566. 魔王陛下の魔王様、危機一髪
※ぼかした性的表現があります。
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温泉に浸かりながら、リリスを膝の上に乗せる。薄く残った傷を指でなぞるリリスが唇を尖らせた。
「……まだ残ってる」
「仕方ない、貫いたのだから簡単に消えないだろう」
治癒魔法で傷そのものは消える。癒されて痛みもない。しかし肌が火照ると傷痕がうっすらと浮かんだ。赤い線に似た傷痕が気になって、リリスは膝の上から下りる。お湯の中で揺らめく傷痕を手で触れながら、ふと……あるモノに気づいた。
かなり元気な状態のソレに、リリスは首をかしげる。12歳の少女はまだ性教育前だった。あと2年もすれば十分な教育を受け、赤面して目を逸らしただろう。しかし彼女は何も知らない。それゆえの無邪気で残酷な疑問が浮かんだ。
――これ、触ったらどうなるだろう?
精神統一しながら、下肢の魔王様を鎮めるルシファーは油断していた。彼を擁護するなら、別のことを考えて気を反らしながら、反応しかけたソレを何とかしようと必死だった。露天風呂の目隠しを兼ねて植樹された木を眺めながら、あの木の種類は何だったかと記憶を辿る。そんな現実逃避中に、現実に引き戻された。
「えっ、ぎゃああああぁぁあ!!」
何かが先端に触れたと思って視線を戻したルシファーは、同性ならば誰もが同情する災難に襲われた。魔王陛下の魔王様を、お姫様は無造作にぎゅっと両手で握った。それもかなり加減なしだ。繊細な部位だと知らないリリスにとって、ルシファーの翼に触れる感覚だった。
お風呂には毎日一緒に入っていたが、こんな状態の魔王様は初めてだった。素直な疑問と好奇心……握ったソレがまた大きくなったことで、驚いてさらに強く握る。
嬉しいのか痛いのか苦しいのか。感情がごちゃまぜで逃げようとするが、ルシファーの芯は握られたまま。逃げられずに、しかしリリスを突き飛ばすことは出来ない。離せと叫ぶのも、心理的に難しい時期だった。
「ルシファー、これ、痛いの?」
「手、はなし……いや。ちがっ……」
そこは離して欲しいのだが、出来るなら離れて行って欲しくない。半泣きで息を整えて、正確に説明しようとした。誤解させたあげく、リリスが姿を消したらと思うと涙が零れそうだ。
「リリス、両手を緩めて、そっと……解放してくれるか?」
言葉を選びに選んで必死に頼む。情けない状態だが、幸いにして露天風呂には2人きりなので問題はない。首をかしげたリリスは、言われた通りに手を緩めた。
ゆるんとお湯の中に逃げたソレを、ルシファーが前かがみで隠す。
「今の、なぁに?」
「……あと4年経ったら分かるから。二度と握ったり掴んだり触ったり見たらダメだぞ」
いつも一緒にお風呂に入るので、接触せず見ないのは難しい。しかしルシファーの必死な様子に、とりあえず頷いた。あとで側近の少女達に聞いてみよう。ルーシアは物知りだから知ってるかも知れない。よい解決方法を思いついたリリスは、ルシファーの泣きそうな顔に「ルシファーは綺麗ね」と囁いて、頬に口付けた。
さすがに今夜は隣で寝られないと懇願するルシファーに、小悪魔リリスは目を潤ませる。断れずにリリスを抱きしめて横になったルシファーは、朝まで自分の髪の本数を数えることで、無事に朝を迎えた。
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