第6話

撥条.


またしても誘拐され、ふいんちゃんに助けてもらってしまいました。本当に情けないです。


「ぜんくんごめんね。私が名探偵なんかになったせいでたくさんの事件に巻き込まれたり、当事者になっちゃったりして」


誘拐されて僕が目を覚ました後、現場が偶々家に近かったことや、もう夜も遅いことから事情聴取は明日に回され、三國さんの監視のもと、二人で歩いて帰っていたところ。急にふいんちゃんが泣きそうな顔でそう言いました。そんな、謝りたいのは僕の方なのに、そう思った瞬間今まで貯めていた言葉があふれてきました。


「そんなことないよ。むしろ僕が謝りたいっていうか謝る。ごめん、ふいんちゃん。最初の事件は仕方なかったとしても次に僕が誘拐なんかされちゃって、ふいんちゃんが助けてくれたせいで有名になって名探偵を辞めれなくなって、散々人が死ぬところも見たし、ちょっと仲良くなった人でも殺されて、本当にごめん」


話し終えるとふいんちゃんがキョトンとした目でこちらを見ていました。


「なんでぜんくんが謝るの?私は名探偵になったこと別に気にしてないよ。本末転倒かもしれないけどぜんくんのことまもってあげれたりできるし、人が死ぬところを見るのもいやだけどもうなれちゃったし。ぜんくんが負い目に思うことなんてひとつもないよ」


この言葉を聞いてあれ?と思いました。「普通に暮らしたい」のではなかったの、と。そう伝えると


「べつに私は気にしてないよ。ただ、殺される人がかわいそうと思ってただけ。それにぜんくんを巻き込むのもいやだったし」

「別に僕は巻き込まれるのは嫌じゃないよ。巫尹さんの活躍を一番近くで見られるし」

「?」

「?」


お互いに顔を見合わせます。そして一瞬見つめ合った後、笑い出してしまいました。


「なあんだ。私もぜんくんもお互いに気を使いすぎてたんだ」

「そうだね。あ、そうだ。ふいんちゃん、僕を正式に助手にしてくれないかな?遠慮することはなくなったし、もっと近くにいたいから。駄目?」

「だめなことないよ。こちらこそよろしくお願いします」


そこまで言うと、急にいたずらを思いついた顔で


「では、ワトソン君、早速最初の仕事だ。わたしにジュースを買ってきてくれないか。喉が渇いて仕方ないのだよ」


と、言いました。ならば僕も乗りましょう。


「かしこまりました。ホームズ先生、では買ってくるのでジュース代をください」

と、言いました。次の瞬間、またしても二人同時に吹き出してしまいました。

「ふふふ」

「ははは」


静かな夜に僕たちの笑い声が木霊していました。

 

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