世界 ワールド
雨世界
1 第一章 ……僕は、ずっと君を探している。
世界 ワールド
登場人物
写真の彼女 緋が探している女性
プロローグ
過去。それはすでに失われたもの。
本編
第一章
……僕は、ずっと君を探している。
「お客さん。どこから来たの?」髪をポニーテールにしている少女はそんなことを男に聞いた。
「ずっと北のほう」男はタバコに古いオイルライターで火をつけながらそう答える。
「うわ! お客さん、タバコなんて持ってるの? すごくない?」と少女はその光景を見て目を丸くする。
「吸う?」男が言う。
「うん、吸う吸う!」
そう言って少女は男の腕の中に再び飛び込んでいった。すると自然と、少女の未成熟な胸の膨らみが細身の男の胸元に遠慮なく押し付けられる。ただそれだけで、男には少女の胸の出っ張りがどこにあるのか理解できた。なぜなら二人はどちらも衣服というものを一切身にまとっていなかったからだ。
場所は古いホテルの一室。その小さなおんぼろベットの中の出来事。
男はタバコを一本、少女に渡した。
少女はそれを口で受け取る。
男は少女のタバコにオイルライターで火をつけた。
すると少女は美味しそうに煙を吸い込み、肺を通した紫煙を空気中に高く、まるで機関車のように吹き出した。それから少女はにっこりと笑って、痩せた男の胸の上に頭を乗せる。
「ふふふ。今日はついてたな、私。お客さんみたいな上客と巡り会えるなんてすっごいついてるよ。いつもはこんなに稼ぐことなんて全然できないんだよ。客引きって言ってもさ、肉体労働なわけだからね。腰は痛くなるし、口は疲れるし、お客さんは冷たいしさ、嫌んなるよ。おまけに受け取る代金も安いしね」
少女の値段は三万円だった。
しかしその値段が果たして少女の言う通り安いのか、それともこれくらいが適正の価格なのか、この街にやってきたばかりのその男には判断ができなかった。
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