〔特別課捜査班!特子!〕『相棒(パートナー)』編

じんべい

〔特別課捜査班!特子!〕『相棒(パートナー)』編


「ガチャ!」


特子「オッハョウ!ゴッザイマッスル!」


私の名前は『志賀内特子しがないとくこ、警視庁に勤めるエリートアルバイターだ。


カチョー「お前は、朝っぱらから何を訳のわからん挨拶してんだ?」


彼は『敬志壮寛けいしそうかん

いつもあの奥の席でふんぞり返ってる、この班の課長、通称『カチョー』


カチョー「短け~な…。」


そして、いつも窓際に……?あれ?ジミーさんが居ない?」


コウ「ジミーさんなら休みですよ。」


じゃあ『パス』で……。


それから、いつもパソコンばかり叩いてる『望樹太陽のぞきたいよう』通称『めがね』


コウ「そんな呼び方、された事無いですけどね…。」


マイ「特ちゃん、ミルちゃんも休みよ。」


彼女?彼は『マイ』さん、オカマだ。


マイ「え~!?今日の特ちゃん、なんか雑~…!」


特子「とまあ、こんな仲間に囲まれて………、

ジミーさんと、ミルさんが同時に休むなんて、珍しいですね?」


カチョー「お前な~…、ナレーションするか、台詞にするかハッキリしろ!」


特子「いやいや、毎回やってると、ど~でもよくなってきて…へへへ…

それより、ジミーさんとミルさんですよ。」


マイ「特ちゃん知らなかったの?あの2人は、3月25日は必ず休むのよ、3年前からね。」


コウ「確か、ジミーさんの『元』相棒の所に行ってるんですよね。」


特子「ジミーさんの『元』相棒?」


カチョー「そうか…、特子は知らなかったな。

まあ、いいか、お前も『特課』の一員になった事だし、話しておくか…」


特子「知りたい!知りたい!」


カチョー「ジミーとミルが同期だったのは知っているだろ?」


特子「ジミーさんが警察学校を卒業して配属された時、ミルさんも一緒に卒業して配属されたんでしょ?」


コウ「そのままですね…」


カチョー「実はな、その時、もう1人一緒に配属された奴が居たんだ。」


マイ「井妻茶目いずまちゃめ君だったわよね?」


特子「変わった名前ですね?『茶目ちゃめ』さんですか?」


カチョー「ああ、中国系日本人だ。ミルとは配属された課が違ったが、ジミーと一緒に二課に配属され、コンビを組んでいた。

いいコンビだったぜ、井妻が追ってジミーが狩る。そんな感じだった。

でもな…特子、お前も刑事を目指す以上、これだけは肝に命じておけ。

俺達『刑事』は、いつ仲間が居なくなっても不思議じゃないって事をな…。」


特子「仲間が居なくなる……?

そ、それって?つまり…」


カチョー「ああ、そうだ…、4年程前の事だ、ジミーと井妻が追っていたホシが都内に潜伏してるって情報が入ってな、2人で交代で張り込んでいたんだ。

しかし、ジミーが交代に行ったら、井妻の姿はそこには無かった…

そして井妻はそのまま俺達の前から姿を消した…。」


特子「え?も…もしかして…犯人に…?」


カチョー「いきなりだったからな…ジミーも落ち込んでいたよ。

まあ、刑事のあるあるみたいなものだ。仕方がない…」


特子「そ、そんな…」


カチョー「それから1年程経ち、茶目の恋人だと言う女性から連絡があった。見てもらいたい物があるってな…

ジミーとマイは、その女性に会いに行ったんだが、そこに変わり果てた茶目の写真と姿があった…

ミルは真っ青な顔で帰って来たよ…、ジミーは平気を装っていたが、それからだ、ジミーが窓ぎわに立つようになったのは…

その会いに行った日が、今日、3月25日って訳さ。毎年『花』を持って、茶目の所に行っているんだ。」


特子「……ジミーさんに、そんな過去があったなんて……、カチョー!!」


カチョー「な、なんだ特子?いきなり大声出して…?」


特子「私達も行きましょう!」


カチョー「『行きましょう!』って、茶目の所にか?」


特子「そうですよ!ジミーさんやマイさんの仲間なら、私達の仲間じゃないですか!私達も花を持って行きましょうよ!」


カチョー「い、いや…あいつらの水入らずを邪魔するのもな…どうかと…思う…けどな。

仕方がない、コウ…お前、特子について行ってやれ。」


コウ「嫌ですよ。僕には監視カメラを見ないといけないという、立派な仕事が…

マイさん、女性どうし2人で行ってはどうですか?」


マイ「あ、あたしは…女性に見えるけど…お、男だからね…」


特子「あ~!もう!みんなで行きましょう!どうせ今日もやる事無いんでしょ?!」


カチョー「ふぅ~…、仕方ない…顔だけ見せて帰ろう…」



30分後…


カチョー「ここだ…」


特子「へ??ここ?ラーメン屋じゃないですか。

しかもこの店って、3年前にオープンした年に、『全国不味い店ランキング』のベスト3に入り、年々順位を上げているという…

全国の名だたるラーメン通を唸らせた、

『何をどうしたらこの味が出せる…』

『見た目と味のギャップが神憑り的…』

『すべての食材が、すべてを壊している』

『ダシ、麺、具材すべてが、スープというリングで殴りあっている』


その不味さゆえ、癖になる人もいるという、その味を確かめようと、連日行列の絶えない伝説のラーメン屋!その名も『伝説のラーメン屋』!」


コウ「何も思い付かなかったんでしょうね。」


カチョー「特子、丁寧な解説ありがとうな。」


特子「でもカチョー、こんな所に茶目さんの『お墓』があるんですか?」


カチョー「あ?墓だ?何言ってる茶目はまだ生きてるぞ。」


特子「へ?あの話の流れだと、完全に死んでいるじゃないですか!

刑事のあるあるとか、張り込み中に姿を消したとか?」


カチョー「いいか、特子。刑事というのはな、張り込みの途中に飯を食ったり、弁当を買ったりするんだ。

人それぞれお気に入りの店があってだな、そこには必ず看板娘が居るもんなんだ。

通っているうち、恋仲になって、店を継ぐ事になる、必然的に刑事は辞めなくちゃいけなくなる。

茶目もそうだった。行きつけの親父さんが倒れてな、茶目が引き継ぐ事になったんだ。」


特子「『なったんだ。』って!ダメでしょ!張り込み途中にラーメン屋に転職しちゃ!

でも、それじゃ、茶目さんの空白の1年間は?」


カチョー「茶目は料理なんかしたことないからな、犯人が中国に逃亡したていにして追いかけるふりをして、ラーメンの修行をしてたんだ。」


特子「『てい』!って!しかも本場で修行をして、不味い店ランキング1位!?」


カチョー「アハハ…茶目は筋金入りの『バカ舌』だからな。ちなみジミーも、負けず劣らずの『バカ舌』だ。」


特子「バカ舌が店を開いちゃダメでしょ!」


「ガラガラカラ~…」


茶目「すいません、お客さん。今日は貸切りなんでさ~。」


カチョー「そ、そうですか!じゃあ帰りま…」


茶目「あ!敬志課長じゃないですか!

なんだ、来てるなら入って下さいよ!今日は『特課』の貸切りなんですからさ~。」


特子「じゃあ、私はこれで。水入らずで楽しんでください。」


カチョー「お前も来るんだよ。」


ジミー「あ!カチョー。来てくれたんですか?」


カチョー「あ…ああ、まあな。特子がぜひともここのラーメンが食いたいって言うもんでな。」


特子「か!カチョー!!」


カチョー「大丈夫だ、死にはしない。ほら見てみろ、ミルなんか旨そうに食って…

な、何!あ、あいつ!ラーメン屋で野菜を食ってやがる!?しかも生野菜?当店自慢のドレッシングもかけずに…!ニンジンを旨そうにかじって…」


茶目「ミルはベジタリアンになったんだってな。せっかく来てもらったのに、野菜しか出せなくてすまない…」


カチョー「あのヤロウ姑息な手を使いやがって!」


茶目「さて、みんなは何にする?」


コウ「あ!僕、これから人間ドックに行くんで、何も食べちゃいけないんですよ。胃の中を空っぽにしないといけないんで。匂いだけで十分満足です。」


マイ「実はあたしも、ベジタリアンになったんです。ダイエットもしないといけないし、カチョーと、特ちゃんは、大丈夫ですよ。」


特子「あ!みんなずる~い!」


カチョー「じ、じゃあ…俺は、医者に脂っこい物と、塩分の多い物と、味噌的な物は控えろと言われてるから…そ、そうだ!お湯に麺だけでいい!他に何も入れなくていいからな。余計な具材もいらん!お前の打った麺を味わいたい!」


茶目「嬉しいこといってくれるね~!

そこのお嬢ちゃんは?」


特子「じ、じゃあ私は…」


ジミー「おい、茶目、特子はこの中で1番食いっぷりがいいんだ!お前の考えた『3周年記念特別目メニュー』を作ってやってくれ。」


特子「おい!こら!ジミー!!余計な事を…」


茶目「はいよ!お待ち!!」


特子「はや!!!」


茶目「ずは、3種類の『米』をブレンドし、強火で一気に焚き上げた一品!!

朝日が昇るイメージで作り上げた、究極の白飯!その名も『3(サン)ライス』!」


特子「麺は!!????

ラーメン屋でしょ!?しかもちょっと上手い…」


茶目「へへへ、慌てなさんなって、お嬢ちゃん。メインのラーメンはこれからでさあ~」


特子「茶目さんて、江戸っ子?」


カチョー「いや…、島…根だ…」


コウ「カチョー、顔色悪いですよ?大丈夫ですか?」


茶目「へい!お待ち!厳選された5種類のスープのブレンド、そして麺の上には7種類の選りすぐりの具材達、お嬢ちゃんのような若者にもウケるように名前にも英語を入れた、

その名も!『5(ゴー)トゥ、7(ヘブン)」!!


特子「一文字違~う!!殺す気ですよ!カチョー!!この人、私達を殺す気ですよ!!!カチョー!?カチョー??!!」


マイ「ダメだわ、麺をくわえたまま、失神してる…」


ジミー「違うぜ特子、天国に昇天されてしまうほどウマイんだよ。」


特子「お前が言うか~!!ラーメン食って、天国に行きたくね~わ~!!」


コウ「まあまあ、特さん。よく見て下さい、見た目は美味しそうですよ?匂いだって、ほら。」


特子「ん~、本当だ。さすがに3年も作っていれば、イヤでも上手くなるよね。

それじゃ、いただきま~す。ズルズルズル~……!


!?!?くっそマズィィ~~!!!


おしまい


それから、3周年スペシャルメニューのおかげで、さらに行列は長くなった。そしてその行列の中に、特子の姿があったとか、無かったとか…


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