第27話:お説教、お説教、お説教………

あー、吐ききったらスッキリしたは。相変わらず吐くのが下手だからスッゲー苦しかったけど。……サッサとバケツの中身片づけよ…魔法で。


といった感じでまだ気持ち悪くはあるものの、少しでも楽なうちにと片づけを済ませた後…キッチンへうがいをしに行くと


「うえ゛ーーーーん、お兄ちゃんが死んじゃうーーー!」


「ごめんなじゃいーー‼ うぢがソージ兄ぃの体を揺らじだがらーーー!」


「グスッ、サキ兄ぃ、死んじゃうです?」


「すっすいませんソウジ様。何か気に障ったでしょうか?」


「ソウジは死んだりしないから大丈夫よ。ほら、三人は落ち着いて。あと、別にエレナが怒られたわけじゃないんだからそんな心配そうな顔しないの」


なんだこのカオス空間は。ゲロ吐くのとポンコツ兵の相手で全然気づかなかったぞ。


「なんでみんな泣いてんの? あと別にエレナ達は何も悪いことなんてしてないけど……」


「ソウジがいきなり苦しそうに吐いたり怒鳴ったりしたからでしょうが‼ もう私一人じゃ無理!」


それから俺は子供達を宥めたり、誤解を解いたりして何とか落ち着かせられたと思ったら、次はセリアによる説教が始まり……うがいをして居間に戻れたのは四十分後だった。掛かった時間としては四人を宥めるのに十五分、セリアの説教が二十五分である。


「セリアの説教が頭に響いて頭痛が悪化したぞ。二日酔いの奴相手に大声で説教すんなよ」


「ほっほほ。ですがお嬢様のあのようなお姿…私は初めて見ました。よっぽど今の生活が楽しいのでしょうな」


「それに元を辿ればあの子達に心配を掛けるようなことをしたご主人様がいけません。これに懲りたら二度と二日酔いになるまで飲まないでください」


あ~、さっさとソファーに倒れよ。


「それよりだ。うちの警備兵のトップって誰? アベルでいいのか?」


「まあ今のところはそういうことになりますね。やはり先ほどの警備兵の件ですか?」


「ああ。今回は俺に指示を仰ぎに来ただけ良かったが、あれくらいのことは自分達で何とかして欲しかったってのが本音だ。……セレスさんもワザと警備室に連絡しないで見てたくらいだし」


セレスさんの他に警備兵にもトランシーバーは渡してある。なので俺が怒鳴ってもあのポンコツがすぐに動かなかった時点でセレスさんが俺に代わって指示を出すことも出来たはずなのだ。でもそれをワザとしなかった。


「被害女性には申し訳ありませんが私も少々あの件は気になりましたので。勝手なことをしてしまい申し訳ありません」


「いや今回はセレスさんの判断に感謝です……。後でアベルに被害者への対応マニュアルを作らせるか」


「ところで先ほどの被害女性を病院へ送らせたのはよろしいですが、この国の病院はどうなっておられるのですか?」


「ん~? どうって、この国に病院は一個しかなかったから昨日見に行ったついでに一番偉い人に挨拶して、建物自体を新しくしてきたからこの世界で一番の病院と言っても良いレベルになってるんじゃないか? なんたって医療設備は地球でもトップレベルの物だからな」


なぜ俺の管轄外の建物である病院を新しくしたかというと、病院であるからである。以上!


「ちなみに病院関係者の方々は全員信用できるのですか?」


「その件は私から。まず先ほど話に出た病院ですが、前国王様や貴族の方々も使われていたほどの場所ですので腕は確かです。また、お金がなくて病院に行けない人達には無償で治療を施すなどしておられた為人々の信頼は厚く、かなり評判はよろしいですよ。流石に診れる人数は限られておりますので、この国の病人全員をとまではいかなかったようですが……」


「それに新しく作った病院の確認と挨拶という名の面接に行くようミナに頼んどいたから大丈夫だろ」


昨日の夜ミナと廊下で会った時にそのことを伝えたら、『なに一人で勝手なことしてるんですか‼ 危ないでしょ!』ってめっちゃ怒られたけど。


「はあ。どうせご主人様がお嬢様にお願いされた際にお叱りを受けたかと思いますので、今回は何も言いません……が! 警備室の監視システムというのは一体なんのことでしょうか?」


「あ~、そういえば警備兵以外にはまだ誰にも伝えてなかったな。それも昨日作ったシステムなんだけどさ、まず街中に監視カメラって言っても分かんねーか。えーと、監視の為の目? みたいなやつを至る所に設置したんだよ。んで、その目が見てる場所を警備室にいながら確認できるモニターを用意したり、犯罪が行われそうになった場合は瞬時にその場所がモニターに移されるように魔法とか使ってシステムを作ったり、その現場近くにすぐ転移できるように改造してきた」


それに加えてカメラの死角は一切なし&透明化と防御魔法を全てに展開しているだけでなく、24時間録画中。証拠は? と言われれば即出せます。


「はあ。それくらいならまだいいですが、あんまりやり過ぎないでくださいよ。注目され過ぎても面倒ですから」


「は~い」






それから少しするとエメさんが部屋に戻ってきて


「これからお昼ご飯を作りますが、旦那様の分はどうなさいますか?」


「う~ん、まだ頭痛のでいらないです。でも夜ご飯は食べますんでお願いします」


「かしこまりました」


あー、全部吐いたから腹減った~。でも頭痛いから動きたくないんだよな~。


とか思っていたらティアが帰ってきたようで、リアの隣に座り


「なんじゃお主、まだ寝ておったのか?」


「おかげさまで絶不調から不調にまでは回復したよ」


「ティア様、少々ご主人様をお任せしてもよろしいでしょうか?」


「おおよいぞ。というより午前中はこやつの面倒を押し付けてしもうて悪かったのう」


「いえ、これも私の仕事ですから」


そう言い、リアはキッチンの方に向かって行った。


「リアーヌの看病はどうじゃった? 優しくしてもらえたかの?」


「逆だ逆。滅茶苦茶怒ってたし、いつものリアと違って怖かったわ」


「あははははは、それは気の毒じゃったのう。じゃが今回はお主の自業自得なのじゃから反省せい」


「つかなんでお前だけまったく酔ってなかったったんだよ。酒強すぎだろ」


こいつが一番飲んでたのに全然酔ってる感じがなかったんだよな。


「わらわは吸血鬼じゃぞ。あれくらいの酒じゃあ酔わぬわ」


「へ~、やっぱり吸血鬼って人間と違うんだな。他には何が違うんだ? 太陽の光に弱いとか、十字架が苦手とか?」


「お主はなにを言っておるのじゃ? 別に吸血鬼は殆ど人間と変わらぬぞ。しいて言えば、食事をしなくても血を吸えば生きられるということくらいかのう」


「………つまんな」


「いや、わらわにそう言われても困るんじゃが……。だいたい太陽の光が苦手じゃったら外になど出ておらんわ」


「ごもっともで。………そういえばお前、訓練場なんか行って何してたんだ?」


別にリアといた時間が悪かったとは言わないが今日のリアはマジで怖かったからなぁ。ちゃんとした理由じゃなかったらニンニク料理を食わせてやる。効くのか分からないけど。


「最初はアベルの実力を、その次に騎士団の者達の実力を見ておったのじゃ。いざという時に使いものにならんようでは意味がないからのう。それに最近は怪しい噂も流れておるし……」


「んで、実力はどうだった? あと怪しい噂の話は言わなくていい。聞きたくないから」


「ん~、アベルは駄目、あとの者はもっと駄目。よって全員明日から鍛えなおしじゃな」


「そんなに酷かったのか? まあ俺よりは全員強いと思うけど」


「当り前じゃ。お主はただ力を持っておるだけで技術力は全くじゃからのう」


いやお前、俺が戦ってるところなんて一回も見たことないだろ。当たってるけど。


「その力だけで一回、海の上を飛んでたドラゴンを倒したんだから少しは誉めてくれよ」


「それは褒めるというより呆れじゃな。お主は一体どれだけの力を持っておるんじゃ? 勇者召喚ではなさそうじゃが」


なにサラッと勇者召喚とか言ってくれちゃってんの。これでさっきの怪しい噂とかに繋がったら最悪だよ。………聞かないでおこう。


「ティアだから言うが、俺は魔力が尽きない限り多分全ての魔法が使える。ミナ達が言うにはまだ俺は魔力の調節が下手なだけで本当なら昨日も倒れずに余裕だったはず、だってさ。あとこの力は俺の世界の神に貰った。……だから勇者召喚とは一切関係ない。これ以上その話をするな」


「もしや、お主が住んでおった国は日本という国かの?」


「それ以上勇者の話をするな‼ ―――――ッ⁉」


あっ、頭がーーーーー‼

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