#2 シケン
〜時は遡り、約1年前〜
「ようやく勇者試験か...長かった」
日光を浴びながら俺は呟いた。勇者試験とは、職業[勇者]になるべく、全国で開催される任用試験のことである。
「この日のためにおれは...おれは...」
泣き崩れそうになりながら今までの苦労を振り返る。血の滲む鍛錬の日々、頭がはち切れそうになるほど痛くなるまでした魔法の特訓。
「師匠、今までお世話になりました...」
涙を振り払い、会場[ギルド]に続く階段の一歩目を踏み出す。
「俺の勇者物語は、ここからだ!」
そう宣言し、通る人々が注目する中、俺は申し込み用紙を手にした。
「はい、個人情報登録は以上です。実技試験会場にお進みください」
ギルドのお姉さんに導かれ、奥にある魔法力測定器の方へ向かう。測定器に近づくと見知らぬ男性(数人)が話しかけてきた。
「おいおい少年、お前まさかここにいるってことは勇者になるってことか?やめとけやめとけ、お前みたいなガキンチョがやっていける職業じゃねーって!」
「そうそう、勇者ってのは俺たちみたいに、ほっ、ほっ、強いやつじゃなきゃーな!」
ボディービルを見せつけながら男達は語る。相当の自信があるのだろう。
「次、秋間 彩雲さん、どうぞ」
係員に従い、魔法測定器の近くに行く。後ろでは先ほどの男達がクスクスニチャニチャ笑いながら見ていた。
「どんな魔法でも構いません。7割程度の力で測定器にぶつけてください」
「はーい」
俺は手をかざし、得意の炎系の魔法を唱えた。
手から出た豪炎は魔法測定器を包み轟音を伴いながら爆発させた。
「あ、あ...」
「これで、いいですか?」
「「「え...」」」
係員や男達どころか会場全体がこちらを見て口を開け、目を開かせていた。
「(き、気持ちぃぃいぃ!!!)」
その日の試験で彩雲は体術、魔法力、知恵の全てで歴代記録を大幅に更新した。
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