世界最強の元一般人【クソゲー人生プレイヤー、神ゲーの皮を被った鬼畜世界に挑まんとす】
ITIRiN
第零章
第0話:過去と未来
「……ゲッホ、ゴッホゴッホ。なんだここ、煙たすぎだろ」
誰が何をしたのかは知らないが爆発による土煙などが凄く、視界や空気が悪い中あたりを見回すと高そうな服を着ている集団を見つけたのだが、それはあっちも同じらしく数人がこちらに向かってきた。
その為交渉等の可能性を考え魔法でポーカーフェイス状態になった直後、そいつらは俺の目の前で止まり
「やあ、君の顔を直接見るのは初めてだね。私はこの国の国王だった者…で通じるかな?」
「ってことはあんたが前国王か。俺の中でのイメージは下品な笑みを浮かべているデブだったんだけどな。意外とイケメンじゃねえかよ」
「まさか君に褒められるとは思わなかったよ。ここはありがとうと言うべきかな?」
「お礼はいらないから早くお家に帰ってくんね。そこにある牢獄っていうお前達にピッタリのお家にさ」
「ああ、もしかしてあの牢獄は君が用意してくれたのかな? 意外と住み心地が良いから少し気になってたんだよね。どういう仕組みか時間になれば勝手に御飯が現れたり、食べ終わったら自動で食器が消えたりするし……」
「そんなに気に入ってるなら早く帰れよ。もしかしたら今日の夜ご飯はステーキかもしれないぞ」
元国王は探りを、俺は話を逸らす為に相手の言葉を無視しての会話が続いてる中…俺は若干焦り始めていた。
ポーカーフェイス状態とはいえ下手なことを言わないようにするのは結構キツイ。マリノ王国での一件は圧倒的にこっちが有利だったし、ミナ達が近くにいたからそんなこと気にしていなかったが今は違う。
「そういえば私達の所にマリノ王国の王女様やそのメイド、騎士などはたまに来ていたのに君だけは一回も来なかったけれど…忙しかったのかい?」
「あんた等をここに送った日の夜に飲み過ぎて二日酔いになったり、ピクニック気分で行った先で殺されかけたりして忙しかったんだよ」
これは半分本当で半分嘘である。というのも俺にこいつらを合わせない方がいいだろうというミナ達の気遣いに甘える形を取っていたからだ。
「そうだったのか。てっきり私は王女様達が君を守るためにワザと遠ざけていたのかと思ったよ」
「……自分達の体で俺の凄さを味わっておきながらよくそんな考えに至ったな」
「ああ、確かに君の持っている力は凄いとも。だが……」
そこで一度言葉を切り、薄気味悪い笑みを浮かべたかと思った瞬間
「後ろがガラ空きだぜ坊や!」
―――ッ⁉
「戦闘技術がまだまだだったり人間を殺すのに抵抗があるようだったから……と言いたかったんだが、ギリギリで避けるぐらいは出来たのか。まあ左腕はなくなってしまったようだけれど」
………人間は自身の脳が処理出来ないほどの衝撃を受けると冷静になるって言うけれど、あれは本当らしいな。
だって今自分の左腕がないことを確認した後、地面にそれが落ちてるのを見ても何とも思わないし。……ってか逆に笑いそうだぜ。
「おい、なんで俺が人間を殺すのに抵抗感があるって分かった?」
「この状況でお喋りとは面白い。お前達、私がいいと言うまで何もするな」
そう言うと元国王の周りにいた奴らは構えていた武器を下した。
転移対象が持っていた武器は俺が全部売ったから持ってるはずがないし、見た目通り魔法で作った緊急用の武器ってとこか。それとこいつらは全員ガタイが良いから元騎士団の連中と考えてよさそうだな。
「それではさっそく君の質問に答えていこうかな……。まず一つ目の理由だが、これは君がこの国を乗っ取るという割に私達を即処刑しなかったからだ。そんなことがしたいなら国民へのパフォーマンスの意味も込めて公開処刑を行うのが得策。だがそれをしなかったし、する様子もない」
「なるほど。最初はミナもお前らを公開処刑にするとか言ってたし、この世界の王族としては当たり前の判断か……。一つ目ってことはもう一個くらいはあるんだろ? ついでに教えてくれよ」
「なんだ自分で気付いてなかったのかい? そんな立派な武器を持ってここに来たというのに使う素振りすら見せていないことに……。武器の方もまさか脅しにすら使われず左腕ごと地面に落とされるとは思っていなかっただろうね」
そんな挑発じみたことを言ってきたかと思えば元国王は再び薄気味悪い笑みを浮かべながら
「さあ、お喋りはこれくらいにしようじゃないか新国王様。これから君には死んでもらってこの邪魔な結界を消そうと思うのだが、いったい君はどうするのかな?」
殺さなければ殺される。殺される前に殺せるのは俺一人。
しかし殺す以外に生き残る選択肢がいくつか存在する。
一つはここから逃げてミナ達に対処をお願いすること。
そしてもう一つは………俺が日本に逃げて二度とこっちの世界には来ないこと。
ティアも言っていたが俺が日本での生活に戻れるかどうかの境界線はこいつらを自分の手で殺すかどうかだ。しかしそれはミナ達が殺したって同じこと。何故なら俺が命令してこいつらを殺させたことになるのだから。
つまり俺が日本に戻り、再び普通の生活を送りたいのなら宮殿にいるみんなは勿論この国の国民全員を見捨てる必要がある。
さて、どうするか……。
もちろん答えは一つである。
「来い、ムラマサ」
『次回の世界最強の元一般人は――――』
「えー、もう終わり? 私もっとパパの昔のこと知りたいのに」
「こんないいところで終わらせるなんて、相変わらず大人は上手いことを考えますわね」
「もう来週まで待つのも面倒だしパパが寝てる間に心を読んじゃおうかな」
「お父様のことですからそれでは簡単に誤魔化されてしまう可能性があります。なのでここは私の嘘を見抜く能力も使った作戦を考えた方がよくありませんか?」
「それよりも私達五人でお爺様達の所に行ってお父様のことを教えてほしいとお願いしたほうが早いのではないでしょうか?」
我が娘たちよ。別に作戦会議をするのはいいが普通に喋ってるせいで会話が丸聞こえだぞ。
「それにしても子供ってのは本当に親に似るんだな。今の会話なんて完全に各母親+坊主って感じだったし、今後この子達が成長したらどうなることやら」
「お前ら、そんなにソウジおじちゃんがこの後どうなるのか知りたいなら俺が教えて――――⁉」
「ちょっとこっちに来なさい、エル」
あーあ、今日も廊下まで引きずられて行ってやんの。流石は父親が父親なだけあるな。
「そういえばエル君は結構お父さん似だけど、こういうのってやっぱり性別によってお父さん似・お母さん似とかあるのかな?」
「たまたまとはいえ私達の場合一人目が全員女の子だったのと、男の子の子供はまだエルしかいないから何とも言えないけど…やっぱり考え方の違いとかはあるんじゃないかしら」
「さっきから黙って聞いておれば、それではまるで母親のわらわが昔からちょくちょくソウジの寝ている間に自分のことをどう思っておるか確認しては一人悶え死にそうなほど喜んでおるようではないか」
「それはもう自白しているようなものですよ、ティアさん」
「ティア様どうこうよりもまずは私達の娘が旦那様に似て、こんな小さなうちから悪知恵が働くようになってしまっている事実に目を向けるべきかと」
『―――毎週日曜、午前九時‼』
その前にこの異世界版ス○パー戦隊or仮○ライダーみたいな特撮番組をどうにかしてくれませんかね?
正直これを見て俺に憧れてくれてる子達には悪いけど、所々着色されてるからカッコよく見えてるだけで事実を知ってる張本人からすれば脚色どころか完全に詐欺レベルだぞ。
「お兄ちゃん役の人には悪いけど、当時のお兄ちゃんはもっともーっとカッコよかったですよ」
「ソージ兄ぃはいい加減この事実を認めるべき」
「まあそういうところも含めてこそのソウジ様なんですけどね」
「というかサキ兄ぃの場合、今も昔も全然変わってないんだから本人役で出てもよくなかったです?」
なんか最近よくあるけどさ、その魔法を使わずに人の心を読むやつ誰に教えてもらったの? 心当たりがありすぎて全く分からないんだけど。
「旦那様がこちらの世界にきてからというもの色々な体験や景色を見させていただきましたが、こうやって改めて振り返ってみると私も含めて随分と濃い時間を過ごしてきたものですね」
まったく、セレスさんの言う通りだよ………。
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