第35話 復活のT


 ★★★★★★テル目線


 なんだろ、頭痛い。


 体が動かない……。


 ベルちゃん……。


 あの青髪の女、多分仕留め損ねたよね。

 感触が人間じゃなかった気がする。


 私はゆっくりと目を開け、あたりの風景を確認しようとするが、蛍光灯の光が目に差し込んで目が焦げるような感覚に陥り、自然と涙が止まらなくなる。

 永らく開かれていなかったのか、なかなか視点が合わない。


「お、おい! 大丈夫かよテルさん!!」


 誰かが私の手を握ってて、ヌルヌルと汗まみれで気持ち悪い。

 ずっと握られていたのかな?


「う、うん。大丈夫だよ……」


 脳に鉛を入れられたのか、持ち上がりにくい頭をあげようと腹筋に力を入れた。

 すると、何かが私の体に乗りかかってきて急に苦しくなる。

 力強く押された私の体は、何か温かいものに包まれる。

 長い赤髪のツインテールに絡まるのは、少年の汗にまみれた腕だった。


「一生、起きないのかと思った……!!」


 私の体が揺れて、少年に体を抱き寄せられていたのだ。

 オレンジ色のパーカーの少年は、震えているのか、おっぱいの先に振動が伝わる。


「だ、大丈夫だよ、リュート君。私は、あの女を仕留めるために暴走しちゃっただけだし、私が悪いんだからね?」


 両手を少年の肩に回し、ギュッと抱きしめる。

 力強く、力強く。

 胸が大きすぎて彼の心臓の鼓動が伝わらない、だからさらに強く、力強く抱きしめる。


 すると、少年はどうやら引き剥がそうと反対の力を働かせる。


 ようやく良いところだったのに。

 このままベッドインして良いんだよ?


 私は少し期待を裏切られて残念がる顔を見せるために彼の顔を覗き込もうとすると、彼は焦ったような声を上げる。


「え、えっと、俺、リュートじゃないんだけど……な」


 オレンジ色のパーカーの似合う1人の少年が、顔を真っ赤にして頭を掻いていた。


 私は少年を眺め、やっと合いだす目のピントを調節しながら少年を見る。


「……どちら様ですか?」


 私はにこりと笑うと、首をかしげる。


「え! それは酷いだろ、テルさん!」


 立ち上がった男の子は、まるでコントかの様な仕草を見せる。


「俺だよ、四谷よつや瑛太えいた! エータって呼んでくれてたじゃん!」


「……?」


 私は頭に人差し指を持って行き、くるくるくるくると回転させる。

 スマホでよく見る思考中の真似のように。


「あ! 思い出したよ、エータだね! 私を褒めちぎってくれた人だ! あはっ! エータだぁ!」


 ピコン! と頭の上にチェックマークが付く。


「てか、俺のこと、褒めちぎってくれる人って覚えられてるのか。あははぁ……」


「ねぇ、エータ! リュートはどこにいるの?」


「えっと、そうだなぁ……。多分、もう学校にいないんじゃないか? テルさんが倒れた後、なんやかんやあって授業に来なかったし……」

 

「は?」


 私は、『なんやかんや』という単語にピクリと反応する。


「ねぇ、エータ。なんやかんやって何があったの? 私が寝てる間に他の女でも現れたの、ねぇ答えてよエータ」


 私は急に不安になって、目を大きく開いてエータを凝視する。


「お、ううぅん……。俺もわかんねぇよそんなの。でも、俺が最後に見たのはリュートが江夏さんに謝罪してた時だったかな。それから授業に来てねぇな」


 ……なるほど、つまりリュート君はカノンにたぶらかされてどこか知らないところでエッチなことしてる、って事だね。

 なるほどぉ……。

 許せない。


「ねぇ、エータ。カノンはどこに行ったか知ってる?」


「追うのか?! いや、待て待て、起きたばっかりで走るのは良くないって! ほら、保健室の先生に言ってから出なきゃダメだって! 先生が帰ってきてからで良いだろ?」


「ダメ! あの女、やっぱりどこかでリュート君とセックスしてるんだわ! 早く、早くあの女を始末しないと!」


「セック……ぇえ!! 今してるの?! え、始末!? えぇ、何?! どういう事だよテルさん!」


 私は悲鳴をあげる膝を布団から出して、ベッドから飛び出そうとする。


「待てよ、本当にダメだって!」


「やだ! 私は、リュート君を助けるんだ! やだやだやだやだ! 絶対に行くもん!」


 そして、ベッドから飛び跳ねると、瞬間、膝が折れる。

 立ち上がれないほど多くの魔力を消費していたのから体が言うことを聞かない!


「きゃあっ!!」


 重量に引っ張られるフランス人形の様な私。

 その姿を見た途端、エータの体が動く!


「テルさん!!」


 エータは、ベッドから落ちて行く私の体をすくおうと体を前にやる!


 ばたぁん!!!!!!


 音を出して倒れるエータ。

 しかし、どうやら私はベッドから落ちることを防いでくれた様だ。

 だけどどうすれば良いんだろう、この状況!


「ひゃ、ひゃぁん……!」


 エータの手が、私の体にめり込む。

 正確に言えば、私のおっきなおっぱいにエータの手が突っ込んでいるのだ!

 完全に二本の腕が私の胸を押さえている!


「て、テルさん……!」


「エータぁ……! プルプル震えないで、動かないで……!」


「でも、テルさん重いよ……! 手が攣りそう!」


 やっ、だめ!

 そんなに激しく擦ったらビンビンになっちゃうって!

 あぁ……あぁっ!

 気持ちいいよぉ……!!


 つづく。

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