第136話:殲滅戦
どうせ大昔にこの世界ではお母さん・母さんの最強タッグとブノワの親父・レオンの親父の最強タッグが存在していて、その四人が出会ってしまったことによって伝説の四人が爆誕。何かの縁で親父さんは自称常識人枠として一緒に行動を共にしていた。
そして娘であるミナとリアが両親の才能を見事に受け継ぎ&努力の結果、最強タッグが再爆誕。しかも自称常識人枠はちゃんと親父さんの息子がいる…というか既に行動を共にしている。
んで今から俺とティアという伝説の四人を超えるかもしれない可能性を秘めた最強タッグが超爆誕しようとしているのに加え将来有望なセリアが後ろには控えていると。
……その伝説の四人ってのがどんなものかは知らねえけど、どんな化け物だろうと何時かはそれを超える化け物が現れるもんなんだぜ。
「おいティア。お前はもう気付いてるかもしんねえけど俺は今まで皆殺し以外のことはしたことがねえのと耳が聞こえないせいで多分この殲滅戦が始まったら止まらねえと思うから…そん時はちゃんと止めろよ?」
『薄々感じてはおったがこの戦争を足掛けにやろうとしてることや、今のこやつの顔を見るに完全に魔王じゃな。……誰じゃわらわの無邪気で可愛らしかったソウジをこのような恐ろしい国王にしたのは? 今でもこういう場以外では一切変わらんが』
『誰がというよりも間違いなく私達の存在がご主人様に大きく影響を及ぼしたのでしょうね。いつからティア様だけのお人になったのかは知りませんが』
世界中から自分が何て呼ばれようが結局は俺がどこを目指し、そこまでの道のりが本当の魔王のように人の道を外れているのかどうなのかが重要なのであってそんなことはどうでもいい。
それに俺の周りには間違った道に進もうとすれば全力で止めてくれる、正しい道を教えてくれる人達がいるのはもちろん、普通の子供として育ててくれようとしてくれている母親が二人もいるからな。俺はなんの心配もせずにただ勝手に真っすぐ突き進むだけである。
そんな頭の中の整理を行ったことによってさっきまでのイライラや、敵を皆殺しにしてやろうという気持ちの高ぶりを会話の流れでとはいえ自力で落ち着けることができた。……そして、制限時間がきたと同時に今回は自動で敵の周りに張られていた結界が解除された。
ということで早速俺は見せしめとして爆発魔法を仕込んでおいた銃弾を適当に選んだ十人の鎧の隙間を狙って打ち込み、それが内側で爆発を起こしてバラバラになった鎧と人間の体が空中に飛び散った瞬間
「行くぞティア‼」
とは言ったものの返事が聞こえないのはもちろん口元を見る気なんてサラサラないので一人で勝手に突っ込み、左手に持った銃で敵の両アキレス腱を切りながら右手で持ったムラマサで両手首を切り落としてを繰り返しながら突き進んで行くと自分の後ろから殺気が感じられた。
その為いつも通りティアが貸してやった武器でそいつらに止めを刺しにきたのかと思ってチラッと後ろの方を見てみると、もう一人の専属メイドが例の刀を腰に構えている状態からそれを抜刀したと同時に凄いスピードでこちらに向かってくる姿だった。
………今リアがアキレス腱を切られてふらついてた奴らの首を一瞬で切った技って居合、だよな? しかも十人全員の首を一回の居合で吹っ飛ばすとか技術力どうこうより、まず貴方の跳躍力は一体どうなってるんですか?
『私に見惚れてくださるのは嬉しいのですが、そろそろ逆側にいるお嬢様の方も見て差し上げてください』
一応敵陣の中を突っ走りながら手を動かしているとはいえ、まずは自分の主がよそ見をしてることについて注意しろよ。なんで本当に嬉しそうな顔をしてる挙句次は逆側を見ろってお願いして―――
なんか走りながら凄いスピードでレイピアを敵の眉間に向かって突いては一撃で即死させてを繰り返してる子がいるんだけど。しかも全員俺が手首を切り落とした奴らだし。……笑顔で手まで振ってきたぞ。どんだけ余裕なんだよ。
……なんか気配的にティアはずっと俺の後ろをついてきてるっぽいけど、このままだとアイツの出番はないんじゃないか?
だって一応修行時とは違う、成長したソウジ・ヴァイスシュタインの戦闘技術と新最強タッグお披露目の意味も込めて俺が相手の機動力を削いで、ティアがそいつらに止めを刺すっていう戦闘スタイルを取ろうとしてたのにその役目を勝手にこの二人がやってるんだもん。
なんて考えながら戦っているうちに既に半分程殺してしまっており、これは本当にティアの出番はないんじゃないか?
と思ったのもつかの間、ティアの殺気が少し横にズレたのを感じたとほぼ同時に俺の足元を二本の剣を持ったまま忍者走りで通り過ぎていったかと思えばそのままそれを水泳のバタフライをするような感じで振り、一気に五人の胴体を真っ二つにしたかと思えば今度は後ろに戻すかのように振ったことによって恐らく隙ができると思って近づいてきていた五人が綺麗に真っ二つにされた。
「おいティア、その剣返せ! んでお前はこっちの銃を使って俺に合わせろ‼」
どうもティアちゃんは自分の役目がミナとリアの二人に取られたのが気に食わなかったようなのでまだまだ未熟な俺でも流石に全力を出せば所見でついてくるのは難しいだろうということでそう提案すると、どうやら納得してくれたらしいく敵陣のど真ん中だというのに自分が持っていた剣をなんの合図もなしに二本とも空中へと投げ飛ばした。
しかし俺からしてみればそれが合図みたいなものなので早速右手のムラマサを新しく呼び出した銃に入れ替え、それらをティアに向かって投げてやったと同時に上から降ってきた二本の剣を左右の手で握りしめた。
その後は予想通り所見ではついてくるのが難しかったのか、それともこちらの気持ちを察してくれたのかは知らないが残りの敵の殲滅は俺とティアの二人で行い…今はその死体をさっきと同じようにクロノチアの王城前へと送り付けてたところであり
「まだ本気を出し切っていないとはいえ俺とティアの強さをある程度みんなに見せることはできただろうし、サッサと最後の後片付けをしに行きますかね」
「途中からお世辞抜きでご主人様に合わせるのが難しくなったので後ろの方で見ていたのですが、あれでまだ手を抜いておられるとは…凄まじい成長速度ですね」
「それに戦いを始める前はちょっと不安なことを言っていましたが…いざ始まってみれば最初から最後まで冷静に立ち回られていましたし、何よりソウジ様が戦っている姿は初めて近くで見ましたがすっごくカッコよかったですよ」
後者はどうか知らねえけど前者に関してはあらかじめ頭の中で整理したのに加えて二人に驚かされたり、何よりティアのご機嫌取りをしなきゃいけなかったりと気を使いながら戦ってたからな。そのお陰でミナの言う通り結構冷静でいられたと自分でも思う。
「わらわが唯一認めた男なだけあってこやつは騎士団の者相手に毎日しておる訓練とは比べ物にならん程の、しかも模擬戦か実践のみを今日まで一言も弱音を吐かずに黙って続けてきたからのう。あれくらいでソウジの強さを知った気になってもらっては困るのじゃ♪」
「まあ正直今回の戦争に関しては冗談抜きで坊主一人でも30分あれば余裕で片付いただろうからな。その証拠にさっきの戦闘には10分も掛かってないし。……師匠もとんだ化け物を育て上げたもんだぜ (しかもまだまだ伸びしろがありそうだし)」
最初の戦闘では指揮やみんなの補助に回るために、そしてさっきの戦闘では主に俺とティアの強さを各国に見せつけるという理由があるにも関わらず二人がノリノリで参戦していったのを見てワザと見学することにしたみたいだけど…初めから持って生まれたものに加え今までの何百何千何万という経験の数、そして何よりも訓練環境がバージョンアップしたお陰で本来あり得たはず以上の可能性が目の前に広がり始めている奴に言われたくはないね。
少なくとも魔法を一切使用しないで純粋に己の力のみで戦えと言われれば軽く見積もっても数百年単位で俺がアベルに追いつくのは無理だろう。しかもこの計算は模擬戦を始めたばかりの頃に興味本位で聞いた時にティアが出した数字だ。
つまりあの時と今では返ってくる答えが違う可能性は大いにあり得る。だからなんだって話だけど、一つだけ言えるのはもしもの時に備えて準備しておくには越したことがないってことだ。
………俺みたいなイレギュラーは自分の身にいつ何が起こるか分からないからな。
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