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紫斬武

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三年前、僕の母親が再婚をした。僕の父親は幼い頃に亡くなって、僕を一人で育ててくれた母が再婚して幸せになるのは僕としてはとても嬉しい。


義理の父親になった相手はとても良い人で優しい人だ、こんな良い人が父親になってくれた事に僕も嬉しくて幸せで。


そして、僕の父親になってくれた人には娘が二人いて。僕に義理の妹、義理の姉も出来た事に良い家族になれるかなって、そう思っていたんだけど……。


「おーにーいーちゃんっ、ねーねー、美海みうに勉強教えてぇ。部屋に行こう?良いでしょ?」


僕の右腕に腕を絡ませたのは、三年前から義理の妹になった、木更津美海きさらづみう。家族の贔屓目で見ても、可愛い子だと思う。


妹キャラという世間一般が考えそうな雰囲気は、美海ちゃんにあるんじゃないかと思った。ツインテールに、胸は……うん、小さめ。自分の事は名前で呼び、甘えるのは上手だ。


「美海、先に約束したのは私なのよ。前に美海のお願いを聞いたんだから、次は私でしょ、ね?貴史たかしくん」


僕の左腕に腕を絡ませるのは、義理の姉である木更津愛結きさらづあゆ。家族の贔屓目で見ても、綺麗な人だと思う。


お姉さんキャラという世間一般が考えそうな雰囲気は、愛結さんにあるんじゃないかと思う。長い髪を揺らし、ついでに胸も……揺らす巨乳。落ち着いた大人の雰囲気だ。


そして僕、二人の間に挟まれている僕の名前は木更津貴史で高校二年生。至って普通な、どこにでもいるような男子、周りからは可愛い男子と言われてるけど、僕としては格好良いが嬉しい。


高校一年生の美海ちゃん、高校二年生の僕、高校三年生の愛結さん。出会った頃から美海ちゃんに甘えられ、出会った頃から愛結さんに可愛がられた。


自意識過剰ではなく、僕はこの三年間この二人に尋常じゃない好意を抱かれていると思う。


例えば、僕が好きだなぁって言った子がいたとしたら、普段は僕を取り合ってる二人はタッグを組み、僕に近付けさせない為にありとあらゆる方法で排除する……らしい。


実際された事は無かったが、二人からそういった類いの話を散々聞かされた。


学校でも、うん、名物みたいになっているようだった。木更津姉妹の愛されマスコット…、これが僕の渾名だ。


ある意味有名な僕、好きになった子がいて二人にバレないように告白した事がある。まあ、断られたけれど。断られた理由が好きじゃないや、好きな人がいるなら諦めがついたんだけれど……、


「貴史くん、ごめんね?私…木更津さん姉妹が怖いから!」


断られた理由の言葉を思い出し、僕は肩を落とす。それを見た両隣の二人が心配そうに覗き込む。


この二人が居る限り、僕は好きな人と結ばれないんじゃないかって本気で思う。どうにか二人には、僕以外の誰かに興味を抱いて欲しいと切に願う。


二人を形成した性格は、誰に似たんだろうと考えて、それは直ぐに解る事となる。


三年、義理の妹と姉ができ、そして義理の父親も出来て三年目。


「ず、狡いぞぅ!パパも貴史くんとイチャイチャしたい!仕事でいつも構えないパパが優先だぞ!」


僕の背後から抱き着くのは、三年前から義理の父親になった木更津渉きさらづわたるさん。家族の贔屓目から見ても、格好良い人だと思う。


お兄さんキャラという世間一般が考えそうな雰囲気は、渉さん、いや父さんにあるんじゃないかと思う。見た目が若々しく、子供がいるようには見えない雰囲気で、結構ガッシリとした体つき、そして母さんに良く似た顔の僕をかなり溺愛はしていた。


義理の妹と姉……、この二人だけじゃなく、僕は義理の父親にも、尋常じゃない好意を抱かれている。


右腕に美海ちゃん、左腕に愛結さん、背後に義理の父さん。


三年目、未だにこの構図は続くらしい。

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