27歳アラサー女ですが、小学生を口説いてます
谷口
第1話 私には玉の輿しかないんです
如月♥うさぎ『ユウキ君、おはよっ! これから学校?』
ユウキ『はい。学校に行く前に、少し狩りをしておこうかなと思いまして』
如月♥うさぎ『そうなんだ! この時間、狩場が空いてていいよね♪ 私も仕事前にちょっと狩りしようかな~。ついていってもいい?』
ユウキ『いいですよ』
カタカタカタ。
「はぁ、はぁ…。よし、今のは我ながら自然な流れだった。これで30分はチャットできる…」
画面上で繰り広げられるポップな会話(死語)とは裏腹に、薄暗いアパートの一室でパソコンにかじりつく黒髪ロングヘアの不気味な女がひとり。
私だ。
私の名は川上 京子(かわかみ きょうこ)
年齢27歳。職業フリーター。専門学校卒で、職歴は半年。彼氏いない歴=年齢。
詳細な自己紹介なんて要らない。これだけ聞けば「仕事もせず、結婚もできず、いい年こいてバイトしてる崖っぷちの女」と誰もが口を揃えて言うだろう。
実際のところ、そうだ。私は社会に適合できず、かといって人見知り故に恋愛もできず、やり慣れたファーストフード店でのバイトをしているうちに、あれよあれよと27歳になってしまった人間である。
そんな一刻も早く婚活(あるいは就活)をしないとヤバイ私が何をやっているのか?
玉の輿である。
玉の輿を狙っているのである。
いま私がやってるネトゲ『ワールディアファンタジー』は、正直いって過疎気味のネトゲだ。これに関しては、さして語る事もない。基本無料ゲームだったので、私もサービス終了まで暇つぶしに始めただけの事だ。
しかし、そんな過疎ゲーで、私は運命的な出会いをした。
東大医学部のユウキ君である。いま、画面上で私とチャットしてる彼のことだ。
彼との出会いは、本当に少女漫画のような出会いだった。私がゲームを始めたばかりの頃、右も左も分からず、高レベルの森に無防備に入ってしまい魔物に襲われた所を、彼が救ってくれたのだ。
ユウキ『大丈夫ですか?』
ユウキ『危ないから街まで送りますよ』
その時、私は画面越しにイケメンを見た。彼はイケメンに違いない。ネトゲだろうと関係ない。こんな紳士的な振る舞いが出来るのはイケメン以外にありえない。
もちろん写真を交換したとか、ネットストーキングしてSNS特定して顔を見たとか、そういう確証は一切ない。でもイケメンだと思う。なぜなら、彼のプロフィールには、こう書かれていたのだ。
『プロフィール:学生。東大医学部』
東大医学部のイケメン……。
私の平らな胸に稲妻が走った。
「この人が、私の王子様だ!」(パソコン画面を掴んでリアルに叫んだ)
それからはもう、バイトの時間以外を全てネトゲに注ぎ、ユウキ君と仲良くなってオフで会って婚約すべくコミュニケーションを図った。
~コミュニケーションの一例~
如月♥うさぎ『ユウキ君って優しいよね。私、優しい人が好きなんだ!』
如月♥うさぎ『あ、深い意味はないよっ!(照)ただ、優しい旦那さんと家族を作るのが、私の小さい頃からの夢だったんだぁ…叶うといいなぁ…』
如月♥うさぎ『ユウキ君、偶然だね! 私もいまログインした所なんだ~。なんか嬉しいね、こういうのっ♪』
如月♥うさぎ『ユウキくんっ。えへへ、呼んでみただけ♪』
如月♥うさぎ『私の身体の悩み、聞いてくれる? 実はね、胸が大きくて、男子からの視線が怖いの…ちなみにFカップなんだ…くすん』
如月♥うさぎ『私、18歳なんだけど、若いってだけで色んな男の人が話しかけてくるの…でも、私が気を許してる男の子は、ユウキ君だけなの…あ、いまの内緒だったのに喋っちゃった。忘れてっ!じゃあね!』
~~
「完っ璧! うさぎちゃん、誰がどう見ても可愛い&エロい姫キャラ! 私、オンラインならいくらでも可愛くなれる! 私すごい! これは、隠された才能だー!」
リアルだと、まともに男性と話せない人見知りアラサー女の私でも、オンラインでは可愛くなれる。若くもなれる。Fカップにもなれる(リアルではAカップ)。
若干の嘘は混じっているが、問題ない。恋は盲目と言うじゃないか。いざリアルで会ったら、ちょっとくらいの誤差があっても男の子は気にしないものだ。特に、ユウキ君は紳士でうぶな東大生だし、絶対にいける。
わっはっは。私はもう無敵だ。恥じらい? 恥じらいなどで玉の輿が勤まるものか!
そんな涙ぐましい努力を続けること2ヶ月。そろそろ、頃合いである。
「やるか……次のステップ。フレンド登録の申請……っ!」
マウスを掴む手に力が入る。ここが正念場だ。頑張れ、私。いま勇気を出さないと、千載一遇の好機を逃す。
ここで王子様をしっかり掴んで、私はシンデレラになるんだ……!
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