第67話:喧嘩?

今回は及第点という評価を出したティアが俺から離れた為ゆっくりと伸びをし


「そういえばミナをリビングに転移させたんだけどその後どうなった? ブノワの親父達はもう帰ったのか?」


「いや、リアーヌとエメ、それに子供達とアンヌがお昼の用意をしておるからまだ全員おるぞ。それとミナに関してじゃが、あやつリビングに転移してくるや凄い勢いでわらわの所にきて、『一昨日ソウジ様とこの宮殿の周りを歩いていたという綺麗な女性は一体誰なんですか? 早く教えてください‼』っと聞きにきおったぞ」


こいつ、わざわざミナの声で喋ったところをみるに完全に俺の魔法で遊んでやがるな。


「別にそのままリビングに戻ってもいいけどあんまり馬鹿げた魔法は使うなよ」


「なんじゃ、わらわの心配をしてくれておるのかの? 当事者に何の相談もせず勝手に言い訳まで考えてくれておるというのに」


また勝手に人の心を読みやがって。別にいいけど。


「お前以外の吸血鬼に俺の血を吸わせる気は一切ないし、結構悪くない言い訳だろ?」


「確かにあれなら筋は通っておるし問題はないと思うが、何故そこまで自分の身を危険に晒すような言い訳にしたんじゃ? まあ最悪お主に何かあったとしても問題ないじゃろうけど」


「それは俺を助けてくれるって意味か? それとも自力でなんとかしろってことか? あと言い訳に関してはそれしか良いアイディアが思いつかなかったんだ」


そう言うとティアは再びルーティーン時の格好になり


「う~む、どうやら本当のようじゃの。ってきりわらわのことを守る為かと期待して………お主も素直じゃないのう。最初っからそれを前提に言い訳を考えておったならそう言えば良いものを」


こいつ、また人の心を読んだ挙句ニヤニヤしやがって。


「ほら、そろそろ戻るから離れろ。こんなところミナ達に見られたら面倒くさい」


「最初の方はわらわがこうすると顔を赤くして恥ずかしがっておったっというのに、最近は冷静でつまらんのう。まだ二回しか経験がないくせに生意気なガキじゃ」


420歳でまだ処○のお前に言われたくな―――


「痛っ⁉ おま、抜刀してない状態の村正の鞘で頭を叩くメイドがどこにいるんだよ! 危ねえだろ‼」


「わらわの処○はビンテージものなんじゃ!」


「ビンテージ? おいおい、デッドストックの間違い―――」


俺が言葉を言い終える代わりに、刀が何か硬い物に当たった時特有の音が鳴り響き


「ほ~う、一応手加減してこの刀を振るったとはいえ…よく反応出来たの」


こいつ、もし俺が反応出来なくてもいいようにワザと義手を狙いやがったな。しかもよりによって村正を使うとか受ける方法を間違えてたらそれごと斬られてたぞ。


「まだ呼び出した武器が壊れても綺麗に直せるのかとか調べてないんだからそれを使うのは止めろよ! もし元に戻らなかったらどうしてくれんだ⁉」


「ルナによれば、もし壊れおっても武器庫に戻せば勝手に直りおるそうじゃから安心せい。まあ少し時間は掛かるようじゃがの。……それにしても上手いこと考えたの~。わらわはてっきり防御魔法を付与しておる左手の手袋を使って無理やり刀を受けるか、黙って斬られるかのどちらかじゃと思ったておったのじゃが」


自分で言うのもなんだが瞬時に村正の鞘をティアの手から奪い、それで刀を受け止めたのは中々の判断だったと思う。俺が考えうる中で魔力を流せば流すほど切れ味が上がる村正の攻撃を受け止められるのはそれをいつも納刀している鞘ぐらいだからな。


まあ凄く簡単に説明すると、最強の矛(村正・刀)と最強の盾(村正・鞘)ってことだ。


「つかお前、俺がシャツには防御魔法をかけてないことをいいことに義手の付け根から斬るつもりだったな⁉ 自分で『お主の場合、普段から全身防御魔法で固めておると油断しそうじゃからシャツには何も手をかけるでないぞ』とか言っておいて、それを狙うとか汚すぎだろ」


そう、つまり今着ているチョッキは防御魔法がかかっているので胴体は何をされようと大丈夫なのだが、腕と頭はノーガード状態なのだ。ちなみに他の人達の服には一緒にオートバリアも付与してあるのでどこを狙われても問題ない。


まあ俺もロングコートを着れば同じ効果を得られるようにはしているのだが、訓練する時などはティアが絶対に着ることを許してくれないので木刀とはいえ攻撃が当たるとバカ痛い。


「訓練時も同じ状況なのじゃからさっきのわらわの攻撃が当たならばそれはお主が油断しておったということじゃ」


「はいはい、ティア様の処○はビンテージものですよ。そんな貴重なものを貰える男はさぞ幸せだろうから、そのお礼にってことで一生大事にしてもらえよ」


「ふん、わらわが気に入るほどの男ならそれくらい出来て当たり前じゃ」


そんなこと言ってるから何時までも処○なんじゃねえの? とか考えながら俺達はリビングへと向かった。






ティアに家の中でも極力転移魔法は使うなと言われているので無駄に長い廊下を歩き続け、やっとリビングに着いたかと思えばドアの近くで待っていたらしいミナがどこか落ち込んでいるというか、親に怒られた後の子供のような顔をしながら


「先ほどはソウジ様の婚約者であるにも関わらず旦那様に恥を掻かせてしまい申し訳ありませんでした」


「はあ? ………あ~、別にあんなのどうでもいいのに」


「いえ、今回は自分の身内と親しい仲のクロエさんの前とはいえ…本来ソウジ様の婚約者としてあのように取り乱すなどあってはならないこと。それも大事な会議………………ふぇ?」


本当に俺は何も気にしていないのに誰に怒られたのかは知らないがミナは完全に謝罪モードだったので面倒臭くなり魔法でセリアくらいの身長にまで縮めると、最初は何が起こったのか分からず放心状態だったのだが少しして自分の視線が低くなったことに気付き…ロリ声でどういうこと? みたいな声を出した。


さっきのティアとの一戦で疲れたから説明はいいや。疲れてなくても一々説明なんてしないけど。


とうことでそのまま後ろからロリミナを抱き上げた状態でソファーまで移動し、膝の上に乗せた流れで軽く抱きしめると


「ちょっと、それは私の身長が小さいことを活かした私だけがソウジにやってもらえてた特別だったのに‼ 魔法でミナを小さくするとかズル過ぎるでしょ!」


「いやさあ、俺も会議中は『後でセリアでも膝の上に乗せて抱き着こうかな~』とか思ってたんだけど、他の子を気遣うのも俺の役目かなと」


いうのは嘘で本当に気にしてないことで謝り続けられても面倒なのでそれを無理やり終わりにさせたのだ。……あと二人っきりの時は別として、最近人前ではリアにばっかり抱き着いている気がする。というより明らかに俺の婚約者三人の中でここ最近一番抱き着いているのはリアだ。


あっ、こちらとしては別に見せびらかしたいとかそういうのは一切ないのに、毎回誰かが頭から被ってる毛布をどかしたりなんだりで見られることが多いだけなので勘違いしないように。


「そんなことを言うってことはもちろん私のことも気遣ってくれるのよね?」


「はいはい、今はミナの時間だからセリアは今日の夜な。てかお前仕事中じゃないのかよ」


確かさっきティアがそんなこと言ってたよな。とか思っているうちに大人しくキッチンへと戻って行ったのでたまたまリビングに用があったついでにって感じだろう。


「んで、うちのミナちゃんに説教したのは誰だ? さっきの状況的にブノワの親父か?」


「いえ、私に注意したのはお父様ではなく…こっちに転移された直後の私の様子がおかしかったことに気付いたお母様が……」


「私がこの人に事情を聞いてミナにお説教したのよ。今回はほぼ身内だったから良かったものの少し気が緩んでいるようだったから」


俺の目の前のソファーに座っているお母さんがブノワの親父を指しながらそう言ってきたので


「別に今回はクロエがいたとはいえこの子とは仲が良いんだしそんなに怒らなくてもいいだろ。それにミナだってメンツによってはちゃんと気を付けるっつうの」


「それは私だって分かっているけれど、一国の王女が…それもソウジの王妃としてこれから貴方を支えていくべき人間が何時何処であっても浮気だなんだと騒ぐなんて論外よ」


「ああ゛っ? そんなところを含めてミナなんだから別にいいだろ。それに俺は浮気をしようと愛人を作って帰ってこようと何も言わずにいる、男に都合の良い女はごめんだね。だいたい俺はそこらの王様とは違うんだからそいつのお嫁さんが少しおかしくても何の問題もないだろうが」


まずそんなことをする気もない…というよりミナ達がOKを出した子以外と関係を持つとか怖すぎるし、俺が結婚してもいい人数は既に決めている。とか言っちゃうとお前何様だよっという感じだが、これは一応決めているというだけなので誤解しないように。


「あのソウジ様、それだと私達三人は勿論のこと、今後貴方のお嫁さんになる方もおかしな人ということになるのですが……」


「いや、この息子に着いていける女の子は中々変わっているというか…柔軟な考え方が出来る子じゃないと無理だと思うぞ。………私達はどこでミナの育て方を間違えたんだか」


ブノワの親父はロリミナを懐かしそうな顔で眺めながら、そんなことを呟いた。


ってか、若干お母さんと喧嘩みたいになってるけど…この人怒ったら怖かったりしないよね? 怒られた直後だからか分からんけど少しミナの喋り方が大人しめなんだが。

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