キウイと円舞

桐谷佑弥


‘This is a fiction’

 文字がたくさんある。虚構で、嘘で、救えないほど空っぽで「物語」にさえなり得ないのかもしれない。

 中身のない話というのなら、内側のものは空気よりも、真空よりも、「なにもない」が好きだ。伝えたいこともない。ただの、高校生だった「僕ら」の誰かには、語れることもそうはない。

 でも、だから、情動や、警句や、意味や名前をつけられた一切合切よりも、もう誰も思い出せなくなった夢の切れ端のほうが、よっぽど綺麗だって、そうかもしれないだろ。

 信じていたいから、それを確かめるためには、無いものに形をあたえるしか方法がなくて。忘れてしまったものも、「僕」にはまだ見えないそれらも、帰れる場所がないんだろうと思うから、もしそれらが人に似ていればきっと名前を欲しがっているのだろうと考えた。それだけ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る