終末世界の覚醒者
あきのななぐさ
序章 遥かなる戦いの記録
どこか遠くの戦い1
ポタリと落ちたその様は、まるで椿の花のようだった。
何の前触れもなく突然に。
鬼の首が二人の男の前で落ちていた。大きく
遅れて倒れる鬼の体。
その向こう側に、黒い忍び装束の姿があった。顔は頭巾で隠れている。だが、唯一見えるその双眸は、真紅の輝きを放っていた。
「さすがですね!」
「クソ! いい仕事しやがって! 今度は俺様の番だぜ! オラオラ! お前らこっちに来いってんだ!」
その姿を見つけた二人が、それぞれの声をあげていた。若武者があげた感嘆の声とやや遅れた筋肉質な男の声。だが、筋肉質な男の方は、次の行動に移っている。別の鬼を挑発するように、筋肉質の男はそれを蹴り飛ばす。
血だまりの中で、真っ赤に染まった鬼の首を。
「油断しないでください! 術! 準備! 二つ来ます!」
その男達のうしろから、緊張した声が急を告げる。弓をつがえた神主が、連続して矢を放ちながらそう叫んでいた。狙いは詠唱を始めている二体の天狗。放たれた矢は過たず、天狗の体に突き刺さる。たちまち途切れた呪文の詠唱。だが、それは一体の天狗のみだった。
もう一体の天狗からは、まだ流暢な詠唱が続いている。
「痺れ! 行ける?!」
神主の隣にいた
そう、天狗の術を黒装束の男が止めることを。
しかし、そんな期待を寄せられている黒装束の男は、何故か周囲を素早く見渡していた。
すでに男は問いかけられるよりも前から、天狗に狙いを定めていた。だが、何かを感じ取ったのだろう。その動きは途中で止まっていた。
そのまま様子を見る黒装束の男。だが、何かを探り出そうと思ったのだろう。その目を深く瞑り始める。まるで、そのままその場の景色に溶け込むように。
だが、次の瞬間。事態は思わぬ方向に転がっていく。
素早く開いた双眸に、力のこもった光が宿る。それは待ちに待った行動の瞬間だっただろう。
だが、黒装束の男は「無理」とだけ告げて、こつ然とその姿を消していた。
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