第3話:初異世界!
「どう? 私があげたチート能力について理解できたかしら?」
「ああ、説明された分は全部理解した」
「そう、なら安心ね。さっき説明したことさえ理解できてれば何とかなるわ」
「つまり、今後何か分からないことがあっても自分で考えろと」
「そういうこと~。一から十まで説明してたらキリがないしねぇ。まあ、どうしても分からないことがあったら私に聞きなさい」
「いや聞きなさいって言われても、どうやって聞けばいいんだよ?」
いくら何でもありって言っても異世界でスマホが使えるとは思えないし、こいつが俺と一緒に行動するとも思えない。なんたって正月という一年で一番人間がお参りしに来る日に職務放棄してるような神だぞ。
「あ~、あっちの世界でもこっちのスマホが使えるようにしといたから大丈夫よ。というかアンタ限定だけど、生活インフラは全て使えるようにしといたから安心しなさい」
「ちなみに仕組みは?」
「……神の悪戯的な?」
「つまり説明するのが面倒くさいと」
「そういうこと。だからこれ以上聞くのは禁止」
「別に俺も面倒くさい説明を聞きたいわけじゃないからこれ以上聞く気はない。それよりこれから行く異世界について教えてくれ」
ぶっちゃけ仕組みが分からなくても生活インフラが異世界でも使えるというだけで十分である。そんなことより俺が今一番知りたいのは異世界についてだ。
「はいはい。え~と、生活インフラまでの話はしたから……次はお金と言葉について話そうかしら」
「大体のラノベではそこら辺は全然こっちの世界とは違うけど実際はどうなんだ?」
「勿論違ってたわよ」
「違ってた? なんで過去形なんだよ」
「そんなの私がお金と言葉を日本と全く同じにしたからに決まってるじゃない」
「つまり、今俺の財布に入ってる金も使えるってことか?」
「そゆぅこと~。そこら辺の調節をしてたら結構時間が掛かっちゃったけどね」
なるほど。だから一月も終わるって時にこいつは来たのか。……まあ、神が人間の前に来てる時点でおかしんだけど。
「あとは向こうに行ってから説明するわね」
天照がそう言ったのを聞いたすぐ後のことだった。いきなり目の前の景色が見慣れたリビングから、見覚えのない森に変わっていたのだ。
「はあ⁉ ここどこだよ!」
「どこって、アンタがずっと行きたがってた異世界じゃない」
「お~。これが異世界か……日本にある森とあんまり変わんねぇな」
「そりゃ~、森なんてどこも一緒でしょうが。それよりさっきの続きを話すわよ」
ということで能力の時と同じで話が長かったので簡単にまとめると
・俺の為に用意した土地の大きさはネズミの国くらい(シーの方)
・この土地には今のところ誰も住んでない
・王様になりたいなら取り敢えず、お城でも建ててみたらいいんじゃない
・転移魔法を使えばいつでも日本と異世界(今いる世界)を行き来できる
とまあこんな感じだった。
「それじゃあ一通り説明したし私は帰るわね」
「おいちょっと待って。最後にお願いなんだが、建築時限定でいいから材料無限にしてくれ」
「う~ん、まあ建築時限定ならいいかな。お詫びもかねて」
「お詫びもかねて? おい、どういうことだ」
「どうせ後でバレることだから正直に言うけど、さっきアンタにチート能力を授けるのと一緒に高校二年生位まで若返らせてあげようとしたんだけど……」
「おい‼ なんでそこで黙るんだよ!」
そう言いながら俺はポケットからスマホを出し……内カメで確認したのとほぼ同時に
「それがどうも人間を若返らせるのは蘇生魔法の超簡易版みたいなものだったらしくて、髪の毛と目の色が変わっちゃいました~。てへぺろ☆」
「 『てへぺろ☆』じゃねーよ‼ 神ならそれくらい知っとけよ!」
これは俺の勝手な推測だが、『人を若返らせるのは蘇生魔法の超簡易版だった=人体にちょっとだけ影響が出た』みたいなことだろう。……ちなみに髪の色は黒から白に、左目は黒から青に変わっていた。
だがこれは色素が抜けただけだからまだ良い。問題は右目が赤色に変わっているということである。
「おい、確か目が赤い人って眼底部の血管の色が透けてるから赤くなるんじゃなかったか?」
「へ~、そうなの? 物知りなのねぇ」
「別に感心してほしくて言ったわけじゃねーよ、この駄女神が‼ 俺が言いたいのは、血管近くにまで影響が及んでるってことは重要臓器とかにも影響が出てるんじゃないかって、心配してるんだよ!」
「誰が駄女神よ! あと一応アンタの髪と目の色が変わった後スグに確認したけど問題なかったから安心しなさい」
「……百歩譲って本当に問題なかったとしてだ。元の世界に行く時はどうするんだ? こんな見た目で歩いてたらただの厨二病だぞ」
「その時は変身魔法でも使えばいいじゃない(あっちの世界に魔力なんて無いから無理だけど。……後で何とかしておかないと)」
「なるほど、その手があったか。ところで後半の方、なんて言ってたんだ?」
「ううん、別に大したことじゃないから気にしないで。それより他には何かあるかしら?」
「それじゃあ最後に一つ。あっちの世界では普通に実家暮らしなんだけど、俺がいない間はどうするんだ?」
「それなら関係者の記憶をちょっと弄って、白崎宗司は一人暮らしをしているってことにしといたから大丈夫よ。あっ、これが一人暮らししてる場所の住所ね」
そう言うと何故か俺のスマホにその住所が送られてきた。……連絡先教えた覚えないんだが。
「……金とかの話あたりから思ってたんだけど、そんな簡単に人の記憶を書き換えていいのか? 言ってることとやってること全然違うじゃん」
「あーあーあーあーあ、何も聞こえませーん」
そんな小学生みたいなことを言い出したかと思えば、いきなりどこかに消えやがった。あの駄女神、完全に逃げたな。……よし、あの駄女神のことは一旦忘れてささっと城でも作るか。
というのも今この世界が何月なのかは知らないが結構寒いのだ。え~と、取り敢えずメニュー画面とか無いのか?
そんなことを考えた瞬間
「うおっ⁉ なんていうか、イメージ通りの画面が空中に出てきたな」
そんな独り言を言いながら、上から順番にメニューっぽいのを見ていくと……『建築』という項目が見つかった。
(えーと、他にそれっぽいものは無いしこの『建築』ってやつ押してみるか)
ということで、それを押してみると様々な建物の名前が現れた。
(へー、一般住宅から城までなんでもあるんだな。……遊園地とかスッゲー気になるけど、まずは城だ)
城を選択した後は自分の好きなデザインを選ばされたり、部屋の拘りを聞かれたりし……
『ご要望を承りました。完成までには一日程掛かりますのでしばらくお待ちください』
なるほど。自分の要望を伝えるだけであとは勝手にやってくれるのか。なんとも建築業界泣かせな機能だな。だが楽できるに越したことはない。……よし、今日はもう一つだけやりたいことをやって帰るか。
そう決めた俺は頭の中にとある魔法をいくつか思い浮かべた。
ふむ。駄女神の言う通り使いたい魔法を思い浮かべるだけでちゃんと使えるらしい。しかもそれだけじゃなく頭の中でイメージしたことはなんでもその通りになるっぽい。そのおかげでやりたいことはすぐに終わった。
その後は変身魔法を使って見た目を元に戻してから駄女神が用意した家に転移した。
地球にも魔力があるのはおかしくないかって? 言われてみれば確かにそうだな。……今度会ったら問い詰めよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます