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「馬鹿野郎!!」
そう言って真琴くんのお父さんは真琴くんのことを本気でひっぱたいた。
ぱん!!
と言う大きな音がして、真琴くんがよろけて、部屋の中に倒れこんだ。美月は子供が大人に本気で殴られる(ひっぱたかれる)ところを初めて見て、目を大きくしてすごくびっくりしてしまった。
「お父さん。暴力は」
「真琴くんも反省していますし」
梅子先生と美月のお父さんがそう言って、真琴くんと真琴くんのお父さんの間に入った。
「みなさん。本当にすみませんでした。うちのバカ息子が、本当にすみません!」
真琴くんのお父さんはこの部屋の中にいる(事務員さんの部屋だ)みんなにそう言って、土下座をして、深々と頭を下げた。
みんなはそんな真琴くんのお父さんに「いえ、無事だったんですから、もういいじゃないですか」とか「お父さん。顔をあげてください」とか言って、真琴くんのお父さんの土下座をやめさせようとした。
「いえ、そんなことはありません。ほら、真琴! お前もちゃんとみんなに謝りなさい!!」と真琴くんのお父さんは言った。
真琴くんは床の上に正座をして「……本当にすみませんでした」とみんなに頭を下げて謝った。
真琴くんの左のほっぺたは、すっごく痛々しい真っ赤な色に染まっていた。
美月は遠くから、そんなみんなの行動をただ見ていることしかできなかった。事務員さんの部屋の外では、今も巨大な雷が鳴りながら、強い雨と風がごーごーと吹き続けていた。
やがて、大人の人たちは今日の出来事について、いろんな話をするために(その話がどんな話なのかは子供の美月には全然わからなかった)部屋を一つ移動して、事務員さんの部屋の中には真琴くんと美月の子供たちだけが残された。
「……西谷ごめん」
二人だけになると、スチールの椅子に座って、(みんなに謝ったあとで)ずっと黙り込んでいた真琴くんが、小さな声で美月に言った。
「ううん。大丈夫」
美月は言う。
「それよりも、真琴くんは、大丈夫? 叩かれたところ、すごくいたそうだけど」と美月は言った。
すると真琴くんは「ああ。すっげー痛い」とにっこりと笑って美月に言った。
そんな笑顔の真琴くんの顔は、美月のよく知っているいつもの真琴くんの顔だった。
その顔を見て、美月はすごく安心した。
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