僕は春の運び屋なだけで、春が来ないのかもしれません。
@Wisyujinkousaikyou
いい雰囲気の時に女の子に呼び出されても告られるとは限らない。
今日でようやく3年の月日が経った。
俺は今日、ようやくここの高校から卒業する。
3年間、一切女性付き合いもなく、延々と時をこなすような生活をしてきた。
友達付き合いも充実しており、心残りと言えば本当に彼女がいなかったことくらい。
『高校入れば自動的に彼女くらい出来るでしょ』
みたいに考えていた俺は、特になんの努力をするとこなく生活をしてきた。
その結果、一切の幸せは訪れなかった。
というか、そもそも女の子と話すこともなかった。
だから、可愛い女の子がいても実際に話さず、性格なども知らなかったので好きになりようがなかった。
俺は比較的早めに投稿し、教室中を見渡す。
そこには確かな楽しい思い出はあったものの、多少の未練が垣間見れるような気がした。
「はぁ........」
ため息を着くと同時に、クラスのやつがゆっくりとドアを開けてやってくる。
「おぉおぉ、たいそう大きなため息だことぉ。どうしたたっちゃん。やっぱ彼女か?彼女出来なかったことが見れんか?」
「っせーな山内。まぁ、合ってるけどな」
「はっはっは! 気にするな! 人生そのうち運命の人に会えるってもんよ!」
山内はしみじみした空気を吹き飛ばしたいのか、大きな声で笑い倒す。
「け、モテるやつはいいな」
「確かに俺は? イケメンで? モテモテだけど?彼女出来たことないぜ?」
「はぁ、それもおかしな話しよなぁ」
俺は窓の外の登りかけの太陽を見る。
そんな事をしているうち、次第にクラスのメンバーが揃っていく。
「お前らそろってんなー!」
担任がドアから顔だけを出す。
「うぇーい」
俺達は相変わらずの態度で返事をする。
そして、廊下に並ばされ、ちっさな花を胸に付けさせられる。
大混雑の廊下を抜けた先には紅白に彩られた体育館。
『卒業生、入場』
吹奏楽部の迫力のある演奏とともに俺達は足並みを揃え入場する。
席につき、特にやることの無い式をこなす。
「はぁ、座るの疲れたなぁ」
俺は何度も足を組みかえたり、座り直したりを繰り返した。
そして、長い長い時が過ぎ、俺達は教室に戻った。
教室に戻ると、号泣する女子や、涙を隠そうと必死な男子。
「だっぢゃーん! おれぞづぎょうじだぐでーよー!」
「おい、山内。泣くのは構わんが、俺で鼻水をふくな」
俺は山内のおでこを持ち、引き剥がす。
「はぁ........」
なんてため息をつきながら1人教室の角で皆の解散を待っていると、
「たつきくん........?」
こっそりと俺に近づき、話しかけて来た女の子。
「ん? どうした?」
「あ、あのね、ちょっとこっち来て欲しいの........」
突然の事で驚いたが、俺は顔色ひとつ変えずに着いていく。
内心はもちろん期待しまくっていた。
何しろ話しかけてきたのはクラスで人気のマドンナ的存在のアイ。
アイは俺を廊下に連れ出すと、突如振り返り、
「たつきくん! あ、あの言いにくいんだけど........」
俺はもう期待でいっぱいだった。
「ん? なんだ? 言ってみろよ」
「山内君を呼んできてください!」
「........ふぇ?」
俺は一瞬何が何だか分からなかったがとりあえず、返事もせずにずかずかと教室に戻り、
「おいこら山内ちょっと来い」
と言って山内を引っ張り出す。
「たっちゃん? どうしたの?」
俺は一切反応せずにアイの前に突き出した。
「ほれ」
「あ、ありがとう!」
俺は何も言わずにスタスタとその場を去った。
その後、二人はお幸せになったらしい。
こんちくしょうが。
僕は春の運び屋なだけで、春が来ないのかもしれません。 @Wisyujinkousaikyou
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