紙を手渡す。

 「早速ですがユージ君には『闇の国』に言ってもらいます。」

 その人は僕にそう告げる。

 そして…、

 僕の目の前は真っ暗になった。


 五

 ※ ※ ※ ※

 とある児童養護施設『こどもの国』では、あるイベントが開かれていた。

 それは今日で18歳の誕生日を迎える『田中雄二』君の誕生日パーティーだ。

 また、このパーティーをもって雄二君はこの施設を出ないといけない。なぜなら、一部の例外を除き児童養護施設にいられるのは、18歳までだからだ。

 『この施設、この『国』を出たら、僕は社会人として立派に働くんだ。

 そう、立派な『企業戦士』として。』

 そう思う雄二君であったが、やはり不安は拭えなかった。

 そして雄二君に恒例の『赤い紙』が渡される。これは赤い画用紙に、施設職員や施設の児童からの寄せ書きが書かれているものだ。

ちなみに「赤い色には温かみが込められている」とのことで、いつもその施設では赤い紙が使われている。

 『僕、頑張らないとな…。』

それを見て胸を熱くする、雄二君なのであった。

 「早速ですが雄二君には『闇の国』に言ってもらいます。」

 そう言われて雄二君は、『アイマスク』をつけられる。

 そう、それは恒例の儀式。18歳の誕生日を迎えた人は、アイマスクをつけられて誕生会会場へと連れていかれる。

 …それは、サプライズパーティーのため。会場の飾りなどを、事前に見せないためだ。

 

 そして雄二君は会場に連れられ…、

「アイマスクをとってください。」

そう言われる。

 そして、雄二君がアイマスクをとると…、

そこには職員や児童のみんながいた。

 「田中雄二君!お誕生日、おめでとうございます!」 (終)

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赤紙~僕への「おめでとうございます」~ 水谷一志 @baker_km

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