終章【虚ろなる君に再会を】
「ゥオーイ、馬鹿弟子ィ」
廃都市の激闘から二日が経過した。
【
それは、大衆食堂でカードゲームに興じていたユフィーリアたちにもしっかりと聞こえていた。大衆食堂に顔を見せた
「よう、馬鹿弟子ィ。元気そうだなィ」
「げェ、師匠……修行はやらねえぞ。俺は今、休暇を満喫してんだよ」
褐色肌の男――師匠であるアルベルド・ソニックバーンズに、ユフィーリアは言う。
アルベルドは「ああン?」と眉根を寄せ、
「修行を
「あ、ダウト。ハーゲン山札持ってけ」
「オメェ話を無視するんじゃねェ!!」
アルベルドの説教に、ユフィーリアはうんざりした表情を見せる。いきなりやってきて説教とか、そういうのは勘弁してほしい。
ところが、アルベルドは「そうじゃねェや」と首を横に振った。説教が目的ではないらしい。
「最高総司令官はいるかィ? あのやたら
「グローリアか? あいつなら執務室で悲鳴を上げてる頃合いだと思うけど」
「ついに発狂したんかィ?」
「仕事人間から仕事を奪えば、そりゃ発狂もしたくなるだろうよ」
つい一〇分前に「ゔぁあああああ!!」という悲鳴が二階から聞こえてきたので、そろそろ彼の精神状態が心配になってくる。
アルベルドは奪還軍の全員に三日間の休暇が与えられたことを知らないので首を傾げていたが、グローリアがいるなら別にどうでもいいようだ。「そうかィ」などと頷いて、二階に向かおうとする。
「アルベルド・ソニックバーンズ。何故イーストエンド司令官に用事が?」
「いやなァ、外をうろついていたら白い兄ちゃんを見かけてなァ。どうやら記憶もまっさらだしよィ、とりあえずこの大衆食堂の給仕で雇えねえか交渉しにきたんでィ」
そう言うと、アルベルドは「あれよィ」と大衆食堂の入り口を示す。
そこには、全身から色が抜け落ちたような白い男が立っていた。物珍しそうに大衆食堂の内装を見渡しているが、ユフィーリアたちの視線に気づいて不思議そうに首を傾げる。
白い髪に
「リヒト……!!」
椅子を弾き飛ばして立ち上がったユフィーリアだが、男はその名前が分からないようだった。
「それは、自分の名前でありますか?」
「…………」
記憶がまっさらな状態だと、アルベルドは言っていた。
廃都市で共に戦った、あの白い人形はもういないのだ。
「おう、それがお前の名前だよ――リヒト」
「なるほど、承知した」
うむ、と頷く白い男は、
「……何故か、懐かしい響きの名前であります」
眉一つ動かなかった無表情を僅かに崩して、微笑んだ。
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