33. 運動学習と対戦格闘ゲーム DASH
さて、先日は運動学習の基礎理論より、
・入門者は、ゆっくりでいいので正確な操作をマスターすべし
・しかし、対戦格闘ゲームは初心者にも、熟練者と同じ時間制限を設定している
・↑初心者がつまずく原因となる
・プログラムで対応しないと、どうしようもない
ということを確認しました。
であれば、プログラムで対応すればいいじゃんよ!
というわけで、【e-Sportsとして対戦格闘ゲームを、幅広く普及させたければ、ぜひゲームシステムに取り入れてほしいこと】と題して、いくつかの改善案を出してみたいと思います。
〇1.コマンド入力の制限時間をプレイヤーが設定できるようにする
前編でも触れましたが、【21/60秒以内に波動拳コマンドを成立させなければいけない】といった操作の制限時間を、プレイヤーの技量を問わずに一律に課すのは、初心者にとってはやさしくありません。
一方で、熟練者にとっては、コマンドの成立時間を長くとりすぎると、必殺技の暴発の原因ともなりそう。
そこで、ゲームのいわゆるオプション画面で、入力の受け付け時間の長短をユーザの任意で設定できるようにしたらどうでしょうか?
熟練者用の設定であれば、21/60秒以内でこなさなければなりませんが、初心者ならば入力に1秒~2秒かかってもいいようなイメージです。(※1)(※2)
あるいは、オンライン対戦などで、この設定で有利不利が出るようであれば。
対戦に限っては、ルームのホスト側が、入力制限時間の変更を無効化できるようにする――といったフォローが必要かもしれません。
〇2.ゲームの進行スピードを任意に変えられるようにする
かつて、90年代後半にカプコンが発売した対戦格闘ゲームで、搭載されていたシステムですが、【ゲームスピードを、3段階から選べるようにする】といったサービスを復活させてもいいかもしれません。
初心者は、ゆっくりめのスピード1で練習を。
熟練者は、最速のスピード3でエキサイティングな対戦を。
といった寸法です。
こちらも、オンライン対戦などで、有利不利が出るようであれば。
対戦に限っては、ルームのホスト側か挑戦者がゲーム速度が選べるように――という、ルールを規定しておくと混乱がないでしょう。
〇3.ゲーム初起動時の一括設定
こちらは1、2番のアイデアの補足。
また、家庭用ゲーム前提のアイデアですが。
初心者に、オプション画面で設定してもらうとしても、そのオプション画面の操作そのものに慣れておらず、困難がつきまとうかもしれません。
そこで、ゲーム初起動時に限って、最初に、【初心者向けの設定にするか?】を問う選択肢を表示したらよいでしょう。YESを選んだユーザーに対しては、1・2番に提示した初心者向けの設定を一律に自動で行います。(※3)
〇4.チュートリアルでの工夫
昨今の対戦格闘ゲームでは、新規ユーザーの取り込みのために多彩なチュートリアル――練習機能が、用意されていることも珍しくありません。
しかし、初回で主に触れてきた通り、いくらトレーニングできても、
【熟練者と同じ時間軸(制限時間)での操作を求められる】
ようであれば、練習の効率は半減。
そこで、チュートリアルに限って、特殊な機能を用意してもいいのではないでしょうか。
たとえば、必殺技の波動拳コマンド(↓\→ + パンチボタン)を練習する場合。
1:ユーザーが【↓】に入力する
2:次の入力があるまでゲーム画面がストップ(つまり時間無制限で待つ)
3:ユーザーが【\】に入力する
4:次の入力があるまでゲーム画面がストップ(つまり時間無制限で待つ)
5:ユーザーが【→】に入力する
6:次の入力があるまでゲーム画面がストップ(つまり時間無制限で待つ)
7:ユーザーが【パンチボタン】を入力する
8:ここまで正確に入力出来たらサクセス! 必殺技が出る
という具合に、とにかくどんなにゆっくりでもいいので、正確なコマンドの入力を求めます。それに成功すれば、今度はゆるい制限時間を設定。
少しずつ、従来の対戦環境での操作に近づけていきます……。
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以上、4つほどプログラムで対応できるアイデアを提示してみました。
ここまで、初心者に至れり尽くせりだと、甘やかしすぎでしょうか?
いやいや、でも、誰にでも愛されるe-Sportsとしての発展を目指す。
あるいは、今からゲームを始める若者に、はやく上級者とも戦える強敵に成長してもらうには、これくらいの工夫が必要かも。
ビデオゲームだと、プログラム側で意図として対応しないとこういう細やかな気遣いができません。今回は、対戦格闘ゲームを例に挙げましたが、e-Sports全体がメジャーになるために、他のジャンルでも考慮に値するでしょう。
たとえば、対戦パズルゲームの【ぷよぷよ】。
落ちものパズルの大定番ですが常勝するには、いわゆる『連鎖』と呼ばれるテクニックの習得が不可欠。
しかし、このゲームでも判断に制限時間が設けられる(判断に迷うと、適した位置にぷよぷよを誘導できない)ため、ユーザーの腕が大きく問われます。
そこで、私が初心者にお勧めしたい『連鎖』の練習方法が、カードゲームのトランプを用いた疑似ぷよぷよです。
ぷよぷよといえば、赤・青・黄・緑といった同じ色のぷよぷよを繋げていくゲームですが、トランプの、ハート・スペード・ダイヤ・クローバーをこれらの4色と同じと見なします。
そして、トランプの山を伏せて置き、上から2枚ずつ札を引く。
カードをぷよぷよと見立てて配置したら、新しくまた山の上から2枚を引く。
こうすることで、制限時間なしに思う存分、どこにぷよぷよ(の代わりの引いたトランプ)を置けばいいか長考することができます。(※4)
ぷよぷよのゲーム本体で、対応するとすれば――決定ボタンを押さない、新しいぷよぷよが限り降ってこないようにするとか。
従来は自動という名の強制でぷよぷよが降ってくるわけですが、それをユーザーの任意のタイミングで動き出すようにする。
とすれば、やはり時間無制限の長考が実現できることでしょう。
(もちろんトレーニングモード限定の仕様となると思いますが……)
最後に余談。
私はコンピューターを介した麻雀は楽しめますが、対人の麻雀は苦手です。
コンピューターだと、鳴けるタイミングで鳴くかどうかを問うてくれる。考える時間を取ってくれますが、対人戦だとどんどん対局が進行してしまい、手を挙げる間もなく機会を逸してしまうからです。(※5)
油断すると、ロンもしそこないます。(※6)
なので繰り返しになりますが、私は対人麻雀がものすっごく苦手です。
これもまた熟練者と同じ時間軸での対局を強要されるが故の、初心者を排してしまう一例といえそうですね。
(※1)
受付時間を最長すると、通常の3~4倍の入力時間が用意されるとか。
(※2)
e-Spotrtsの主体は自宅でのオンライン対戦です。ゲームセンターでは一台の機器を強要するから難しいけど。家庭用のゲームであれば、ユーザーごとにオプション画面で、自分好みにゲームをチューンナップしてもらうのが良いのでは?
という、発想です。
(※3)
2番目のアイデアの場合、初心者に対しては最初のカーソル表示位置を「スピード1」に。
熟練者に対しては最初のカーソル表示位置を「スピード3」に。
とすることで、操作の利便性を上げます。
(※4)
私の考案ではなく、もともとはぷよぷよの普及に貢献した、マイコンBASICマガジンという雑誌に紹介されていた練習方法。
(※5) 鳴く
ポンとかチーとかカン。対戦相手が捨てた配を自分のものにすること。捨てられたらすぐに宣言しないと適応されない。
(※6) ロン
対戦相手が捨てた配を使って、あがる(勝つ)こと。
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