第三章

第10話:作戦開始

あれから四人でどうやってボハニア王国を乗っ取るかの作戦会議をし、話が纏まったのは夜中の一時過ぎだった。それから俺は三人を客室に案内したり風呂に入ったりしていたら夜中の二時過ぎになっており、四時間も寝れなかった。つまり今日の俺は朝の六時起きである。


は~あ、眠い……。最近は一人だったから朝飯なんて食ってなかったけど今日は食うだけじゃなくて作らなきゃいけないのか。面倒くせぇ。……こんなことを毎日やってる母親ってのはスゲーな。


そんなことを考えながらリビングに行くとリアーヌさんが真っすぐ背筋を伸ばして立っていた。


「おはようございますソウジ様」


「ああ、はい。……ちなみに何時からここにいたの?」


「え~と、確か五時頃からですね。メイドが一番最初に起きているのは当たり前ですから」


「…………」


取り敢えず昨日のうちに知識共有魔法でエアコンの付け方を教えておいて良かった~。俺は暖房を寝る前に全部消す派だから最悪一時間も寒い中で待たせることになってたぞ。


「もしかして何かまずかったでしょうか?」


「いや、そういうわけじゃない。ちなみにずっと立ってたのか?」


「はい、そうですが…何か変ですか?」


「いや、変っていうか……別に好きなところに座ってくれて良いんだぞ」


「誰もいないとはいえメイドが自分の部屋以外で座るなんてあり得ません」


「くっ、くっだらねぇ……。他ではどうか知らないけどうちでは常識の範囲ならメイドとか関係なしに自由で良いぞ。っても今日の作戦が上手くいけば次うちに来る時は客としてか。それじゃあ流石に無理だな」


「ふふっ、そうですね。折角そう仰っていただけたのに残念です」


なにその笑い。まさか今後もうちに住むとか言うんじゃないだろうな。別に嫌じゃないけど。……もうこのことについて考えるのはやめよ。


そんな話をした後、朝飯を作ろうとしたらリアーヌさんが手伝うと言ったので一緒にリビングに移動し、なんだかんだで朝飯の準備が整ったところで残りの二人も起きてきた。


「なんで坊主だけサンドイッチじゃなくて、白くて三角の塊を食ってるんだ?」


「俺はパンが嫌いなんだよ。あとこれはおにぎりだ」


「私はソウジ様にお一つ頂いて食べましたが、確かにパンとは全然違っていましたね」


「ですがこのサンドイッチもいつも食べている物より美味しいですよ」


そりゃーそうだろうよ。そのサンドイッチは全部地球の物を使ってんだから。野菜はともかくパンは比べ物にならないだろう。






朝飯を食べ終え、人が活発に活動し始めた十時過ぎ………


「よし、そろそろ行くか」


「なんだ坊主、随分とやる気じゃねーか」


「うるせぇ。さっさと準備しないとお前だけ置いて転移するぞ」


「おい待て! それは鬼畜すぎるだろ。ボハニアまで歩いて行ったら間違いなく俺だけ検問で捕まるぞ」


「それが嫌なら四十秒で支度しな」


「無理に決まってんだろ! 絶対に置いてくなよー!」


アベルはそう叫びながら部屋に荷物を取りに行き、それと入れ替えにお姫様とリアーヌさんが居間にやって来た。


「お姫様はこの世界の服だけど、リアーヌさんは俺があげたメイド服のままで良いのか? 生地とか作りが違うから何か言われるかもしれないぞ」


「流石にお嬢様がソウジ様から頂いたお洋服はあれですが、メイド服ならそんなに変わりませんので大丈夫ですよ」


「う~、リアーヌだけズルいです。ソウジさんから頂いた服を着た後にこの服を着ると凄く着心地が悪く感じます」


「お嬢様が今着てるお洋服だって変装用の物とはいえ、この世界ではなかなかのお値段ですよ」


こっちの服を着たことはないけどやっぱり着心地が悪いのか。となるとコートも日本で探そうかな~。でも良いのが見つからなかったんだよな。


「はぁはぁはぁ。良かった~、まだいた」


「やっと来たか。んじゃ、移動するから俺から離れるなよ」


そう言うと三人はスグ俺の周りに集まったので一応確認した後、転移魔法を発動させた。






「…………スッゲー、マジで転移しやがった!」


「昨日も転移魔法は使っただろ。ほら、警備に見つかる前にさっさとギルドに入るぞ。その為にギルド近くに転移したんだからな」


「そうですね。運良く目撃者は少なかったみたいですがいつ騒ぎになるか分かりませんし」


「リアーヌの言う通りです。急ぎましょう」


ということで俺達はギルドに入りこの間のおばちゃん(ギルド長)のところに向かった。


「おや? ソウちゃんじゃないかい。今日はどうしたんだい?」


「ソウちゃんっての俺のことか? 別に良いけど。……そんなことより緊急クエストの依頼をお願いしてもいいか?」


「まあ依頼内容と報酬金額にもよるけど大丈夫だよ」


「そうか。んじゃ、依頼内容は俺が指定した場所まで行ってそこにいる怪我人、病人全員をギルド前に連れてくること。軽傷、重病関係なしに自力でここまで来れない人を優先で頼む。報酬は一人連れてくるごとに1000円。ただし、ヤラセや怪我人の取り合い、窃盗等をした場合はペナルティーありだ」


「う~ん。別にソウちゃんを疑ってるわけじゃないけどその依頼をOKするのはちょっと難しいね。特に報酬の面で冒険者達に信頼してもらえない可能性がある。……誰か高位の人が保証してくれれば話は早いんだけどねぇ」


おばちゃんは申し訳なさそうにそう言ってきたのだが全く問題ない。何故ならこっちには本物のお姫様がいるのだから。


「ではマリノ王国国王が娘、ミナ・マリノが保証いたします」


「………いきなり一人でドラゴンを倒してきたかと思えば、次はマリノ王国のお姫様を連れてくるとは。一体アンタは何者なんだい?」


「ギルドってのは相手の素性を探らないんじゃなかったのか? まあすぐに俺が何者か分かるからそれまで待ってな」


「坊主が何者か分かるっていうよりは今から何者かになるの間違いじゃないか?」


「確かにそうですね。今のソウジ様はとても素敵な一人の男性というだけですし」


「あはははは。それじゃあ、ソウちゃんが何者かになるのを楽しみに待たせてもらおうかね」


それから依頼書にサインをし、俺達はギルドの屋上に移動した。それから俺は投影魔法と音声拡張魔法をボハニアの各所に展開させた後、隣にお姫様がいるのを確認してから


「準備完了だ。アベル、スマホのカメラアプリを立ち上げてくれ」


「はいよ。えーと、これを押せば……」


よし、ちゃんと映ってるな。だが音声チェックも大事だ。ということで


「あー、あー、あー。マイクのテスト中、マイクのテスト中」


「あの~、ソウジさん。ちなみに今は何をしてるいるのですか?」


「何って、マイクのテストという名の遊びだろ」


「遊ぶのも良いですがソウジ様、私達今凄い注目されてますよ。……ここがギルドの屋上だから攻撃されていないだけで警備兵なんて今にも攻撃してきそうですし」


「大丈夫、大丈夫。もし攻撃してきたとしても一番最初にやられるの背中を向けてるアベルだから」


「ふざけんなー‼ さっさと作戦を開始しろ!」


もしもの時の為にオートバリアも展開してあるけど、面白いからこのまま黙ってよ。


「え~、突然ですが今からこの国を乗っ取ろうかと思いま~す。ということでまずはこの国にいるクズ共を全員消しま~す」


あれ? 俺の予想だとここら辺で騒ぎになると思ってたんだが、なんか静かだな。……まあいいか、サッサと掃除しよ。


ということで俺は早速選別魔法、転移魔法を発動させた。


ちなみに選別対象はこの国にいるクズ共、そして転移先は取り敢えず昨日用意した牢獄内である。勿論その牢獄は魔法使用不可、外部からの接触を防ぐ為の結界ありだ。


ということで………


はい、お掃除終了っと。


「さて、皆さんの周りからクズはいなくなりましたか?」


あれ? なんで誰も喜ばないの。もしかして………失敗した感じ? いやいやいや、それは流石にマズいだ―――


「「「「「うおぉぉぉぉ‼」」」」」


「本当にいつも横暴だった貴族共が消えたぞ⁉」


「さっきまで近くにいた暴力兵士も消えたわ‼」


「こっちもだ‼」


各所からそんな喜びの声が続々と聞こえてきたのに続きお姫様とリアーヌさん、アベルも喜び始めた。……さて、あとは


「おい、お姫様頼む」


「はい、お任せください。……私はマリノ王国国王が娘、ミナ・マリノです。ここからはお知らせに入らせて頂きます。まず怪我人、病人の方は軽傷、重症に関わらず全員ギルド前に集合してください。自力で移動が出来ない方々に関しましては冒険者の皆様に運んでもらえるようにお願いしていますのでご安心ください」


自国のお姫様ではないとはいえ隣国のお姫様くらいは皆知っているはずだ。これで警戒してこっちに集まってくれないという事態にはならないだろう。


「最後になりますが……城内に残った人達に加え、上層階級の方々並びに残った兵士は全員この国にある王城に集合してください」


さて、さっき牢獄に送った奴らの家とかには侵入防止の結界と破壊禁止の結界を張ったし、おばちゃんの所に戻るか。

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