蒼白き閃きは神撃の閃き おめでとうの外伝

土田一八

第1話おめでとう!あなたが選ばれました。 よし、アイツを撃て!

「……」


 私はある日、指揮官に休暇を申請した。

「宮。どうしたの?」

「最近出撃ばかりだから、たまには休みたいなぁ」

「うん。分かった。いつ休む?」

「さっそく明日」

「うん。いいよ」

 指揮官は話が分かるから助かる。

「ヤッター!ありがとう。指揮官!」

 私はルンルン気分でピスト(指揮所兼操縦者待機所)に引き揚げた。だが、それは事件の始まりであった。



 翌日。

 指揮官がすまなそうな顔をして私の所に来た。

「宮。すまない。調子の悪いのがいてな…」

「じゃあ、今日の休暇はなし?」

「そういう事になるな。休暇は明日に繰り延べする」

「うん。分かった…」


 だが、それからも何かと理由があって私の休暇は延び延びになっていた。当然の事ながら私の機嫌は悪くなり部隊の空気もギスギスしていた。私は警報が出る度に迎撃に上がる。

「指揮官何を考えているのかしら…宮ちゃんを使い過ぎじゃない?」

「最近の宮ちゃん、漏れたガソリンが充満している様な感じよね…」

「宮ちゃん今も迎撃に上がっていったし、大丈夫かなあ?」

「今日だってもう3撃目だよ?」

「敵と戦う分は問題ないと思うけど…」

 制空隊の仲間たちは心配そうにヒソヒソ囁き合う。宮を含め迎撃隊の操縦者は連日連夜迎撃に上がっていた。それは迎撃だけでなく哨戒任務も司偵隊の役目であったからだ。迎撃戦闘機の数が絶対的に不足しているのと司偵隊の方が経験豊富な為であったからだ。


 戦闘終了後帰投するが、私は猛烈な睡魔に襲われた。

「はあ。眠い…」

 目がトロンとしてきた。

「宮。寝てていいよ」

 無線で僚機からそう言われた。

「では、お言葉に甘えて…」

『神風』もくいくい上下運動をして応えてくれる。

「ありがとう『神風』。お前いい子だね…」

 そう言うと私は重たくなっている瞼を閉じる。エンジンの爆音が子守歌だ。


「ZZZ…」


「おめでとうございます!あなたが選ばれました‼」

「何に?」

「今日の出撃メンバーにです!」

「今日私は休暇だった筈だけど?」

「たった今、休暇は取り消されました!」

「…よし、『神風』!アイツを撃て!」


 ダダダーン!

 指揮官は倒された。

「よし、これで私の休暇が復活だ」



「おめでとうございます!あなたが選ばれました!」

「何に?」

「今日の作戦メンバーにですっ!」

「今日私は休暇だった筈だけど?」

「休暇は取り消されました!」

「…よし、『神風』!アイツを撃て!」


 ダダダーン!

 指揮官は始末された。

「よし、これで私の休暇は復活した」


「おめでとうございます!あなたは選ばれました!」

「何に?」

「今日の殴り込みメンバーにです!」

「これからご飯なんだけど?」

「ダイエットの為、食事は抜きです」

「よし、『神風』!アイツを撃て!」


 ダダダーン!

 指揮官は消された。

「よし、メシにするぞ!」


「おめでとうございます!あなたは選ばれました!」

「何に?」

「今晩の哨戒任務です!」

「もう消灯時間が過ぎてるぞ?」

「睡眠時間は無しです」

「よし、『神風』!アイツを撃て!」


 ダダダーン!

 指揮官は闇討ちにされた。

「今の発砲音はなーにー?」

「何でもない!寝るぞ!」


「おめでとう。お主は選ばれた」

「何に?」

 私はなぜか全裸で緊縛されている。

「わしの子を孕むのじゃ!」

 白髪頭のジジイはモザイク処理された一物をオッ立てて、私にめがげて突進してきた。

「『神風』!コイツを撃て!」


 ダダダーン!ドドーン!

 ブスブスブス…。

 白髪頭のジジイはカミナリに撃たれ、黒こげになってその姿を消した。


「……」


「ー!、ー!、ー!」


「宮ちゃーん!朝だよ!学校に遅れるよ?」

「えー?代わりに行ってきて~?」

 私はそう言って寝返りをうつ。

「何言ってるの?起きて起きて!」

 真央に元の姿勢に戻され、仕方なく私は重い瞼を開けた。

「あ~!やっと起きた~」

 真央はほっぺをぷくーとふくらましている。

「ほらほら」

 私は真央に追い立てられるようにして身支度を始めた。


「行ってきまーす」

 私は自転車に乗って登校した。


 昨夜の夢などこれっぽちも憶えていなかった。


 雨が上がり、今朝は良く晴れている。


「あ、虹だ」


 雨上がりの澄んだ青空に虹が出ていた。しかも2段構えだ。


「何かいい事あるかな?」


 私はルンルン気分で学校に向かった。


「よし、あの子はどうか?神託を」

「…わかりました」


                                完

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