01. 散歩すら自由に出来ないのか★
【口絵】 https://26457.mitemin.net/i584796/
魔の森と呼ばれる樹海を背に、銀龍石で作られた古城が建っている。森が護るように包む城は、『魔王城』と呼ばれていた。人族が住む地から離れた魔王領の奥深く、朝日が昇る気持ちよい朝を引き裂く無粋な声が響き渡った。
「死ね! 魔王!!」
魔術師が最高の炎を練り上げて叩きつける。巨大な炎の塊が飛来し、魔王城の前に立つ黒衣の青年に襲い掛かった。純白の髪とシミひとつない肌に銀の瞳が輝く美貌の青年は、物憂げに左手を振る。
「散歩に出ただけで、オレは攻撃されるのか」
溜め息を吐いた青年の数メートル上で、魔法により生み出された炎は消えた。散るのではなく、まるで存在しなかったように
「非礼にも程がある」
ぼやきながら、「ばかなっ」と定番の言葉を吐く魔術師を指差す。その瞬間、魔術師も消えた。城へ向かい丘になっている草原を、朝日が照らし出す。
遥かかなたへ転送した人族の悲鳴も届かない。無事に森の中で着地できたか、確認してやる必要も感じなかった。礼を欠いた輩に配慮など無用だ。
「……爽やかな朝の空気が台無しだ」
ここ数十年の日課である朝の散歩を切り上げる。むすっとした態度で吐き捨て、ローブを翻したところで、彼は足を止めた。斜め後ろの何もない空間へ声をかける。
「アスタロト、いたなら顔を出せ」
「失礼しました。でも邪魔をしたら怒られますからね」
あなた様の邪魔をする気はなかったのですよ。そう告げる青年は消えた魔術師と対照的に、何もない空間から浮かび上がる。半透明の姿が色を濃くして、足元に影が出来た。
「残りは任せる」
「かしこまりました」
一礼したアスタロトが残忍な笑みを浮かべた。波打つ金の髪を風に
「ルシファー様のお言葉に従い、侵入者を排除しますか」
「ああそうだ。アスタロト、そこらに死体を残すなよ」
「承知しております」
魔王という名称から人族が想像する魔王城とは、殺された人々の
城の北側にある大きな森に溶け込んで、風景としては森の古城だ。おどろおどろしい感じは
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