雨に狂えば。
近未来SFにおいて硫酸の雨が降るとかいうのはかなり昔流行ったわけだが、この作品はそういうのをリスペクトしつつ、全く違う新時代のSFを作り出した。降ってくるのはコカインの雨。時々ブタ。
主人公は傘を差せる上流階級の人間。そんな彼がある日、雨の中で一人の少女と出会う。その少女は綺麗すぎる顔立ちからクローンであることがすぐに分かるが、雨の中狂い続けている彼女に主人公は何故か心を惹かれていた。
この作品のテーマはやはり、狂うことの美しさであると思う。下流の人々はコカインの雨に溺れ早くに死んで行く。そんな快楽に溺れる人間を見ている上流階級の人々はどのような気持ちなのだろうか。下流の人間を蔑みながらも心の中では羨ましさのようなものがあるようだ。自由を阻害され、鳥かごに入ったままでいるのか、汚れながらも大空へ飛び立つのか。どちらが人間として正しいのか。
そして、主人公の中に起る疑念。
「狂っているのは果たして彼女か僕か。どちらなのだろう」
狂っているのは雨に狂っている者たちなのか。それとも雨に狂っていない人間の方なのか。雨に狂っている人間からすれば、雨に狂っていない人間の方が狂っているのではないか。
「ワタソぁ狂ッテル。でもオバエラくるてないとイェルカ?」
きっと現実も、何かが正しいということなんて何一つなくて、対立する意見があって、どちらかが正しいからどちらかが間違っていると言われるだけで立場が変われば正しいものも間違っているということになる。
そんな簡単なことが意外と分からない人もいたりして、そこそこの未来でもそれが分かっていない人がいるどころか悪化しているように思えるので。なんというか、ついニッポンの未来を憂いでしまった。
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