第147話:姉弟デート

GW二日目は朝から普通に仕事をさせられたものの午後は休んでいいと有能秘書マイカ様に言ってもらえたので、ミナとリアの二人を誘ってお家(日本の)デートを楽しんだ私ことソウジ・ヴァイスシュタインのGW三日目をいかがお過ごしかと言いますと……


地元では結構有名な場所でありながら人生でまだ一回しか来たことがないアウトレットへときております。エメさんと二人っきりで。


ちなみに人生で一回しかきたことがない理由は単純に家から遠かったのと、アウトレットとか言っておきながらその言葉の前に『プレミアム』と付いていたり、高級ホテルが隣接しているというちょっとお金持ちの人達が背伸びして行くような場所だからである。


もっと分かりやすく言うと庶民がたまに百貨店に行くのと同じやつだ。……多分な。


「車の中から見た時も思いましたが私達の世界にこのような場所があったら普通にお城と勘違いしてしまいそうですね。他のところもこもようなものばかりなのですか?」


「そもそもアウトレット自体そんなに数があるわけじゃありませんけど、普通に子連れでも入りやすいようなデザインの場所もありますよ。……来店する客層に合わせて入ってるテナントとか値段は変わるんでしょうけど」


「ふふっ、ちゃんと旦那様もこの場に馴染めていますから大丈夫ですよ。もっと自信をお持ちください」


そう言う貴方はどこぞの令嬢か何かですか? と聞きたくなるほどまでに馴染めてますけどね。


なんてことを思いながら旦那様以外で呼んでもらうよう頼んだついでにどこに行きたいのか聞いたところ、新しい春物の服が欲しいというので前日に瞬間記憶で覚えたマップや店舗情報を元に寄り道すること前提のルートを平行思考まで使って導き出した。


なんで目的地への最短ルートではなく、エメさんが興味ありそうな店込みの寄り道ルートを導き出したかって? そんなの初買い物デート×3で前者をやってみせたら大不評だったからに決まってんだろ。


彼女達が言うには見て回るだけでも普通に楽しいというのもあるが、色んなお店を一緒に回って自分の好みを少しでも多く知ってもらいたかったり、ウィンドウショッピングをしているからこそできる会話をしたい…んだそうです。


これについて『面倒くさ』とか『最初から目的地に直行した方が余った時間を使ってもっと有意義なデートができるじゃん』と思った人も多くいるだろうし、つい最近まで俺もその一人だったんだけど……これが案外やってみると結構楽しかったりするんですよ。


あと女性向けのお店に入るのはちょっと……と思ってる人もいるといるだろうが、ああいう所に行く時は基本慣れているであろう彼女側に任せとけば自然と周りから変に見られないで済むし、最初は緊張していてもいつの間にかそんなことは忘れているから大丈夫である。


まあそれでも俺は店舗の広さに対しての人口密度(Theお洒落人間)がウィンドウショッピングで入るような所とは比べ物にならないだけでなく、そのせいで四方八方にそいつ等の目があるス○バには絶対に行きませんけど。


……はいここで『お前のことなんて誰も気にしてねえよ』とか思った奴。んなことこっちだって分かってるっつうの。それでも気になるもん気になるんだよ、し(以下略)。






などと散々偉そうなことを語っておいてなんだがよくよく考えたらエメさんとは母親に近い姉と子供みたいな関係なので『もしかしてこの選択は間違いだったか?』とか思ったのだが…お互い共通の話題が結構あることも影響してか結構楽しんでくれていたと思うし、少なくとも俺は普通に楽しかった。


なんて如何にも『今日一日楽しかったわ~』みたいな雰囲気を出しているが残念ながらこれからが本番です。はい。


ということでやって参りました本日の本命一件目。どうやらこのお店は普段ミナ達が来るような所よりも少し大人向けのお洋服が売られておりますが、どこの店でも店員という生き物は皆似たようなことを言ってくるようでして


「何かお探しでしょうか?」


「ちょっと春物のお洋服を何着か欲しいなと思っていたんですけど、沢山あるのでどれにしようか迷ってしまいまして」


「なるほど~。ちなみに何かご希望のコーデとか、これだけは…みたいな物はあります?」


「うーん、あんまり派手なのは苦手なので大人し目だけど可愛いみたいなのがあると嬉しいいんですけど」


最近こういう高めの店にくるようになって一つ疑問が生まれたんだけどさ、その店の店員って売り上げを重視してワザと高いものを客に勧めてるのか、本当にその人に似あう服を勧めてるのか…どっちなの?


「となると…こちらの紺のスカートと白のニットとかどうですか? こうやって見るとなんか地味というかシンプル過ぎるように感じるかもしれませんけど、実際に着てみると結構印象が変わりますよ」


ああ、最近流行ってるのかなんか知らないけどよく街中で見掛ける量産型コーデね…と馬鹿にしたいところだけど、エメさんが初めに何着か欲しいと言っていたことを考えると別に悪い提案ではないな。


「じゃあこれともう二つくらい選んでから試着させてもらってもいいですか?」


「はい、全然大丈夫ですよ♪ ……あ、何か彼氏さんのご希望とかありますか?」


「いや、この人は私の彼女じゃなくて母―――ははは、よくカップルと勘違いされるんですけど実は姉弟なんですよ。って言っても顔が似てなかったり、姉弟にしては仲が良すぎるからって未だに信じてくれない友達も何人かいるんですよね……」


おっかねー。あの人顔はニコニコしてたくせに俺が母親って言おうとした瞬間物凄い殺気を向けてきたんですけど。


(確かに私は旦那様のことを一人の男性というよりも男の子という風な目で見ている節がありますし、母親のような態度で接することもたまにありますが…それでも私の中で旦那様とお嬢様は大切な主であり、可愛い弟と妹でもあると思っておりますので今後はお気を付けください)


あれれー、おっかしいぞぉ。なんでこの人地球でも普通に念話を使えてるのかな?


現段階でそれができるのはルナによって不老になった子達(あっちで何かあったら困るからと小学生にスマホを持たせる感覚でくれたらしい)と俺を通して魔法を使えるティアだけのはずなんだけど。


(私が魔法を使えている理由でしたらこの間ルナ様が旦那様に頼まれたという荷物を持って宮殿の方へこられた際に『これを人数分+αを用意させたってことは貴方達のことも日本に連れて行くってことだろうから、地球でも魔法を使えるようにしといてあげるわね』というようなことがあったからです。……それよりもお返事はまだでしょうか?)


俺が頼んだ、人数分ってことは家族カードの時だな。


ちなみに家族カードとはクレジットカード契約者である本人の家族に対して発行できる物のことを言うのだが、これを発行するには契約者の信用度が重要になってくるため学生の俺がそれを発行しようとすると結構面倒くさいことになるのはやる前から明白。


しかもそれが合計で14枚+全部ブラックカードともなると面倒くさいとか以前に偽装が必要になってくるレベルなので駄女神に頼んだところ、普通に用意してくれた。


その日を境に俺が五千万で無理やり作ったカードがアメ○クスの物に代わってたり、口座のお金がちょ~っとだけ増えてたりしてたけど………信じるか信じないかはあなた次第‼






念話を通して元気よくお返事をしたり、お昼前最後に入った店で日頃の感謝をということで今日買った服に合う靴を一足だけだが弟して一緒に選びプレゼントさせてもらったりした後…隣接している例の高級ホテル、しかも最上階にあるレストランで食事をしながら何気ない会話をしていた。


「旦那様はこういったお店があまり好きではないせいでお嬢様達とですらあまり行きたがらないというのに、こんな素敵な場所を予約してくださっていただけでなくご馳走までしてくださるなんて…相変わらず背伸びしてる感が可愛いですね」


「初めて三人とこっちでデートした時もお昼ご飯にそこそこ高いところへ連れて行ったんですけど、三日連続でちょっと背伸びした人達がチラホラといまして……。不快な思いをさせてしまったという反省を活かして今回はお店を変えてみたんですが、気に入ってくださったならよかったです」


「私はお嬢様達からそのお話と一緒に『全然そんなことないというのに、どこかご自分のことも場違いだと思い込んでいる節があった』とお聞きしていましたが…相変わらずの成長速度ですね」


またその顔か。


「………嫌じゃなかったらこの後一緒に服を選んでくれませんか?」


普通の人からすればこれは何気ない一言なのだろうが自分の婚約者達にすらこんなことを頼んだことがない俺がそれを言ったことに驚いたらしいエメさんは一瞬固まったもののスグに復活し…どこか嬉しそうな、そしていつも通りの優しい顔でOKしてくれた。

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