第72話:国の収入源

何故か俺の知らないところで勝手に国王&建国宣言の日程が決められていたので仕方なく会議室で段取り等を決めた後、俺は机にべた~と寝そべりながら


「………金が欲しい」


「いやいやいや、今でもソウジ君は十分お金持ちでしょ。私この間ティアに盗賊狩りでどのくらい稼いだのか聞いたけど、そこらの貴族の全財産より稼いでたよね?」


「個人の金じゃなくて国の金だよ。いずれは国民から税金を取るにしても、それだけじゃ国の運営はやっていけないだろ。それに今は俺が殺した王貴族共の資産を国の金として使ってるけど普段の食費と誰かのドレス代が三着分、それと国民に返金する分で結構飛ぶんだよ。まだ余裕があると言えばあるけど……」


国の運営についてなんてド素人の俺でも国民の税金だけでやっていくのが厳しいことくらいは分かっているので、何か別の収入源を確保したいと考えながらそう言うと…何か考え事をしていたらしいミナが俺の顔を見ながら


「そういえば、この宮殿で使っている水や電気とかって毎月使用料を払っているんですか?」


「いや、払ってないけど」


「え゛っ、私はあんまり日本の公共料金についてとか知らないからあれだけど…それってかなりまずいんじゃないの?」


よく公共料金なんて言葉知ってるな。まあ何かのサイトを見て覚えたんだろうけど。


「だってここは異世界だぜ。もし未払いが国にバレてたとしても請求のしようがないし、ルナの力で無理やりこっちの世界に日本のインフラを繋いでるんだからそれを止めることも出来ない。つまり今後も俺達は電気、ガス、水道がタダで使い放題ってわけだな」


「うわっ、それもう犯罪じゃん。一国の王様になろうとしてる人がそんなこと言っちゃっていいの?」


「知ってるかマイカ、日本にはな『バレなきゃ犯罪じゃないんですよ』っていう名言があるんだよ。それにいきなりこの城から電気、ガス、水道の三つが無くなったらかなり不便になるぞ。……っつても別にお前らからしたら今までの生活に戻るだけだし大した問題じゃないか」


そんな俺の言葉を聞いたマイカは、最初は微妙そうな顔をしていたものの段々と顔に焦りが見え始め…最後には


「よくよく考えたら地球から見たらここは異世界なんだし、日本の法律なんて関係ないよね!」


「別に無理してマイカの考える国王としての在り方を変える必要はないんだぞ。今回の件に関しては全面的に俺が悪いしな」


「ごめんなさい! 私が全面的に悪かったですからこの宮殿内のインフラ関係はこのままでお願いします!」


このマイカの謝罪を聞いた俺は共犯がまた一人増えたぜとか思っていると……何やらいいことを思いついたかのような顔をしているミナが


「この前まで貴族の方々が多く住んでいた高級住宅街は今どうなっているんですか?」


「あそこなら今は完全にゴーストタウン状態だぞ。一応建物には全部結界を張ってあるから無法者の溜まり場とかにはならずに済んでるけど」


ちなみに高級住宅街だからと言ってすぐ近くに高級レストランなどはなく、一定の空きスペース(自然)があるだけなので本当に今は誰も近づいていないっぽい。


「ではそこにある家を全て排除して、新しく温水プールと銭湯を作るのはどうでしょうか」


「んまあ、確かに住宅一戸一戸がデカいから全部無くせばかなりの敷地面積が確保できるだろうけど、理由は?」


「先ほどのソウジ様の説明によると電気、ガス、水道の三つは全てタダで使える使えるとのことでしたので、こちら側は主に従業員の給料を出すだけで済み、かなりの黒字が見込めます」


なるほど。建物自体は俺が作ればタダだし、清掃も魔法でどうにでもなる。他に金が掛かるとすればプールに入れる塩素くらいか。………お姫様は考えることがエグイな。


「プールを作るなら私浮き輪とかビーチボールで遊んでみたいな~。あ~、でもまずは新しい水着が欲しいかな。この世界にも水着は売ってるけどソウジ君の世界の物方が可愛いのが多いし、何より服とかと同じで素材が断然良さそうだしね」


「っと、マイカさんが言うようにこの世界にはない浮き輪やビーチボールは勿論のこと、ソウジ様の世界で売られている水着のデザインをこちらの世界のデザイナーに売ることもできます。更に水着の材料などを私達経由で仕入れて服屋に高値で売れば裕福層向けの水着の販売も同時に行うことができます」


「……つまりデザインは似ているものだとしても片方はこっちの世界の材料で作った安い水着を、もう片方は地球の材料で作った高級水着が売れるってわけか。しかも温水プールだから売り上げの上がり下がりはあれど一年中商売が出来るし、逆に冬は銭湯の売り上げを多く確保出来る可能性があると」


それに水着は毎年新しいデザインの物が出てくるから一定数の売り上げは保証されるわけか。


「はい、それに温水プールと温泉を繋げることによってプールから上がった人達が体を洗う為にそちらへと誘導することも出来ますし、かなり人がそちらに流れてくれるかと。まあ一応プール側にも無料のシャワーは設置しますが、これに関しては料金設定などでお得なプランを作れば良いのではないでしょうか」


「じゃあさ、じゃあさ、プールサイドに飲食店も出せるようにして毎月一定金額を出店料として国に支払うっていう仕組みを作らない? 多分…というか間違いなくプールなんて物を作れるのはソウジ君だけなんだからお店を出す側としても悪くない話だと思うんだけど」


「まあ敷地面積は余るほどあるしプールと銭湯を一つずつでいいなら余裕で場所は確保出来る。というかそれでもまだ空きスペースが出ると思うぞ」


それにプールと銭湯の従業員は勿論のこと、飲食店に関しては俺としてはかなりありがたいアイディアだ。


「それでしたら近くに少し小さめのプールと銭湯も作ってしまいませんか?」


「………そっちは料金設定を高めにして実質金持ち用にするってことか?」


「そうした方が貴族の方達が多く集まってしまって一般の方々が使えないという状況にならずに済むかと」


珍しい施設や店が出来れば自然と人が多く集まるし、そうなれば金がモノを言う世界になるのは間違いないか。


「そうなると二つの施設で差別化が必要になってくるけど、やるとしたら内装・外装のデザインとかサービスに差を付けるとかとかかな?」


「実質金持ち用にするとなると飲食店のクオリティーとかが面倒になりそうだし完全貸し切り制にするか? んで、こっちには最新のキッチン設備を完備させておいて使用者が自分で好きな料理人を連れてくるなりなんなりさせれば文句を言われずに済むし……。あとは適当に銭湯のお湯に回復魔法でも混ぜ込んどけば勝手に金持ち共が集まってくれるだろ」


「でもそれをしようとすると最悪毎日お湯を変えなきゃいけないことになるけど、その度に魔法を混ぜるのは大変じゃない?」


自分で言っておきながらであれなんだが間違いなく俺の技術力ではお湯に回復魔法を混ぜるなんて芸当は無理なのでティアにでも頼もうかとも思っていたのだが…そのためだけに毎日血を吸われてたんじゃ貧血で倒れるな。となると……


「後で俺が一度使った温泉のお湯を綺麗だった時間まで戻すシステムでも作って掃除魔法と一緒に設定しておくは。……自分達が使う時は絶対に全部水を抜いて綺麗に掃除してから入るけどな」


「まっ、まあこれに関しては気持ちの問題ですし利用者にバレなければ大丈夫でしょうけど……ソウジ様ってたまに国王らしいと言いますか、結構グレーゾーンなアイディアを考えますよね」


「ここが異世界とはいえ地球で使われているデザインを商品として売ろうとするお姫様に言われたくはない。言っておくけどこれ完全に盗作だからな」


「とか言いつつ心の中では、『この世界でなら地球の法律なんて関係ないし、ぼろ儲けだぜ!』とか思ってるんでしょ?」


ギクッ⁉


「………いやちょっと待て! さっきマイカも自分で『よくよく考えたら地球から見たらここは異世界なんだし、日本の法律なんて関係ないよね!』とか言ってたじゃねえか‼ つまりお前も共犯だ! それが嫌なら今すぐ元の生活に戻れ!」


「そんなこと言ったら水着のデザイン云々言い出したのはミナなんだし、ミナも共犯じゃん! というか共犯どころか主犯でしょ‼」


その言葉を聞いた俺はマイカと目を合わせた後、お互い同時に一度だけ頷き


「「王族っていうのは本当に考えることが汚いな(汚いね)」」


「なんで私だけが悪者にされてるんですか⁉ お二人だってさっきまでは結構ノリノリだったじゃないですか‼」


ふむ、元が庶民同士だからか分からないけどミナ達とはまた違った良さが感じられるな。まあ別に誰が一番いいとかはないんだけど。………いや、俺が無意識に考えないようにしてるだけか。

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