第29話 カメラの中身
「
「知るかよ! 写真をこれ以上撮られるのはマズイだろうがよ!」
「この格好の方がマズイです! 早く下ろしてください!」
もがぁー!
女の子はジタバタすると、俺の限界に近い腕がプチプチと音を立て出す!
こっちはアンタをお姫様抱っこしてやってんだ!
ジタバタしたら危ないってことがわかんないのかよ!
「あだだだ!! わかった! 下ろす下ろす!」
俺は誰もいないことを確認すると、緑髪の女の子をその場に下ろす。
「あり得ないですよ、
ぷんすか! ぷんすか!
女の子は頬を膨らませて漫画のような顔で怒る。
今時、そんなあざとい怒り方する奴なんてどこ探してもいな……テルぐらいだ。
「さぁ、なんでもいいけど、カメラはもらった。データは消させてもらうからな」
俺はポケットからカメラを取り出すと、電源をつける。
「あぁ! 待ってください! 消します! 消しますから! 返してくださぁ〜い!」
女の子はカメラめがけて突っ込んでくるが、背の高い俺はその女の子の手が届かないくらいまで上にあげながら操作するのは容易だ。
「はーい、消しますねー」
「待ってください! 画像フォルダは絶対に見ないでください!」
は、なんだよそれ?
気になるやん!
グルグルグルーっと。
すると、俺は目をキュッとする。
な、なんだこれ?
全背景が肌色の画像があるぞ?
クルクルと、カメラの画像をスクロールしてみる。
「だめぇ〜!!!!」
女の子は、半泣きになりながらカメラを取り上げようとする。
げっ!!!!!!
俺はさっとカメラを下げると、それをじっと見つめる。
「お前っ、これっ!」
「やめてって言ったじゃないですか!」
女の子はパシッとカメラを掴むと、泣きながらカメラを抱きしめる。
「……見たんですね、私の画像」
「……ごめん。まさか、お前自身で写真撮ることがあるとは思ってなくてさ……。本当にいるんだな、ハメど」
「きゃぁぁぁ! やめて! 言わないで! 別にいいじゃないですか! 初体験の時の画像撮るくらい! 夢だったんですよ、写真に収めるの!」
女の子は手をブンブンと振りながら、顔を赤くして大回転する。
あわわわわぁ!!!!
その時、俺は思った。
この女の子は、根本的にテルと似ている。
このままでは相手のペースに持っていかれる。
しかもカメラ取られた!
集中、俺!
「……そういやさ、なんで俺の名前知ってるんだよ」
俺は早くこの話題を終わらせなければそのうちヤバいことになりそうだと思い、急に話を取り替える。
「……あなた、変態としてとても有名じゃないですか。江夏と付き合ってるし、青髪の女の子と公然でキスするし、私に抱きつくし」
女の子はブツブツ言いながら、食い込んだパンツをくいくいと下に下げる。
「ち! 違うぞ! 弁解させてくれ……えっと、名前なんだっけ?」
「え、知らないんですか? 同じクラスの戸方ですよ。
メロは、持っていた生徒手帳を取り出して、自分の名前を見せるために差し出してくる。
「え、すげぇ。旋律って書いてメロって読むの?! キラキラネームすぎんかね!」
俺は初見のキラキラネームとの遭遇で興奮を隠しきれない。
「まぁ自分で考えたので、多少変な名前でもしょうがないでしょう。では、画像を消す代わりに、一つ条件を飲んでください」
メロはメモを取り出すと、俺にシャーペンとそれを差し出す。
「『
ペンを渡すと、にこりとメロは笑う。
……はぁ?
俺はペンを握ろうとする手が止まる。
「『は、何言ってんの、このビッチ!』とか思ってますよね? 私、こう見えてカメラマンなんですよ。色々な写真を撮って、生徒に売って生活してます。別にエロではないので3000円で手を打ちます。割とサービスしてるんですからね?」
「おい、待て待て! 消せって言ったんだぞ!? 買うとか言ってねぇ!」
俺はメロの真似をするように、頬を膨らませる。
ぷんすかぷんぷん!
頬を膨らませて威嚇する俺。
メロはやはりという顔でため息を吐く。
「……何分も張り込んで撮ったスクープなんですよ?タダで消すなんて勿体無くて忍びない。買っていただけるならデータは消しましょう。買ってもらわなければ、学校中に貼っちゃいますよ?」
メロはニヤリと笑いながらも、俺にガンをつける。
「はっお前! 本当に性格悪いな! 彼氏が可哀想だ!」
「はっはー、私の彼氏は優しいので私のことを甘やかしてくれますし、電気代も払わなくていいのです!」
「お前、ほんっとクズだな!!」
俺はギリギリと歯を鳴らすが、鳴らしたところで3000円が口から吐き出されることもなく……。
「無理だ! 貼れば? 貼れよ! でもな、メロ。そんなことしたら退学になるかもな!」
ぐっ! とメロは表情を歪める。
と、ニヤリとまた笑う。
「……そうでしたか。では、この画像をお付けして5000円で取引いたしますよ?」
クルクルと画像フォルダを移動するメロ。
ニヤケが止まらないメロはチラチラと俺の顔を覗く。
「ふん。負け惜しみはいいぞ、メロ? 俺は何を見せられようが、絶対に買わん!」
「
俺はその甘言を聞き入れた瞬間、自然と右手がメロの手元に向かう!
「5000円なら手を打とう!!!!!!」
目をカッ開いた俺は、すぐさまメロの手を取って握手をする!
「まいどわり〜!」
俺はバッグに手を突っ込み、小物入れに隠していた5000円札を取り出すと、メロに手渡す。
「それでは、このカードをパソコンにさして画像をご覧ください」
そういうと、カメラから無数に刺されたSDカードを取り出し、俺に手渡してきた。
「まじか、メロって本当に天才! カメラマンの鑑だな!」
「まぁまぁ、それほどでも〜!」
と、メロはぐいっと俺の顔の前に寄る。
「……江夏、結構黒いですよ。ア・ソ・コ!」
「なっ、なんだとぉ?!」
俺は蒸気をあげながらそのSDカードを眺める。
この中には、カノンの秘めたる花園が……!
やっべぇ、家に帰りたい!
パソコンに刺したい、挿れたい!!
リュートは悶々とするが、ふと我に帰りメロを見つめる。
「そういやさ、メロ?」
「はい、なんですか?」
「さっきスルーしちゃったんだけど」
「はい?」
「……名前、自分で考えたって?」
「えぇ、私の本名は長いですからね」
「……それってつまり、メロも異世界から来たって事か?」
「え? 知らなかったんですか? 江夏と仲の良い季本だったら察していると思ってました」
つづく。
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