第4話 合唱コンクールで前後に揺れるヤツ。
それは中学生の合唱コンクールの練習中の出来事だった。
例により僕らは感情を込めて歌い、前後に揺れていた。
それはさて置き、僕はうんこに行きたかった。
うんこである。
小学生のうんこ事情ほどデリケートなものではないが、中学生になってもうんこはやや恥ずかしいモノであった。
前後に揺れるリズムが僕の便意を増長させる。そろそろ我慢の限界である。
あぁ。また先生が「ハイ!頭のてっぺんから声を出して!そんなんじゃ当日観客のみんなに届かないよ!2階まで届くように!」と熱弁している。
こんな状況で手を上げて「先生、トイレ。」って言うのは恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
しかし、合唱コンクールの練習は僕らが歌い、先生が指導するトライアンドエラーの繰り返し。丁度いいうんこタイミングなんて皆無である。いつかはこの流れを俺の発言で止め、切り開かねばならない。切り開かねば俺の肛門がうんちによって切り開かれるであろう。
考えろ。できるだけ考えろ。
恥ずかしくないようにこの場を切り抜ける方法を。
・先生、お手洗い行っていいですか?
(ベーシック
・先生、しょんべんいっていいですか?
(ちょっとやんちゃな男の子っぽさを出す
いいや、これではダメだ。
俺が出したいのはうんこだ。
時間がかかってしまい、結局背の順で並んでいるだけの大して仲良くもない周りの人間から「おいwww遅かったやんwwwwうんこかよwwwww」と、イジられてしまう。
ここは裏をかけ。表でいくと恥をかく。
小さい声でボソボソと「あ、あの、トイレ」とか言った日にゃうんこマンという名前をもらうかもしれない。
さもトイレが恥ずかしくないような。
さも当然のようにトイレに。
うんこを隠さないような勢いで、だ。
僕は腹をくくって
先生の話を遮る、大きな声と手を上げて発言した。
「あのぉ!!ウンコいっていいっすか!?」
メッチャ笑われた。
うんこから帰ってきたら、笑いを我慢しながら周りの人間が聞いてくる。
「なぁ…wなんでわざわざウンコって言ったん?www」
知らん。俺に聞くな。
そこで僕は気が付いた。
あぁ、裏の裏って、表なんだなって。
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