序章【塔を登れ、真理を求めるならば】

 広々とした大地に、それは鎮座していた。

 晴れ渡った蒼穹を貫かんばかりに伸びる、白い巨大な塔。石とも土とも呼べない不思議な素材で作られたその白亜の巨塔は、見上げてもその先が見えないほどに高い。


「不思議なことが起きたんだ」


 誰かが言った。

 その白亜の巨塔が伸びてから、空から落ちてくる怪物が姿を消した。

 それは朝も昼も夜も関係なく降り注ぎ、人類から地上を奪った張本人――天魔てんま

 塔の出現と同時に姿を消した天魔に、世界は異様な気配を感じ取っていた。嵐の前の静けさとはまさにこのことだとばかりに。


「あの塔が、天魔になにか関係があるのかもしれない」


 その保証はどこにもない。

 しかし、あの塔が天魔に関係していないという考えも否定できない。あれの出現と同時に天魔は地上から消え去ったが、平和が訪れたとは言い難いのだ。


「フルール大陸に散らばった協力者たちを集めよう」


 あの塔が天魔に関係しているならば、それを解き明かして終止符を打とう。

 ついに最後の戦いの幕が上がるのだ。


「さあ、勝鬨を上げようか」


 陽光に照らされる白亜の塔を見上げ、アルカディア奪還軍最高総司令官である青年が言う。

 人類による徹底抗戦は、終わりに近づいていた。

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