第10話 竜と薔薇の紋章(ミーリエル王国)

僕が手紙のある部分に紙を当て、黒い鉛筆の様なもので薄く塗りつぶして行く姿を見て、ミリアが


「何しているんですか?光様」


「えっ?あ、ああ。これはフロッタージュて言って、凹凸のある物に紙を当てて、その上から塗りつぶして行くと、その凹凸の形が塗りつぶした紙に浮かび上がるんだよ」


僕が言うとみんなは、僕の作業をジィーと見つめますよ。

そして塗りつぶした所が徐々に何かが浮かび上がって来ます。

それは‥‥‥


「竜?‥‥‥と薔薇?」


そうなんです。竜がとぐろを巻いた中に3本の薔薇があります。簡単に言えば、徳川の家紋の葵が薔薇になり、竜がぐるっと囲んだ状態ですか。


「これは何処かの紋章?」


僕が言うと、ミリアとメイル、女性兵や悪亜までもが驚いてますよ。「なんで?」と。

で、僕には何かが分からなく、もう一度聞きます。

するとミリアが不思議そうな顔をして


「ミーリエル王国の紋章‥‥‥」


「ミーリエル王国?」


ミーリエル王国とは、アレム大国とガルバディ帝国との貿易がある国。

アレム大国とガルバディ帝国とプリム小国は人が住む国。

そしてミーリエル王国はエルフが住む国だと。そして、技術と魔法もミーリエル王国が少しは発展していると。

で、僕が


「エルフ?‥‥‥エルフだって!この世界にはエルフがいるの!」


大声をいきなり出した僕を見て、みんなは驚きますよ。

だってですねー、僕はこの世界、グリーングリーンワールドの全てを知らないのですから。

けどね、エルフですよ!あのエルフですよ!僕は一度エルフに会ってみたかったんです。

僕はもうですね、宝くじの一等が当たったような気分ですよ。

しかし、ミリア達は浮かない顔をしてます。


「ねえ!ねえ!そのミーリエル王国は何処にあるの!」


「光様‥‥‥ミーリエル王国は船で20日程行った先にある国です。‥‥‥しかし」


「どうしたのみんな?」


「え、ええ。確かにこの紋章はミーリエル王国の紋章ですが、この手紙の文字はミーリエルのものではありません」


「どうゆう事?」


「わかりませんわ。ただこの手紙が本当にミーリエル王国から来たものかどうかも、紋章だけでは‥‥‥」


確かにそうだ。

この手紙が本当にミーリエルから流れ着いた物なのかわからない。

けどですね、僕は確かめたかったんです。

何を?て、あの手紙の文字を。

だってですね、カタカナが使われていたから。もしかすると僕の様に異世界転移か転生して来た者がいるかもしれないので。

(と、みんなの前ではそう言いましたけど、実はエルフに会いたい為だったりして)


「とりあえず、この事は、城に戻ってお父様達と相談しましょう」


ミリアが悩んだような顔をして言います。

でメイルも


「そうですわね。私達だけではなんともできないわ。イレイ達にも話しておかないと」


ミリアとメイルが、これを拾った女性兵に、この手紙と小瓶を預けさせてほしいと言うと、女性兵は快く承諾してくれた。


「所でミーリエル王国て、どんなとこなの?」


「そうですわね。先程言ったとおりエルフの国で、こちらの国とは陸続きではなく、海を渡らないと行けなく、船で20日ぐらいかかる場所にあります。ですから貿易があると言いましても、船便は一月に一便あるぐらいなんです」


そうなんだと、僕が頷くと


「しかし、20日も掛かる所にあるとは‥‥‥」


僕がそう呟くと、それを聞いた女性兵の一人が、おもむろに僕に言います。


「光様‥‥‥実はミーリエルは実際は船で一週間程行った先にあるんです」


「へえ?一週間?」


「はい。行く途中にマーネードの領域がありまして、船がそこを通ると必ず沈むとされた領域なんです。ですから船はそこを通らないように迂回しているんです」


そうか‥‥‥だから20日もかかるのか。

確かに元いた世界でもバミューダ海域で船や飛行機が消息を絶った、て昔からよく聞く。

この世界にもそんな領域があるんだ。


「光様、一旦城に戻りましょう」


「城に?けど‥‥‥悪亜との約束‥‥‥」


メイルが僕に言いますがね、やはり悪亜との約束がありますし。

で、悪亜を見ると、残念そう?それとももの凄く嫌そうな顔をするかと思いきや、


「私は構わないわよ」


なんて言って来るんですよ。これには僕はビックリです。だってあの悪亜ですよ。自己中的な悪亜ですよ。だからてっきり


『そんなの後よ!今はデートの続きが先!』


なんて言って来ると思ってましたからね。

だから僕は悪亜に「いいの?」て真面目な顔をして言いましたよ。

すると悪亜が、僕の耳元で


「今回、最初から尾行されていたからね。だからこの件が片付いたら、ゆっくりと光、デートをするのよ♡私とね♡」


で、僕が「またするの!」てな顔をすると、ギロリと睨みつけてきましたよ悪亜が。

その威圧感、半端ないです。

で、仕方なく僕は首を縦に振りますと、悪亜が急に優しい顔に変えると


「決まりね♡、じゃあ城に戻りましょう!」


「「決まり?」」


悪亜が急に機嫌が良くなったので、ミリアとメイルは驚いてますよ。

で、僕は一旦悪亜とのデートを切り上げ、城、ベルガー城に戻ることになりました。




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