クランチ文体

「お前、本当に歩くの遅いよな」

 つっかるような言葉を発したのは兎。

 白い毛ホワイト・ヘアー/つぶらな赤目レッド・アイ/ピクピクと動く長い耳/むっちりとした肉づきの良い長い後ろ脚。

「そんなことないよ」

 答えたのは亀。平たい暗緑色ビリジアンの甲羅/短い四肢/小さい頭。

「あるって」

「じゃあ、競争とかしてみる?」

「おけ」

 ヨーイ、スタート!

 兎=跳躍ちょうやく疾走しっそう/突進/疾駆/風のごとく。

 亀=歩く+歩く+歩く+歩く+歩く+歩く。しかし、兎に大きく引き離される。


――1時間後。

 兎=途中の丘の上で振り向いてみる。

「マジ? 見えないんだけど」

 携帯で猿に連絡してみる。

「もし? 亀って今どのへん? あ、そんな後ろなんだー。え? この前の合コン? 知らないし。それ、犬に言ってよー。え? 幹事はキジ? あー、じゃそゆことで」

 通話=オフ。闘争スイッチも連動してオフに。

「ちょっと休んじゃおっかなー」と、道端にゴロンと横になる。居眠り。休憩。つかの間――のつもり。


――2時間後。

「やべ」

 目覚め、飛び起きた兎の視界に飛び込んできたもの=ゴール地点にて喜ぶ、競争相手ライバルの姿。

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