ギリワン・ボンバーマン現る

 今、わしの目の前には仕官を希望する者が2名いる。

 その2名は兄弟らしく、畿内に放っていた忍衆が勧誘してきたそうだ。

 兄の名は松永弾正久秀、弟は松永甚助長頼と言うらしい。

 松永弾正と言えば、日本史好きには有名な人物である。

 某ゲームで義理値が1だから『ギリワン』だとか、爆死したから『ボンバーマン』などと呼ばれている。

 21世紀では、それは後世に脚色された虚像だと言われいたな。

 実際は、忠誠心厚く、優秀で教養人だったとか。

 目の前の二人を見ると、顔はウチの養祖父や養父に近い極道顔をしているので、顔付きが悪いのもあって、悪人にされ易かったのではなかろうか?


 「よう来てくれたな。松永と言ったか?

 本当に当家に仕官するつもりか?」


 取り敢えず、松永弾正に本当に仕官するつもりなか聞いてみる。


 「左様にござりまする。西村様にお仕えしたいと思いやって参りました。」


 松永弾正は本気で仕官するつもりの様だ。


 「そうか。何故、当家に仕えようと思ったのだ?」


 「某たちに声を掛けていただいた方の話では、西村様は文官を御求めになられているとのことでした。

 当世、領主の方々は、武辺者を御求めの中、文官を御求めとは珍しいことにございます。

 また、家宰の黒田様は牢人の身から、文官として、西村様の筆頭重臣になられたと伺っております。

 某は畿内の様々な武家に右筆として仕えましたが、摂津国五百住の土豪出身のため、待遇も余り良くなく、出世の機会もございませんでした。

 黒田様が御出世されたお話を聞き、西村様の下でなら、某も文官として、出身に関係なく評価していただけるものと思い、仕官を願いましてございます」


 松永弾正は、能力はあるが、摂津の土豪出身と言うことで評価されなかったことを不満に思い、各家を転々としていた様だ。

 確かに、当家は身分に関係無く、実力重視だしな。

 乱波でも、当家では評価されるから重臣として扱ってるしね。

 まだ、教養とかそこまで高くない様に見えるから、三好長慶に仕官するまでに、転々としながら教養を身に付けていたんだろう。


 「弟の甚助とやらも、当家に仕えるつもりと言うことで良いのか?」


 取り敢えず、弟の甚助の意思も確認してみる。


 「左様にござりまする。

 今まで、ずっと辛い時も楽しい時も兄と一緒でございました。

 なので、兄と一緒に西村様にお仕えしたいと思っております」


 松永甚助は兄と一緒に仕えたいらしい。


 「左様か。甚助も文官として仕えたいのか?」


 「いえ、某は兄と違いまして、文官よりは武者働きを致したく思います」


 予想通り、弟の甚助は武官として仕えることを希望する様だ。


 「分かった。其方たちを召し抱えようぞ。

 松永弾正は当面は、黒田下野守の下で働き、指示を仰ぐ様に。

 松永甚助は常備軍に入り、まずは軍の教えを受けよ。

 当家は実力があれば、仕事を任せ、出世させる故、其方たちも精進し、職務に励むが良い」


 わしは、松永兄弟を召し抱えることにした。


 松永弾正の文官として、行政、外交、建築等の能力は非常に高く、捨てがたいからな。

 松永甚助も武官として優秀で、三好に仕えた当初は、兄より先に出世していたそうだ。

 松永弾正は黒田下野守の下で働いてもらい、能力を発揮出来れば、どんどん出世させて、こき使えるだろう。

 松永甚助は常備軍に入ってもらい、何れは指揮官として活躍してもらいたい。

 三好長慶には悪い気がするが、松永兄弟は、わしが貰うことにした。

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