異世界で蘇ったら龍人になってしまったんだが

ヒラ丸

日常にスパイスを

 今日の昼の講義も怠い。

 1時間近く教授が前で何か喋ってる。別に珍しいことでもなんでもないことだが、それにしたって退屈な授業だ。ふと、隣の席に座っている友人の川谷翔也を横目で見ると、机に突っ伏して爆睡している。周りを確認すると翔也だけではなく、知らない奴も何人か寝ている。いつものことだけど。

 では、周りがそんな状況の中起きている俺は真面目な学生なのか、と言われるとそうでもない。ただ俺は昼飯を食ってから次の講義が始まるまでの間に眠ってしまって、今は目が冴えてしまっている状態なのだ。

 そんな状態でも講義をまともに聞く気は全然なく、友達の翔也は寝てしまっているので話し相手もいないのだ。この講義が終わるまであと30分ほどだ。

  携帯でもいじるか、と思い電源を付ける。とりあえず惰性でやり続けているソシャゲのログインボーナスをもらう。

 おっと、ガチャのイベントをやってる。ネットで評価の高いモンスターの排出確率UPのイベントだった。淡い期待を持ってガチャってみる。星4の何かが出てきた。はいハズレ。星5のアルティメットドラゴンというモンスターが欲しいのにこれじゃ話にならない。

 それから、ダラダラと周回作業をやってると周りが机に出していた筆記用具を片付け始める。どうやら講義は終わったようだ。


「翔也起きろ、終わったぞ」

「……あー終わった?」


 友人の翔也を起こし、帰宅の準備を始める。今日の講義は終わりだ。午前中の1限から今終わった3限まで適当に過ごしてしまった。


「さあ帰ろーぜ、今日も疲れちまったよ」

 

 翔也が欠伸をしながら席を立つ。俺も同意し、共に大学を後にする。帰は途中、翔也と何気ない日常会話をする。翔也の軽いボケに対し、俺が軽くツッコむという、いつもの会話だった。

 毎日こんな感じだが、これでいいのだろうか。最近一週間があっという間に過ぎていくような気もしてきた。別に不満があるわけではない。この場にはいないが、他の翔也以外の友人との交流も普通に行なっている。交友関係は、そこそこ恵まれてはいるのだ。

 ただ、流石に何かしらのスパイスが欲しい。ちょっとしたことでも何かないだろうか。

 ふと、直ぐ右にあった車道に目をやるとサッカーボールが転がっていた。危ないなと思いつつ、目の前の歩道に目を戻す。

 すると、小さな男の子が車道に転がっていたサッカーボールを取るために不注意に車道へ飛び出したのだ。 車道の向こう側からはトラックが向かって来ていた。


「危ない!」


 咄嗟に飛び出し、男の子を突き飛ばす。そこそこ痛かっただろうが轢かれるよりはマシだろう。

 ……しまった。自分のこと、考えてなかった。目の前にトラックがクラクションを鳴らし向かって来ている。そのまま俺はバスに跳ねられてしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る